第四章(利吉ルート)初恋 <完結>
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約束の日が来た。
午前の仕事をてきぱきとこなして、念入りに支度をする。髪を結い上げて以前もらった簪を刺す。桔梗の時期は遠に過ぎているが、利吉からの贈り物は身に付けていたい。
少し時間は早いが外出届を出して外で待とうと門に向かうと途中で山田先生に「息子をよろしく」などと言われた。
いつから知っていたのだろう。
気恥ずかしくなって軽く頭を下げると足早に門を出る。
少し約束の時間より早いが、こうして待つ時間も楽しい。恋とはこんなにも心踊るものだったなんて知らなかった。
門前で待っていると、見覚えのある男が走ってきた。利吉ではない。
昔から知る、いわゆる幼馴染みだった。
「茶々子、今すぐ帰ってこい」
「何かあったの?」
「じじぃが倒れた」
「おじじさまが!?でも、待って!学園の人に一言伝えてから行かないと…っ」
一瞬腹に鈍い痛みを感じ、茶々子は意識が途切れた。
*****
利吉は約束の時間に学園を訪れたが、茶々子がいない。仕事が長引いているのかと思い中に入ろうと戸に手を掛けたところで、何か落ちているのが目に入った。
これは、以前自分が茶々子に贈った簪だ。
嫌な予感がする。
茶々子に何かあったのか…
「おや、君は…山田先生の息子さん?」
突然声をかけられハッとした。
声の主を見ると、忍術学園に出入りしている研ぎ師だった。確か茶々子の祖父にあたる人だ。何度か会って挨拶を交わしたことがある。
「こんにちは。ご無沙汰しております」
「いやはや、ご立派になられて。今日は山田先生に会いに来られたのですか?」
「あ、いや…今日は茶々子さんと約束がありまして」
研ぎ師は軽く目を見張った。
「おや、うちの茶々子と」
「えぇ。ですがまだ見えないようなので中までお迎えに上がろうかと思ったところです」
どうか思い過ごしであってくれと願う。
忘れ物を取りに戻ったとか、外出届を出しに行ったとか……
彼女はまだ学園の中にいるはずだと思いたかった。
戸を叩いてしばらくすると、半助が出てきた。
「お待たせしました。あれ、利吉くん?茶々子さんは…」
血の気が引いた。
「研ぎ師殿、来る途中誰かとすれ違いましたか?」
「いえ?誰とも…」
そこまで聞くと利吉は顔色を変えて飛び出した。
茶々子さんがいない。
やはり何かあったのだ。
中で待っていてくれと伝えておくべきだったか。
己の来た道と研ぎ師の道を除き、行き先を絞ると、幸い一本道だ。待ち合わせ時間を考えるとそう遠くへは行ってないはず。
「利吉くん!」
己を呼ぶ半助の声がしたが、利吉は構わず走った。