第一章
夢小説設定
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「尊奈門、なんだその噂は…」
沸き上がる怒りを隠しもせず陣内左衛門は言い放った。
「もしや信じているのではないだろうな」
今にも殴りかかってきそうな気迫に尊奈門はたじろいだが、負けじと足を踏ん張り顔を前に突き出した。
「そんなわけないでしょう!これでも志乃のことは高坂さんより私の方が分かってますよっ」
尊奈門が強気で言い返すと今度は陣内左衛門はその先の言葉に詰まった。
確かに尊奈門と志乃はほとんど歳が変わらないということもあってか、割と親しい。ときに昆奈門が嫉妬することもあるくらいだったりする。
「問題は噂の真偽ではないんです。こんな噂がされるということはですよ?組頭または我々忍軍のやり方に不満を持たれている可能性があるわけで…もしくは敵対する城の刺客の侵入を許してしまっていることだって考えられるじゃないですか」
尊奈門に諭されるとは情けないと思いながら陣内左衛門は黙って彼の言葉を聞いた。
「それに高坂さんは新婚さんだからここ最近内勤が多くて知る機会がなかったかもしれませんけど、城内だけでなく城下でもけっこう出回ってるんですよ」
「待て、城内だけでなくと言ったな。私はそんな噂初耳だぞ」
「そりゃあ、高坂さんは組頭のこととなると特に怖いですから。そんな噂話誰も高坂さんの前ではできませんって」
呆れ顔で言う尊奈門に陣内左衛門は何も言い返せなかった。良くも悪くも自分が下の者から怖がられている自覚はある。その点尊奈門の方が人と打ち解けるのが早い。もしかしてそれは忍にとって必要な資質かもしれない。
「そういうわけで、この先情勢が変わりそうだからさすがにそろそろ高坂さんの耳にも入れておかないとと思い、こうして話を……」
尊奈門がそう言いかけたところで城内がざわつき始めた。
騒ぎのする方を見に行くと、忍数人に囲まれて歩く志乃がいる。
ざわめきの中に
「ついに…」
「殿からの呼び出し…」
などの話が聞こえた。
「………高坂さん、これけっこう大事になってますよ……」
尊奈門がぽつりと言い、陣内左衛門は息をのんだ。
"この歳でしかもこの身体で本当に子が持てるとは思わなかったよ"
以前昆奈門が言ったこの言葉が、一瞬陣内左衛門の脳裏に過った。
『タソガレドキ忍軍組頭雑渡昆奈門の妻志乃が他城の者と密通し不義の子を産んだ』
この噂により志乃はタソガレドキ城主黄昏甚兵衛自らの尋問を受け城内に軟禁されることとなった。
第二章へ続く
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