第一章 出逢う
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先ほどから人にちらちらと見られている。
茶々子はその度に会釈をするのだが、会釈を返されて少し目が合うとふぃとすぐに背けられることが多かった。
新参者はやはり警戒されるのだろうか。
茶々子が軽くふぅとため息をつくと、隣を歩く上司になる人はそれを見逃さなかった。
「気にすることはありませんよ。皆、年頃ですから。初対面では多少なりとも緊張はするものでしょう?」
「あ、すみません。そうですよね」
「茶々子さんは、そういったことはありませんか?」
「はい。仕事柄、たくさんの人と会いますので、人見知りなどとっくの昔に過ぎ去りました。人の顔を覚えるのもわりと得意です」
「ほう。その特性は、うちの事務に向いているかもしれませんね。訪問客などもけっこうありますから。用具の管理も良いですが、まずは入出門表の仕事からお願いしましょうかね。ただ……侵入者などもなくはないので、少し警戒心も持っておいてください」
「わかりました」
「よろしい。では、仕事は明日からお願いするとして、今日は最後に学園の教室に案内しましょう」
そう言われて、案内された教室には「一年は組」と書かれている。
ガラガラと戸が開けられると、中から半助が出てきた。
「あ、吉野先生……と茶々子さん」
茶々子は再び軽く頭を下げる。
「土井先生、授業はもう終わりでしょうか」
「えぇ。今終わったところです」
「最後にひとつ教室を見てもらおうと、彼女を連れてきたのですが、入ってよろしいですか?」
「どうぞ、入ってください」
ふたりに促されて茶々子が教室に入ると、室内がわっと沸いた。
「わー、可愛いお姉さん!」
自分より十も下の子達に可愛いなどと言われて驚いていると、次から次へと子供たちが集まってきた。
「お姉さん名前はー?」
「お姉さんが臨時の事務員さん?」
「歳はいくつですか?」
「どこから来たんですか?」
「恋人はいますか?」
矢継ぎ早に質問を受け、さすがに聞き取れない。半助が子供たちを制した。
「はい、落ち着きなさい。この方は、小松田くんの代わりに臨時で来てもらった茶々子さん。学園長の知人である研ぎ師のお孫さんで……えっと、年齢……」
半助がちらりと茶々子を窺い見た。女性の年齢を軽々しく口にして良いか気にしてくれているようだ。
「二十歳です。それにしても土井先生、よく全部聞き取れましたね。すごい」
「全部じゃないです。茶々子さん、恋人は?」
「こら、きり丸!!」
きり丸と呼ばれ少し大人びた少年が怒られる。
「だってこんな可愛い事務員さん、気になるでしょ?」
齢十の可愛い質問に笑みがこぼれた。
「あはは、ありがとう。きり丸くん。私に恋人はいません」
「だって、先生」
「こ、こら」
教室内がどっと笑いに包まれる。
歓迎されているのがわかり、茶々子は吉野先生の心遣いをありがたく思った。