第四章(利吉ルート)初恋 <完結>
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「茶々子さんっ!」
日が暮れ始めた頃に利吉はやってきた。
茶々子は半助とのやり取りを思い出し、緊張が走る。
会いたかった、と言ったらどんな顔をするだろうか...
「り、利吉さん…あ…おあ………お疲れ様です」
何故だか言えない…
積極的にと思うほど、言葉に詰まる。
ちゃんと好意を示さないと伝わらないのに…
好意……好意……え?好き?
私は、利吉さんが好き……?
頭の中で"好き"という言葉が反芻する。
改めて言葉にすると顔がかあぁぁっと熱くなる。
それを見ていた利吉が不思議そうな顔をした。
「???ありがとうございます。どうかしました?今日はなんだか様子が変です」
「あ、あの……」
あれからずっと、利吉さんのことを考えていました。そうしたら私は貴方のことが好きなのだと思ったのです。それを伝えたくて…
心の中では言えるその言葉が思うように出ない。
「あ、もしかして"私のことを考えていて"と言ったことを気にしてますか?すみません、困らせてしまったでしょうか」
茶々子はぶんぶんと勢い良く頭を横に振った。
「ははは、そんなに振ると頭痛を招きますよ」
利吉が両頬を挟んで茶々子の頭を止めると、目と目がぶつかる。茶々子は顔から湯気が出そうな心地がした。
どうかどうか、顔が赤いのは夕焼けのせいだと思ってくれますようにと願った。
ふたりの間に少しの間沈黙が流れると、利吉は気まずそうに手を離して目線を逸らせ、背負っていた籠を下ろした。
「あの……よろしければ、これをもらっていただけませんか?」
そう言って籠の中身を見せる。
茶々子が覗き込むと、白い椿のような花が入っていた。
「仕事の関係でもらったのですが、"サザンカ"という花です。この辺りではまず見かけないと聞いています」
よく見ると椿よりも花が開いて見える。
「そんな珍しいもの、良いのですか?」
「もちろん。迷惑でなければ」
利吉からサザンカなるものを受け取ると、ふわっと甘く優しい香りが鼻先をくすぐった。
「わ、良い匂いがします」
「そうでしょう?この花をもらったとき茶々子さんを思い出したんです」
「...嬉しいです、とても」
「気に入っていただけて良かった」
「利吉さんが私がいないところで私を思い出してくれたことが、です」
利吉が目をぱちぱちとした。
茶々子は変な言い方だっただろうかと心配になって伺い見ると、利吉は手で口元を覆った。これは、照れているのだろうか。
茶々子は意を決して、想いを言葉にしようと試みた。
「私も利吉さんのこと考えていたんです。あの、えっとですね…わ、私、利吉さんのことが……」
「待って、茶々子さん」
言葉を止められ、茶々子はどきりとした。
迷惑だったろうかと不安が沸き上がる。
「あぁ、違うんです。その先は私から言いたくて。だから、少し待ってください。今日は次の約束をしようと思って来たから心の準備がまだなんです」
はは、と照れ笑いをしながら利吉は言う。
「茶々子さん、次に外出できそうなのはいつですか?」
「えっと……明後日の午後は空いてます」
「では、明後日また迎えに来ます。だいぶ寒くなってきたので、暖かくしてくださいね。では」
利吉が柔らかく微笑み、去っていく。
茶々子は姿が見えなくなるまで見送ると、その場にへたりと座り込んだ。
想いを口にしようとした緊張と、次の約束の楽しみと、恐らく同じ想いであろうという嬉しさで、足に力が入らなかった。
利吉にもらったサザンカに顔を寄せて香りを嗅ぐ。甘く優しい香りだ。利吉に似てると茶々子は思った。