第一章 出逢う
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
伊作は茶々子を庇い、落ちた蛸壺の中で彼女の下敷きになっていた。
「え、うそ!善法寺くん!!!」
茶々子が慌てて退くと伊作はへらへらと笑った。
「はは、僕はこのくらい日常茶飯事なので平気です」
「ごめんね」
「良いんですよ。こちらこそ僕の不運に巻き込んでしまって……」
「おやまぁ、ウサギが二羽罠にかかっている」
上から声がして見上げると、そこには天才的トラパーと言われる綾部喜八郎がいた。
「一羽は可愛い臨時事務員さんだ」
上から喜八郎が茶々子をじぃーっと見つめてきた。
「はぁー、僕の掘ったターコちゃんに可愛いものが入っているのはとても良いなぁ」
無表情だが心なしか喜八郎はうっとりとしているように見える。
茶々子にも伊作にも理解ができなかった。
「綾部喜八郎くん?」
「おや、僕の名前をご存知で?」
「だってあちこちにある罠、四年生の綾部くんが作ったって吉野先生が言ってたよ」
「そうですか。さっそくかかってくれて嬉しいです。茶々子さん」
「あ、私の名前も知ってるんだ」
「そりゃもう。可愛い事務員さんが来たって噂が広まってます」
「私からしたら、君たちの方が可愛いんだけどな」
「おや、ありがとうございます。でも茶々子さんも本当に可愛いです」
淡々と話すのでほんとかお世辞か分からないが、茶々子は一応「ありがとう」と言っておいた。
「茶々子さん、また僕の罠にかかってくれます?」
変わらず淡々と喜八郎は話すが、目はきらきらとしている。茶々子にはやっぱり彼の意図がわからなかった。
「できれば遠慮したいなあ。あと、綾部くん、できたらここから引き上げてほしいんだけど」
「"喜八郎"」
「え?」
「喜八郎と呼んでください、茶々子さん」
「あ、うん。喜八郎くん」
茶々子がそう呼ぶと、喜八郎はやっぱり無表情で頷いて縄ばしごをばらばらと下ろした。
「ありがとう。善法寺くん、行こう」
「あ……はい。先にどうぞ」
伊作は、存在を忘れられていたのでは、と思っていたが声をかけられてホッとした。
しかし茶々子にすんなりと名を呼ばせた喜八郎を羨ましいと思う自分がいた。