第一章 出逢う
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それから数日が経った。茶々子は仕事を覚え、日々業務に追われていた。
訪問客の相手に、掃除、用具の管理、教材の準備や事務用品のお使い、学園長の用事などなど……思っていた以上に忙しい。
しかもこの忍術学園、敷地内の至る所に罠がある。初日、吉野先生に主な罠の印など教えてもらったが、さすがに全ては分からない。罠以外にも塹壕が掘られていることもあり、かなりの注意力を要した。初日に言われた「警戒心を持て」というのは嫌でも身に付きそうである。
「あ、茶々子さん!」
庭の掃除中に声をかけられて振り向くと、そこにはたくさんのトイレットペーパーを抱えた善法寺伊作がいた。
「そこ、罠ありますよ。注意してください」
彼はこうしてたまに素人の自分に気を配って声をかけてくれるのだ。しかし大抵はその後不運が重なり彼自身が罠にかかってしまうのだが……
「ありがとう、善法寺くん。えっと、それ大丈夫?少し持つよ」
「いえ、いつものことですから大丈夫ですよ」
「でも顔見えないから、危ないよ」
茶々子は箒を端に置いて伊作の抱えるトイレットペーパーを支えながら言うと、彼は
「では、少しだけお願いします」
と腰を屈めた。茶々子が腕を伸ばして上のほうのトイレットペーパーをいくつか取ると、伊作の照れ臭そうにしている顔が見えた。
「すみません、茶々子さん」
「これくらいなんでもないよ。厠まで持っていけば良いの?」
「はい……あっ!」
歩みだそうとした伊作が石につまずき体制を崩す。目の前にいた茶々子を押し倒すような形で倒れてしまった。
「わわっ」
咄嗟にペーパーを手放して茶々子が頭を打たないよう支えたが、外部から見ると伊作が完全に彼女に襲いかかったような体制になってしまった。
目の前に茶々子の顔、そして自らの体制を省みて、伊作は顔を赤くして慌てた。
「あっ、わわ、す、すみませんっ!怪我ないですかっ?」
「私は大丈夫……あ」
宙に舞ったトイレットペーパーが伊作の頭や背中にゴンゴンッと降り注いだ。
「あたっ」
「だ、大丈夫っ?」
「はい…………」
伊作が茶々子から距離をとると続いて体を起こした茶々子とばちりと目が合った。
「あはは、災難だったねぇ。大きな怪我なくて良かった」
茶々子が伊作の頭を撫でて笑う。
彼女が自分の不運というか不注意を笑い飛ばしてくれたことが伊作にとってはありがたかった。
あぁ、好きだなぁ……
ふとそんなことを思い、伊作は慌てた。
えっ!今僕は何を……
いやいや、こんな可愛い人、誰だって好きでしょ。
うわ、やばっ……
考えないようにすればするほど"好き"の言葉が頭の中でこだました。茶々子の顔を見るときょとんとしている。それがまた可愛くて伊作は動きが固まってしまった。
「さ、ペーパー回収しよう」
茶々子が散らばったトイレットペーパーを集めよう動いた。
「あっ!そっちは!!!」
「わっ!」
伊作が素早く手を伸ばして茶々子の腕をつかんだが、ふたりは共に蛸壺へと落ちていった。