第二章 接近する
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最初に潰れたのは伊作だった。
机に突っ伏して幸せそうに寝息を立てている。
「伊作くーん、ここで寝ちゃうと風邪引くよ」
茶々子が声をかけるもまったく起きる気配がない。
「伊作がこうなるともう起きませんよ」
留三郎がそう言って伊作を担ごうとしたがそれを半助が制した。
「私が連れていくから良いよ。留三郎は半端なの飲んじゃってくれないか。そしたら茶々子さんを送って」
「あ、はい」
留三郎が返事をすると、半助は伊作を担ぎ茶々子を見やった。
「じゃぁ茶々子さん、今日はありがとうございました。おやすみなさい」
「は、はい。おやすみなさい」
茶々子は肩透かしをくらった気分だった。
てっきり伊作は同室の留三郎が引き受け、また半助とふたりきりになるかと思いきや、違った。近づいたり離れたり、いったい何なのだろうと思いつつも、内心ホッとしている。今は留三郎といる方が安心する。
「茶々子さんけっこう飲めるんですね」
留三郎が残りの酒をとくとくと杯に注ぐ。茶々子の目からは半端どころかけっこう残っているように見えた。
「そうでもないよ。さっきからちょっとずつしか飲んでないの。食満くんこそ、お酒強いね」
「まぁ、それなりには飲めます」
留三郎は、残りの酒をくっと飲み干すと酒器をまとめて立ち上がった。
「さて、送ります。俺は明日休みですけど、茶々子さんは仕事でしょう?」
「うん、ありがとう。気を遣ってくれて」
「いえいえ」
酒が入っても留三郎は普段と全く変わらず優しい。目線を合わせ笑いかけてくる。
茶々子も立ち上がり、「それ半分持つよ」と言うも断られてしまい、そのままふたりで部屋を出た。
*****
そのあとふたりで食堂に行き酒器を片付け、留三郎は部屋の近くまで送ってくれた。
「わざわざ送ってくれてありがとね」
「これくらい、なんてことないです。それで、あの、茶々子さん……」
留三郎はそう言って一呼吸置くと、正面に立って茶々子をじっと見た。
「俺、茶々子さんに惚れてます」
「えっ!?」
「あっ、でも恋仲になってくれとか、困らせるつもりはないんです。俺がそういう対象じゃないというのは分かっているので」
突然の告白に茶々子は何も言葉を発せずにいると、留三郎は安心させるように言った。
「茶々子さんは臨時で来た方ですし、ここを去る前に俺の気持ちだけ伝えたかっただけです。ただ……学園を出た後にももし俺を思い出すことがあったら、そのときは会いに来てもらえませんか」
「あ…………はい……わかりました」
「ははっ、なんで敬語なんです?もちろんこの先俺を男として意識してくれたら嬉しいですが、強敵も多そうなので茶々子さんに負担をかけることはしません」
そして、留三郎は「おやすみなさい」と言って茶々子を部屋へ戻るよう促した。
茶々子はこの月見の会のことがぐるぐると頭を巡り、今夜は眠れそうもないと思った。