第一章
夢小説設定
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「初対面であれはないだろう」
華との結婚話が纏まったところ、上司である山本陣内にそう言われ、陣内左衛門は戸惑った。
「はっ、あれは私という者を知ってもらうに一番良いかと思い…」
「まぁ相手に誠実であろうとすることはお前の良いところだが、"命を賭す覚悟"など見合い相手に聞かせることでもあるまい。先方も驚いてらしただろう。もう少し言葉選びを慎重にな」
「はい」
「ともあれ、相手方も快諾してくれて良かった。まさかお前が一人目で決めるとは思っていなかったが…」
そう言いかけたところで陣内は言葉を止めた。
「陣左、結婚決まったんだって?」
タソガレドキ忍軍組頭の雑渡昆奈門が手をひらひらと振りながら近付いてきた。
陣内左衛門は良い背筋をさらに伸ばした。
「はっ!山本小頭に紹介いただき」
「うんうん、良かったじゃない。見合い一人目で決めたんだって?さすが陣内は烏帽子親ってだけあって陣左を理解していると見える」
昆奈門がからかうようにそう言うと、陣内は少し困ったように
「どうなんでしょうね」
と言った。
「お相手はどこの人だったっけ?」
「商家の娘さんですよ。うちと取引のある」
陣内が答えると、昆奈門はにこりと笑った。
「あぁ、あそこの。うん、それは良縁だ。良かったね、陣左」
「はい!」
「で、陣左は相手のどこを気に入ったの」
「……笑顔が…」
「ほう?」
「うつむいてしまったので少しだけしか見えなかったのですが、彼女の笑顔を見たとき嬉しくなりました。それと、落ち着いた声が心地好く」
「……そうか」
陣内が心底ホッとしたような顔をしたのを昆奈門は目端に捉えた。今回の見合いからの結婚が当人の意思であると確信できたからであろう。
「祝言、楽しみにしてるよ」
昆奈門はそう言って去ろうとしたが、あっと声を上げてまた振り返った。
「志乃が、行けないけど祝いの品を贈るからお相手にもよろしく伝えてくれと」
昆奈門の妻である志乃は今身重で、産み月が近い。祝言に出られないのは当然のことだった。
「はっ。ありがとうございます。奥方にも大事になさってくださいとお伝えいただければ」
「はっはっは、そんな畏まった言い方されると志乃に笑われるよ。でも、ありがとね」
「では、生まれたら顔を見に行かせてください」
「もちろん。あ、陣内も来てね」
「私はついでですか、組頭」
「いやいや、ぜひ赤子のあやし方をご教授いただきたいものだね」
少し照れ臭そうに、でも嬉しそうに笑いながら昆奈門は立ち去った。陣内左衛門は我が組頭がどのように子を抱くのだろうか興味を持った。以前忍術学園の子を可愛がっていたのを知っているが、我が子ともなればさらに溺愛するに違いないと思った。