第一章 出逢う
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
雷蔵が図書室で本の整理をしているといつものように茶々子が顔を出した。
「こんにちは」
「あ、茶々子さん。こんにちは。端の机空いてますよ」
「不破くん、いつもありがとう」
茶々子は雷蔵に微笑みかけると、本棚から目当ての本を取りだし、そこに座り本を読む。これが彼女の日課だった。
彼女は真剣に、そして時折口元が動く。なにか覚えようとしているようだ。
先ほどの微笑みも、真剣な顔も、この人はどうしてこんなに可愛らしいのだろうか。
雷蔵はそんなことをしみじみと思った。
茶々子が忍術学園に来た日、学園内はちょっとした騒ぎになった。
最初は三郎と八左ヱ門が覗きに行って、「すごい可愛い!」とはしゃいで戻ってきた。急遽、臨時で来たのだというし、あまり騒ぎ立てては迷惑だろうと雷蔵は彼らの話を聞いてもあえて見に行こうとはしなかった。
ところが、彼女はちょくちょく図書室に現れた。まじまじと……いやちらりと見るだけでも可愛らしさが漂っている。なるほど騒ぎになるわけだ。そして三郎がすごい好きそうだなぁなどと思った。
雷蔵はちらりと彼女の読む本を見ると、忍具や武器の一覧書だった。
「忍具の勉強ですか?」
「え?」
「あ、ごめんなさい。覗いちゃって」
「いいの、気にしないで。見たことない武器があるから知りたくて。でもなかなか多くて覚えられないね」
「勉強熱心ですね。忍たまでも全てを覚えている人はそうはいませんよ。だいたい基本の物と得意武器周辺くらいで……」
「そうか!皆の得意武器からだったら覚えやすいね。不破くんは?なにが得意?」
茶々子がそう言って雷蔵の顔をじっと見た。
まじまじと見られるとなんたか恥ずかしくなって、雷蔵は茶々子の持つ本に目を落として、頁をめくった。
「えっと…僕は、これですね。『印地』。この紐を使って、礫を飛ばすんです」
雷蔵の説明に茶々子はこくこくと頷いた。
「難しそう……」
「僕も最初はそう思いました。刃物の研ぎもそうじゃないですか?」
「あ、そうかも。技術に簡単なものなんてないのかもしれないね。得意不得意はあるだろうけど」
「そうですよ。ちなみに、印地は中遠距離ですが、兵助は近距離戦に優位な寸鉄が得意で……」
パラパラと頁をめくっていると、同じ本を見ている為かなり距離が近づいていることに気がついた。茶々子から甘いような香りがして雷蔵は変に緊張してきた。
あ、まずい、近づきすぎたかな。
そう思うも茶々子に気にする様子はない。
「茶々子さん……なんか良い匂いがします」
思わず口に出してしまい、ハッとした。
この発言は嫌がられるかもしれない。
「あ、気付いた?」
茶々子はにやりといたずらっ子のように笑って懐から小さな巾着を取りだし、雷蔵に見せた。
「食堂のおばちゃんに包丁研ぎのお礼で金平糖もらったの。図書室は飲食禁止だから、後で一緒に食べようよ」
「あ、はは、金平糖……かぁ」
「苦手?」
「いえ、好きです」
「あ、そういえば私、図書委員の仕事の邪魔しちゃってるよね。ごめんなさい」
「良いんです、すぐ終わりますから」
「手伝うよ」
「え、そんな良いですよ。それに勉強は……」
「いつも色々教えてもらってるし、お礼。本は借りていくね」
そう言うと茶々子はきびきびと働き出す。
気がつけば雷蔵は、この甘くゆったりとした彼女とのひとときが好きになっていた。