第一章
夢小説設定
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不幸か幸福かと問われれば、間違いなく幸福なのだろう。
この度、母方の遠縁である山本陣内の紹介で高坂陣内左衛門という男に会い、あれよあれよと結婚の話が進んでいった。
今年十八になった華は結婚適齢期と言え、いつそういった話が来るかもと覚悟はしていた。しかし十以上も歳上のそれも誰もが振り向いてしまうような美しい殿方が自分の夫となろうとは誰が想像できるだろうか。
初めて顔を合わせた際、華は陣内左衛門の美しさに目を奪われたと同時に、平凡で何の取り柄もない自分を恥ずかしく思った。
華はタソガレドキ領内にある商家の次女であり、上に兄と姉がいる。商才のある跡継ぎの兄、美人で聡明な姉、この二人の妹として育った華は常に劣等感が付きまとっていた。
特別両親から辛くあたられていたというわけではなく、こうして良い縁談を持ってきてくれるくらいには愛情を持たれていると理解しているのだが、自分なんかが誰かに必要とされるのだろうかという不安は拭えなかった。
そんな自信を欠いている華なので、引く手数多であろう高坂陣内左衛門という美丈夫が自分との結婚に前向きになったことが理解できないのであった。
それから不安はもうひとつあった。
それは彼がタソガレドキ忍軍の忍だということだ。
華の実家である商家はタソガレドキ城及びその忍軍と昔から取引があるため、内情をある程度把握している。また、一隊の小頭を勤める山本陣内の縁者であるがゆえに忍というものはさほど遠い存在でもなかった。だから忍という者は常に命の危機にさらされるということを知っている。戦の多いタソガレドキにとって、死はとても身近なのだ。結婚したところで、いつひとり取り残されてもおかしくはない。
それでも華はこの結婚に抵抗はしなかった。親に意見できるだけの意志もなく、姉も既に嫁に行き、兄も結婚し子どももいる。華がいつまでも実家に居続けるのも体裁が悪いし、美しい姉と違って自分に縁談なぞ降るように来るものでもない。それに、陣内左衛門はとても真摯に向き合ってくれた。それが、結婚を決めた一番の理由だった。
*****
「私には尊敬する御方がおり、その御方の為ならば命を賭す覚悟をしています」
会って初めて彼が発した言葉がそれだったので、華も傍にいた両親もさすがに驚き言葉が出なかった。同席した陣内にも嗜められていたが、彼は構わず続けた。
「それでも私は、妻になる方には己を偽らず真摯に向き合い、共に過ごす時を大切にしたいと考えています」
それを聞いて、華は思わず笑ってしまった。あまりに素直な御方だ。取り繕うことをしない。けれどあまり笑っているのもはしたないと思い慌てて下を向き口元を隠しながらちらりと彼の様子を伺うと、真面目な顔でこちらをじっと見ている彼と目が合った。
*****
自分のような女があのような御方と結婚できるのは幸運だろう。頑張って、あの方のお役に立とう。
華はそう決意して祝言の日を迎えた。
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