第四章(伊作ルート)蕾
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あれほどの良い天気だったのに……
伊作の言う幸運は続かず、ふたりは雨に見舞われた。しかも、そこそこの集中的な豪雨だ。とにかく雨がしのげる所へと茶々子の手を引き走っていた。
「伊作くん!ごめん、待って!」
引き止められて彼女の視線を追うと、履物の鼻緒が切れてしまっていた。考える間もなく、伊作は彼女を抱きかかえ雨の中を再び走る。
「い、伊作くんっ」
「すみません、今は我慢してください」
「………」
伊作は目的もなく走っているわけではなかった。保健委員として関わっている薬屋が近くにあったため、ひとまず雨宿りさせてもらえないかとそこへと急いだのだ。
「あれぇ、伊作くん!どうしたの?」
薬屋の戸を叩くと、伊作と同年代くらいの女の子が出てきた。
「急にごめんね、ちょっと雨宿りさせてもらいないかな」
その女の子はずぶ濡れの伊作と、抱きかかえられたままの茶々子をちらりと見てからにこりと笑った。
「もちろん。風邪引いちゃうから早く入って!拭くもの持ってくるからちょっと待っててね」
彼女がぱたぱたと奥に入っていくと「お父さーん、伊作くん雨宿りさせるからー……」というやりとりが聞こえた。
「あの、伊作くん。そろそろ降ろしてもらえると……」
「あっ、そうですよねっ」
茶々子の顔と声が近くにあり、伊作はまだ彼女を抱いたままだったことに気がつき、慌てて降ろした。
「すみません」
「なんで謝るの?むしろ抱えてもらっちゃってごめんね。重かったよね」
「小柄な茶々子さんの重さなんて大したことないです。それより、茶々子さんを僕の不運に巻き込んでしまって…」
「天気なんて分からないし、私の鼻緒が切れたのだって伊作くん関係ないじゃない?それに、伊作くんのお知り合いが近くにいて雨宿りさせてもらえたんだから運が良いんだよ」
伊作はまじまじと茶々子を見た。
自分は本当に彼女のこういうところが好きだと思った。
「茶々子さん、僕は…」
「はい!とりあえず、これ!!」
伊作が言いかけたところで薬屋の娘が手拭いをたくさん持って戻ってきた。
「あ、ありがとう」
「ありがとうございます…っくしゅっ」
茶々子がくしゃみをすると薬屋の娘が心配そうに覗き込む。
「……お姉さん、身体冷えたでしょう?お着替え貸すので中入ってください。伊作くんも父さんの貸すから、ね」
彼女はそう言って伊作をちらと見やってから茶々子の手を引いた。