第一章
夢小説設定
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着いてすぐ志乃の出迎えがあった。
「高坂さん、華さん、いらっしゃいませ。どうぞ入ってください」
「組頭は?」
「息子の寝かし付けをやるんだと言って奥の部屋にいます。さっきまで泣いていたんですが、静かになってきたのでもうすぐ来ると思いますよ」
「組頭が子の寝かしつけ……なんだか不思議な気持ちだ」
「案外上手いんですよ。息子もあの大きい手や温かい腕に安心感を覚えたのでしょうかね」
志乃は話しながら客人に座るよう促す。
「あっ、志乃様、こちらよろしければ召し上がってください。かすていらなのですが」
華がおずおずと土産を差し出すと志乃は笑顔を向ける。
「わ、嬉しい。ありがとうございます。今お茶淹れるので待っててくださいね」
「私、お手伝いします」
華がそう言って立ち上がると、志乃は
「お客様ですから」と言いかけたが少し考えて、「ではお願いします」と華を台所へと案内した。
「華さん、何か聞きたいことでもありました?」
志乃は陣内左衛門に声が届かないよう小さな声でそう言った。
華はビクッと肩を震わせる。
頭の中では例の噂が過っていたが、志乃が一体どのような人なのか…
「あ…いえ、その……」
こんな悪い噂、本人のお耳に入れるのは失礼だ。かと言って元くノ一のこの人に誤魔化すことは難しい気もして言葉に詰まった。
「勘違いだったらごめんなさい。けど、何か思い詰めているように見えてしまったので気になったのです。口に出した方が楽かと考えたのですが、無理にとは言いませんので」
少し上背のある志乃は少し屈んで華の目線に合わせ微笑んだと思ったら「あっ」と声を言葉を足した。
「私が元くノ一であることを気にしていらっしゃいますか?タソガレドキには忍の里があるといっても、女の忍というのは数が少ないせいか良い印象を持たれにくいですよね。ましてや私は他城の者でしたし」
志乃が明るく話すのを華は黙って聞いていた。もしかすると噂をご存知なのではと思ったが、どうやら一般的な話をしている様子だ。嫌な思いをされたことがあるのかもしれない。
「けれど、私は関わる人たちに誠実でありたいと思っています。高坂さんの奥方である華さんならなおのこと。ですから、貴女さえ良ければ親しくできると嬉しいです」
華は心がぎゅっと掴まれるのを感じた。この御方は、少し陣内左衛門様に似ている。
「志乃様…ありがとうございます。そのように言っていただけて、本当に勿体なく...」
「そんなに畏まらないでください。勿体なくなどないです。私はタソガレドキの方々から見たら新参者ですよ。それに、自分の気持ちをそのままお話ししたまでですから」
志乃の目は真っ直ぐに華へと向けられていた。
あのような噂、事実であるはずがない。
このような御方が不義など働くものか、華はそう確信した。
*****
「やあ、陣左……そわそわして、どうした?」
「組頭!お邪魔しております。いや、妻と志乃が台所へ行ったままなかなか戻らないので」
「ふたりなら仲良く話ししてたよ」
「あ、それならば良かったです」
「心配だった?」
「…いえ」
「ふふ、あの感じだと君の奥さん志乃に惚れちゃったかもよ」
「え…っ!!」
「ははは」