第二章 接近する
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「土井先生」
茶々子に呼び止められ、半助が振り向くと彼女はなにやら瓶を持っていた。
「先生は、お酒って飲まれますか?」
「酒ですか……まぁそれなりに」
「では、これどうぞ。先日話を聞いてくださったお礼です。今町で人気のものらしいですよ」
彼女がそう言って瓶を手渡してくる。
彼女は先日利吉と町へ出掛けていたので、その土産ということのようだ。別の男と出掛けていたというのに自分を思い出してくれたとは、利吉には悪いがこちらとしては嬉しくなってしまう。
「ありがとうございます。では、今夜一緒にどうですか?」
「え、私とですか?」
「えぇ、今日は満月ですので月見と称してどうでしょう?茶々子さん酒がだめなら甘酒でも……」
「では、少し飲めますのでぜひ」
茶々子がにこと笑う。
彼女の笑顔は少し以前と違う、と思った。
屈託のない眩しいような笑顔が、最近ではやや遠慮がちな控えめな笑顔だ。恥じらいがあるというか……相変わらずいつもにこやかではあるのだが。
きっかけはやはり利吉だろうか。
そう考えると胸の辺りがもやもやとしてくる。
「では、今夜。お部屋に伺えば良いですか?」
茶々子はなんの疑問も抱かずにそう聞いてきた。
こちらの気持ちも知らず、この人はなんとも大胆なことを言うのだろう。そんなことされると手篭めにしてしまいたくなる。だが、今はまだ早急すぎる。それに、無理矢理は性に合わない。
「いやいや、さすがに男だらけの長屋に茶々子さんを招くわけにはいきませんよ」
そう言うと、茶々子はハッとして顔を赤くした。
「あっ、そうですよね!考えなしですみません」
「いえいえ、私を信頼してくれているのは嬉しいです」
彼女の反応を見るに、恋人がいたことがないというのは本当らしい。そうとなってはますます慎重にならざるを得ない。彼女の信頼は失いたくはない。
「学園内に良い場所があるのでご案内しますね。仕事が終わったら職員室で待っていてください」
「はい、わかりました。楽しみにしてますね」
気を遣ってくれているのかもしれないが、どうしてこうこちらが嬉しくなるような一言を付け加えてくれるのか。
「ではまた」
半助はにやけそうになる口を抑えて踵を返した。
今日はなんとしても早く仕事を終わらせようと思った。