第二章 接近する
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「あれ留三郎、誰かいるよ」
廊下から声がしたと思ったら、半助は素早く茶々子の向かいに戻った。
教室の戸が開けられると、伊作と留三郎が顔を出す。
「あ、茶々子さん……と土井先生」
「ふたりで何やってるんですか?」
伊作と留三郎が訝しげな顔で見てくる。
半助は、何でもないようにいつもの教師の顔をして
「月見だよ。良い酒をいただいたからね」
と言った。
「ふぅん……ふたりきりで」
留三郎はじとーっと半助を睨むように見た。
「君たちも同じつもりだろう?一緒に飲むかい?」
「では、遠慮なく」
そう言って留三郎と伊作は茶々子を挟むようにして両側に腰を下ろした。
男三人に囲まれて逃げ場がない。
なんだか妙な月見の会になってしまったが、茶々子は半助とふたりきりよりいくらか気持ちが落ち着いた。
「茶々子さんは何飲んでるんですか?」
伊作が尋ねると茶々子は自分の杯を持ち上げた。
「飲んでみる?今、町で人気なんだって」
「え、あ……じゃぁせっかくなんでっ!いただきます!」
茶々子は何も気にせず伊作に自分の杯を手渡す。留三郎が、あっという表情をするのを横目に伊作が杯に口を付けた。そしてくいと酒を流し込むと少し顔を赤くして、
「……茶々子さんの杯でいただいてしまいました……」
と言った。
「茶々子さんのそういう無自覚なところ怖いですよね」
とそのやり取りを向かいで見ていた半助がぽつりと言い、留三郎はじろりと伊作を見ていた。
「伊作……お前……」
「ふふ、ごちそうさまでした」
伊作の目が既にとろりとしている。
「せっかくなので、僕らが持ってきたやつと飲み比べしましょう」
半助と留三郎の静かな殺気を余所に、伊作は機嫌良く準備する。
「僕らは明日休みなので、気兼ねなく飲めます♪」
「まったく……それなら部屋で飲めば良いじゃないか」
半助がやや不機嫌そうに言うと
「月見するならここが一番良いんです。さすが土井先生もこの場所ご存知だったんですね」
と伊作は茶々子の杯に持ってきた酒を注いで返した。
「茶々子さん、どうぞ」
「あ、ありがとう」
茶々子は三人の男のいざこざがよく分からないまま杯を受け取り飲もうとしたところで、はたと気付いた。
あ、これ
伊作くんが口付けたんだ……
かあぁぁと顔に血が昇る。
その前に私が口を付けたのをそのまま渡しちゃったんだった……!
家では兄や父相手に普通にやってたし、気にしたことなかったけど、けっこう恥ずかしい……
しかし今さら返すわけにもいかないので、伊作が口を付けていなかったかと思う所を選んでから飲んだ。