第一章
夢小説設定
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あれからどうやって帰ったか、華は覚えていなかった。
気がつくと母に持たされたかすていらを片手に家に着き、何かをしないと落ち着かず早めに夕食の支度をした。
時間が空くと先程のことが蘇る。
雑渡様の奥方が、密通……
生まれたご子息は不義の子……
本当だろうか。
いや、ただの噂に過ぎない。
けれど本当だったなら、陣内左衛門様はどうなさるだろう。志乃様とは親しそうな間柄のようだし、何よりも命を賭すとまで言ったお方の名誉に関わること……
事の真偽に関わらず、噂が出回ってしまえば取り返しのつかないことになりはしないだろうか。それこそこれが火種となって戦になどなってしまったら…
相談、すべきだろうか。
波風を立ててしまうだろうか。
却ってお怒りを買ってしまうかも……
彼にたかが噂を信じる軽率な女だと思われるのも嫌……
そんなことを考えているうちに日が暮れた。秋が深まりだいぶ暗くなるのも早くなったのに、それに気がつかない程思い悩んでしまっていた。
「華さん?います?」
陣内左衛門の声がしてハッとした。
「あっ、はい!」
「灯りもつけずにどうしましたか?どこか身体の具合でも……」
そう言いながら陣内左衛門は火を灯した。
「やはり昨日は無理をさせてしまいましたか」
気遣ってくれる彼に華の胸はぎゅうっと締め付けられた。
「いえっいいえっ大丈夫です。ごめんなさい、少しぼうっとしてしまって」
「何もないなら良かった」
優しく微笑む彼にやはり隠さずに伝えるべきだろうかと迷った。
「あの、今日実家に行ったのです。それで……」
華が口ごもると陣内左衛門は首を傾けた。
「雑渡様たちのお土産にかすていらを用意したのですが、甘いものなど口にされますでしょうか?」
華は伝えるのを止めた。間違いなく不快を伴う話題である。華は夫の表情が曇るのを避けたかった。真偽の分からない噂は自分の胸の内に収め、後日また実家に確かめに行くことにしようと決めた。
「大丈夫かと思いますよ。何でも食べる人たちなので。準備ありがとうございます」
「陣内左衛門様は、甘いものいかがですか?」
「私も好きですよ」
「でしたら、味見用にもらったものがあるので後でお出ししますね。とっても美味しいと評判なんです」
話し方に違和感はなかっただろうか…
忍の陣内左衛門には悟られてしまっただろうかと心配に思いつつも、特に何も聞かれることがなかったので安堵した。