第四章(伊作ルート)蕾<完結>
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伊作は彼女の為にやれることをやるつもりだった。しかし自分が動くまでもなく"その問題"はすぐに片付いてしまった。
「あの伊作くん。実はね、結局私の兄が家を継ぐことになったの」
先ほど彼女の祖父が来て話をしていったそうだ。
それによると、家に戻ってきた彼女の兄は既に結婚をしていて妻と子があり、その子が研ぎの仕事に興味があるとかで跡継ぎ問題はあっさりと解決したのだ。それも茶々子の結婚の有無に関わらず、甥っ子の前に茶々子がちゃんと技術を引き継げることになったので、皆納得の結末を迎えられたと言えた。
「なんだか騒がせちゃってごめんね」
「いえっ、茶々子さんにとって良い結果になって良かったです。はは、僕が何かするまででもなかったですね」
偉そうなことを言って、結局いつもこうなのだ。間が悪いというか、機会を逃すというか、元から必要なかったという……
「あの、伊作くんが方法を探そうって言ってくれたの嬉しかったよ。ありがとね」
気を遣ってなのか茶々子に優しく微笑まれた。
気遣いだろうがなんだろうが、彼女に正面から見つめられると、いつも吸い込まれそうになる。目眩がして言葉が出ない。
「……伊作くん?」
茶々子の声にハッとして伊作は姿勢を正す。
「……あ、は、はいっ!!」
「良かったら何かお礼させて?」
「えっ、でも僕何もしてないですし……」
「……私、今ある環境を変えようなんて思ったことなかったから。伊作くんが言ってくれたこと、本当に心強かったの。だから、ね」
正直、もう彼女に関わるきっかけが失われてしまったと思っていた。彼女の問題も片付いてしまったし、想いの丈をぶちまけてしまったから、もう気まずいばかりなのではないかと考えていた。なのに、彼女の方から関わるきっかけをくれるとは……
「幸運すぎる……」
「へ?」
「あ、いえいえ!嬉しいなと思ったんです。でも、僕は茶々子さんとこんなふうに二人で話せる時間があればそれだけで良いので」
色んな欲望が沸き上がり混乱して、気がつけば折角の提案を断るような言い方をしてしまい、伊作はしまった、と思った。
ところが、
「……そしたらさ、一緒に出掛けようか」
伊作の心情を知ってか知らずか、茶々子が遠慮がちに言ってきた。
それは、つまりでぇとというやつでは……
そう思うと伊作は内側から沸き上がる感情が抑えられなかった。
「良いんですか!?」
伊作が歓喜のあまり前のめりになると、茶々子は驚いて一歩下がったが、にこりと笑って
「もちろん。伊作くんさえ良ければ」
と言った。