第四章(土井ルート)隠せりと為すか<完結>
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
門前を掃除しようと戸を開けると、挟んであったであろう文がはらりと落ちた。
拾い上げてみると、それは利吉から茶々子宛てのもので茶々子はドキリとした。
利吉とは微妙な関係なままずっと会っていない。どういう内容か分からないが、親しくなりたいと言ってくれた彼に半端な態度を取ってしまってはいなかったろうか、など気になりながら恐る恐る文を開いた。
『茶々子さん
風の噂で聞きました。土井先生と結婚なさるとか。おめでとうございます。土井先生は私の兄も同然の人なので、そうなれば茶々子さんは私の義姉ということになりますね。何かお困りのことがあれば義弟として力になりたいと思いますので、いつでも頼ってください。茶々子さんの幸せを願っています。
いつか土井先生と一緒に家へ遊びにいらしてください。きっと父母も喜びます』
利吉らしいきっちりとした字でそう書かれていた。こっちが気を遣わないように言葉をよく選んでくれたことが分かる。彼はそういう人だった。
結婚はまだ早とちりに近いが、半助とのことはもう知っていたのかと安堵する。面と向かって自分の口から伝えるべきことかとも思ったが、利吉の気持ちに確信がない以上、それも違う気がした。
「茶々子さん」
名前を呼ばれてハッとした。
顔を上げると、そこには遠慮がちな笑み見せる半助がいる。茶々子は自然と笑みが溢れた。
「あっ、土井先生!おかえりなさい」
「……ただいま、戻りました」
何故か口許を手で覆い、半助が答えた。
「どうしたんですか?」
「いや、茶々子さんから"おかえりなさい"と言われるのは嬉しいものだなと」
「今までも言ったことはありますよ」
「表情が違う」
そう言われて茶々子は頬に手をやった。
「……変な顔してました?」
「いいえ。この上なく可愛い顔をしてました」
半助があまりにも自然にさらりと言ってのけるので、茶々子は恥ずかしくて下を向いた。
「……それで、何かありました?その文は」
「あ、えと、利吉さんからで……」
半助がぴくりと反応するのが分かった。
そっと顔を見上げると、何とも言えない表情をしている。
「利吉くんはなんと?」
「私たちのことを知ったようで……おめでとうございますと」
「そう……」
半助はふと空を見上げたかと思うと、再び茶々子に向き直り言った。
「茶々子さんは、本当に私で良いのでしょうか」
「え?」
「貴女のことを想う人は他にも多くいたと思います。その中には真剣な者もいたでしょう?貴女が惹かれる相手はなかったですか?」
少し表情に陰りを感じた。けれど、目を反らすことなく茶々子を優しく見つめていた。
茶々子はそんな彼の目を見つめ返して言う。
「私が惹かれたのは先生です。なんでそんなに自信がなさそうなんですか?」
「それは、茶々子さんがとても魅力的だから」
「私にしてみれば土井先生がとても魅力的です」
「どれだけの男が貴女に近付こうとしたとおもってるんです」
「知りませんっ!だって、もう……せんせ…半助さんでいっぱいだから」
「……ここでそれはズルい……」
半助が頬を赤らめて視線を反らす。
それをじっと見つめる茶々子の頬も赤かった。
「……では、今夜この前の続きをしても構いませんか」
「かっ、構いませんっっ!」
「ふふっ……そんなに身構えなくても」
「だって……」
「それから、冬休みに入ったら茶々子さんのご実家に挨拶に伺いますね」
茶々子が、あっ!という表情をした。
「ははは、忘れてました?元々はそれが本命でしょう?」
「……ちょっと浮かれてました」
「嬉しいです。こう見えて私もすごく浮かれてるんです」
半助はそう言って、周囲を見回したかと思うと、茶々子の腰を抱き寄せた。
『土井ルート 隠せりと為すか』終