第四章(利吉ルート)初恋 <完結>
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「それまで私のことを考えていてください」
その言葉通りに、茶々子は気がつけば利吉のことばかり考えてしまっていた。
次はいつ来るのだろう
今、仕事中だろうか
今日は来るだろうか
胸がとくとくと音を立てる。
前はこんなことはなかったはずだ。
利吉の態度を見るに、初めのうちはどちらかと言うとそんなに好かれていないかなと思っていた。それが利吉から向けられる視線がだんだんと柔らかくなっていくにつれ、茶々子自身も同じように彼を知りたいと思うようになった。
「親しくなりたい」
彼はそう言ってくれたが、どこまでだろう。
正反対のようで私たちはどこか似ている。
自分も彼と時間をもっと共有してみたかった。
「茶々子さん」
「あっ、はい!」
掃き掃除の途中で後ろから声をかけられる。
振り向くと、半助がいた。
「土井先生」
そうだった…先日の提案の返事をしなければならない。
結婚の期限を延ばせるのはありがたいが、恋人のフリというのは利吉への気持ちもあって承諾するのが憚られた。
「あの、先日の話なのですが……」
「分かりました」
断りを入れる前に返事をされ、茶々子は戸惑う。
「あの後、利吉くんが来てたでしょう?あんな少しの時間でも顔を出すなんて。彼、貴女に本気みたいだ。茶々子さんも彼に惹かれてるみたいですし。悔しいですが私は身を引きます」
半助があまりに優しく笑うので、この人は本当に自分を想ってくれていたのだと実感した。
「あの……ごめんなさい」
「良いんです。謝らないで。はは、貴女には正攻法で行った方が良かったのかな」
確かにちょっと回りくどかったかもと思いながら茶々子が曖昧に笑うと、半助は「やっぱり」と言って苦笑いした。
「ところで、利吉くんああ見えて意外と人見知りでしょ?彼の警戒が解けたんだから、きっと茶々子さんとは気が合うんですね」
そう言われると嬉しいが、茶々子にはいまいち自信が持てず、首をかしげた。
好きだとか、恋仲になりたいとか、
そういう確信的な言葉を言われたわけではない。
「そうなんでしょうか」
「あれ、自信ないですか?まぁ知り合って間もないし、ふたりはそんなに回数顔合わせたわけではないですからね」
半助はそう言うと、
「利吉くんが好きなら、茶々子さんから積極的になってみてはどうですか?」
と少し意地悪な顔をした。
「わ、私からですか!?」
「そうですよ。もっと会いたいだとか好きだとか、言わなければ伝わりませ………」
半助が急に言葉に詰まる。
「先生?」
「すみません、自分で言っていてなんだか虚しくなってしまい...……いや、まぁとにかく頑張ってみてください」
そう言うと半助は手をひらひらと振って去っていった。
*****
足早に茶々子の元を離れると、半助は深いため息をついた。
この歳で、一目惚れして口説いてフラれるとは、我ながら痛い。しかも一丁前に助言など……しかも相手は利吉くんだ。
「半助も難儀なやつだね」
「や、山田先生!見ていらしたんですか!?」
「彼女を振り向かせたい輩は多いと思っていたけど、ふたりが取り合っているとは意外だったな。まぁ利吉には春が来たようで何よりだが...……半助、今夜は一杯やろうか」
ぽんぽんと肩を叩かれると、半助は「…そうします」と力なく返事をした。