第一章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「陣左、結婚生活はどう?」
忍務の報告を終えたところで、昆奈門にそう問われた。
「どう、とは…」
「仲良くやってるの?」
「悪くは、ないかと」
「なにそれ」
「まだ互いに知らぬことが多いゆえ、毎夜少しずつ話をしておりまして」
「うん……ん?」
陣内左衛門の話し方に違和感を覚えたのか、昆奈門が眉をひそめた。
「あのさ、最近早めに上がらせてるよね。帰って何してるの」
「互いの話を」
「……もしかして、指一本も触れてないなんてことはないよね…?」
「………」
「………」
「機を逃しました。今ではキッカケが掴めず」
陣内左衛門がそう白状すると、昆奈門は理解できないといった顔をした。
「陣左ってそんな感じだったっけ?」
「そんなとは」
「いや、随分奥手だなぁと思ってね」
「彼女十以上も年下ですし、まずは安心感を与えるのが良いかと思っていたらこんなことに……あの、組頭」
意を決したように陣内左衛門が真剣な顔で昆奈門を見た。
「参考までに組頭は初夜をどのように誘ったのか教えていただきたい」
「!?」
さすがの昆奈門もこのような問いが来るとは思わず困惑した。
「…私のは参考にならないよ」
「このままではいけないと思っているのです」
昆奈門は下を向いてしばらく黙っていたが、陣内左衛門の強い視線に耐えきれず口を開いた。
「"早く子ども作っちゃおうか"って……」
陣内左衛門は目を丸くした後、眉を寄せた。
「組頭、いくらなんでもそれは…」
「そんな目で見ないで…分かってるって。さすがに雰囲気ないなとは思うよ。ただ、私と志乃は前々からの知り合いだし、彼女もちゃんとその気があったから、ね?」
珍しく慌てて弁解する上司が陣内左衛門には可愛く見えた。そう思うのは不敬な気もするが、遠い存在だった己が最も敬愛する人が身近に感じられるようで嬉しい。
「しかし、この歳でしかもこの身体で本当に子が持てるとは思わなかったよ」
昆奈門は独り言のようにぽつりと言ったのを陣内左衛門は聞き逃さなかった。
この人が若い頃散々見合い話を蹴っていたのはそれが理由なのではないか。そういえば以前、志乃を妻にしたのは"都合が良いから"と言っていた。子を成せずとも梅の香城と繋がりを持てるだけでタソガレドキ城としてはふたりの結婚に十分意味がある。
しかし政治的に結ばれたようで心の奥底から想い合っているのを陣内左衛門は知っている。そんなふたりに、その証とも言える子ができたことはなんと喜ばしいことだろう。
「組頭ーーっ!!」
聞き慣れた喧しい声が聞こえてきてハッとした。慌てて振り向くと、勢いよく戸が開けられる。
「なに尊奈門、お前はいつも騒がしいね。どうしたの」
昆奈門は呆れたように笑いながら言った。
「ま、ままれ、うまうまっっ」
慌てて呂律が回らない尊奈門の肩に陣内左衛門が手を置いた。
「落ち着け」
尊奈門は一度深呼吸をすると、陣内左衛門と昆奈門を交互に見て高揚した声で言った。
「う、生まれましたっ!!組頭の御子っ!!!!」