第四章(土井ルート)隠せりと為すか
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半助は悩んでいた。
テストの採点を済ませ、筆を置く。
いつも通り胃の痛くなる回答ばかりであったが、なぜか仕事以外の悩みがあるせいで仕事が捗った。
部屋の格子から見事な冬晴れの空をぼんやりと見る。
茶々子さんに対して、心の奥底にあるほんの一匙の本音を何故か出せない。
自分は彼女に惚れていて(しかも一目惚れ)、かりそめでも恋人となってくれたことを天に昇れるほど嬉しいと思っている。それを、なぜこうも回りくどい言い回しをしてしまうのか。一年は組のよい子達のように素直に、もっと直接的な表現で好意を示せないのか。
明らかに色恋初心者である彼女の反応が面白くてついからかいたくなってしまうというのがひとつ。
また初心者であるが故にこちらの意図をどのように受け取ってくれるかも皆無で、手探り状態だというのがひとつ。
もうひとつは……あまり認めたくはないが、自分自身も初心者といえるのではないかということだ。
色恋などする余裕もないほどいつも忙しく、たまに見合いも勧められるが断っている。
とはいえ、忍務で女性を相手にすることもなくはない。いつもそれなりに上手くやっているはず……
と思い返し、半助はがっくりとした。
最近忍務相手した女性はほとんど伝子さん、つまり女装した山田先生だ。
はぁーと重いため息をついて、反射的に胃の辺りを撫でる。
でぇとなど誘ってしまったが、今の自分で大丈夫なのだろうか。張り切ってかえって失敗しないか心配だ。
でぇとと言えば以前、利吉に先を越されていた。確か町に行ったと聞いているが、どのような時間を過ごしたのだろう。彼なら自分よりよっぽど格好良く彼女をもてなすのだろうなと、利吉の姿を脳裏に描いて思った。
そして再びため息をつきそうになったが、天井にある気配を感じて引っ込める。
「今日は何の用です、雑渡さん」
「おや、さすが。お悩み中のようでしたが、変わらず気配に敏感だ」
「いつも悩みが尽きないもので」
「ははは、なるほど。そんなに警戒せずとも今日は近くに来たからご挨拶に寄っただけです。あ、ちゃんと入門表にサインしましたよ。いやぁ、事務員の彼女は相変わらず可愛らしいですね」
煽るような昆奈門の言い方に半助ぴくりと反応する。
「……手を出さないでくださいよ」
「あんな真っ白で純朴な子、こんなおじさん相手にしませんよ。まぁ、眩しいほどの笑顔で接してくれますけど。それに勘違いする程私も若くはないのでね」
半助が黙っていると、昆奈門はやや間を空けてから言った。
「……うちのはとても素直な良い子でしょう?残念ながらそれが悪く出てしまうことも多いですが。果たして彼女の存在が彼にどんな影響を与えてくれるのか、楽しみです。ふたりはけっこう相性が良いと思うのですが、土井殿はどう思われます?」
にこりと笑かけてくる昆奈門に対し、半助は険しい顔をして立ち上がった。
