第一章 出逢う
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学園長先生への挨拶を終え、事務の吉野先生に学園内を案内されている際、茶々子は覚えのある姿を見つけた。ゆらりと歩くその人は……
「あ、戸部先生」
「おや、戸部先生とお知り合いですか?」
「はい。昔からの祖父のお客様です」
「そういえば、元は戸部先生の紹介でこの学園に研ぎ師を呼んだのでした」
話していると、新左ヱ門が気付いて近づいてきた。
「茶々子殿、大きくなられて……ないな、あまり」
「あは、あれからあまり伸びませんでした」
以前会ったのは十三くらいの歳だったろうか。
「臨時の事務員が茶々子殿だったとは驚きだ。先日じいさんが来ていたのはこのためだったか」
「はい、私があまりに世間知らずなので、世の中を知ってこいと」
「そうか……君の世間知らずはじいさんのせいでもあると思うのだが」
茶々子に研ぎのなんたるかを教え込んだのは彼女の祖父だ。彼女の目の確かさや感覚の鋭さに才を感じとり、彼女の関心も手伝ってめきめきと技術をあげている。今はまだ祖父には及ばぬまでも、跡を継げる器であることは新左衛門の目から見ても確かだった。
「確かに。でも祖父には感謝しています。私、研ぎが好きなんです。手をかけると息を吹き返すような、あの感覚が特に。いつか戸部先生の刀を研がせていただくのが私の目標です」
目を輝かせて茶々子が言う。
彼女には天職なのだろうと、新左ヱ門は思った。しかし家の相続問題があると聞いている。この年齢になって学園に来たのは、そういう意味もあるのではないか。たしか彼女の祖父と学園長は古い友人であったはず。この前相談に来た本命はそっちではないだろうか。学園長が面白がりそうなことではある。茶々子本人にその気があるのかは知らないが。
茶々子に似合いの者……この学園にいるだろうか?愛想が良すぎるこの娘がなにか勘違いさせたり良からぬ誤解を受けたりせねば良いのだが、と思わずにはいられなかった。
「研ぎは君には天職だろうが、この学園の仕事もきっと君の役に立つ。がんばってくれ」
新左ヱ門は心配を口にすることなく茶々子を励ました。
「もちろんです。この学園の方たちのお役に立ちたいと思っています」
茶々子は躊躇いなくはっきりと言った。きっと本心なのだろう。どこまでも素直な娘だ。
「吉野先生、茶々子殿は"良い目"を持ちますから道具の管理など適任かと思います」
忍具など、特殊な武器を見るのも茶々子には楽しかろう。
「そうでしょうとも。では次は用具倉庫を案内しましょうかね」
茶々子と吉野先生は新左ヱ門に軽く会釈をしてから歩き出した。