第四章(留ルート)波打ち際
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「茶々子さんがそれで良いなら俺は……」
あの後は結局留三郎が言おうとした続きを聞くことができなかった。
私は何をしているのだろう。
想いを打ち明けられ、それでもこの先仲を発展させようという気がないということも聞いているのに、気を引くような真似をしてしまうなんて…
真っ直ぐに好意を向けてくれた彼に、「惚れてます」と真正面から言ってくれた彼に対して素直に嬉しいと思った自分がいる。
それなのに
どうして告白なんて無かったみたいに、いつも通りにできるの。それに好意を隠すそぶりもない。かといって一定の距離から近付くこともしない。それがもどかしくて、つい……?
私は留三郎くんとどうなりたいのだろう。
学園を去る日が近付いてくる、それはつまり自分の結婚や見合いの期日も迫ってくるということで、あわよくば彼に恋人役をやって貰えないかなどと邪な考えも浮かんでは打ち消した。
彼は優しいから、きっと引き受けてくれるだろう。私の都合に合わせて、理想通りに、そして役目が終われば後腐れなく別れるに違いない。私が彼に"好意"を示さない限りは。
「茶々子殿」
名を呼ばれハッとした。
「戸部先生……」
「どうした、また浮かない顔をして」
「あ、いえ……」
「何かあるのなら話を聞くが」
こんなこと人に言えることではないのではないかと躊躇っていると
「人に話せば考えがまとまることもある。それに茶々子殿の表情が暗いとどうも心配になるんだ。まぁ口外せんから安心してくれ」
そう言って新左ヱ門は茶々子の頭に手を置いた。
「……戸部先生、私のこと子どもだと思ってません?」
「それはそうだろう。幼い頃から見ているのだから」
「でも今の私は、子どもの頃の純粋さを失ってしまいました」
「何なんだそれは」
茶々子は、これまでのことを名前は伏せつつ簡単に話した。
「近付かれると戸惑うのに距離を置かれると気を引きたくなるなんて、なんだか自分勝手な悪女にでもなったようで…」
ここまで話をして、新左ヱ門が口許に手を当てていることに気がつく。
「…戸部先生、もしかして笑っていらっしゃる?」
「くくっ、すまない。君が"悪女"とは似ても似つかぬものだと思ってな」
「戸部先生っ」
「"悪女"ならばそんなに悩まないだろう」
新左ヱ門が茶々子を見ると恥ずかしそうに頬を染めた。もっとからかってやりたくなるが、真剣に悩む彼女に悪いのでやめることにした。
「さて、その男の名前は聞くつもりはないが、茶々子殿はどうしたいのか、もう少し気持ちのままに動いたらどうだ」
「気持ちのまま、ですか。私の家の都合で振り回すことにならないでしょうか」
「気を回しすぎだな。君の都合を聞いて相手がどうするかはその人次第だ。遠慮し過ぎると後悔することになるのではないか?」
「そう、かもしれません…」
茶々子は自信無さげにそう言うと黄金色に染まってきた空を眩しそうに見た。
1/1ページ