第四章(伊作ルート)蕾<完結>
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家のことが解決できたのは良かったが、なんであのような誘いをしてしまったのだろうと茶々子は思った。
伊作の申し出が嬉しかったのは本当のことだし、純粋にお礼をしたいと思ったのも本当だ。だが彼は学園の生徒で、それも自分に心を寄せてくれている子だ。茶々子は教師という立場ではないにしても、仕事をしに来ている大人として軽はずみな行動だったのではないかと頭を悩ませた。
しかしそんな最中、茶々子は気がついた。
こんなに悩むなんて、まるで自分が伊作に対してなにかやましい気持ちがあるみたいではないか、と。
茶々子はぶんぶんと頭を振ってから両頬をぱちんと叩いた。
"年頃の男の子が年上女性に憧れを抱くことは誰しも一度はあることだ"と、どこかで聞いたことがある。ましてや女の子が少ない学舎だ。こういうこともあるだろう。それに、ここにいるのも残り一月を切った。どうこうなることもない、はず。時が流れれば、ただの思い出になって終わるものだ。自惚れるなと言い聞かせる。普通に町へ出て、何かご馳走して、普通に楽しめば良いんだ。
*****
約束の日は見事な晴天だった。
伊作は、運が良いと喜んでいて、その笑顔を見ていると茶々子は嬉しくなった。さんざん悩んだが、やはり誘って良かったと思う。
「茶々子さん、行きましょう」
「うん」
二人並んで学園を出た。
伊作は学園を出てからずっとニコニコとしていた、それを見て、茶々子はふと洩らす。
「伊作くんって、可愛い」
「えっ?」
「学園出たときからずーっと笑顔で。なんか遠足に行くみたいな気持ちになってきた」
「……すみません、子どもっぽかったですか」
伊作の声が少し沈んだように聞こえて焦った。
「ううん!その、そんなに喜んでもらえて良かったなって思ったの」
「そりゃ嬉しいですよ!茶々子さんからのお誘いですから。でも……」
伊作は少しだけ間を開けて続きを言った。
「緊張もしています」
茶々子はどきりとした。真面目な顔をした伊作は顔立ちの良さが際立つ。それは先程と違い可愛いと言えるものではなくて、男らしさのようなものが垣間見えてしまう。
「……この運がいつまで続くのかって」
伊作はそう言って困ったように笑った。
「え、あ……だ、大丈夫だよっ」
伊作から出た言葉は自分が思っていたものではなくて、茶々子は残念なような複雑な思いを抱いた。そしてやっぱり自惚れては良くないと自分を律した。