第二章 接近する
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利吉が昼食をとろうと提案をすると、茶々子が握り飯を作ってきたというので目的の場所に移動することにした。
「けっこう歩かせてしまってすみません。付き合っていただきたかった所は、ここなんです」
そう言って利吉が案内したのは、森林にかこまれた小さな沢だった。色づき始めた紅葉がひらひらと舞っては水面に落ちる。
「わぁ……」
「少し早いですが紅葉狩りです。男ひとりではどうも味気ないので、一緒に来ていただきたかったんです」
「色づき始めも素敵です。綺麗……」
利吉は腰かけるにちょうど良い岩を見つけて茶々子を促した。茶々子は少しだけ距離を開けて遠慮がちに座ると、持っていた包みを開ける。
「こんなものでお礼になるかは分かりませんが、どうぞ」
綺麗な三角形をした握り飯とつけものが出てきた。
「いや、十分嬉しいですよ。ありがたくいただきます」
利吉が握り飯を口にいれるのを茶々子は神妙な面持ちで見ていた。
「ん、うまいです。なぜそんなに心配そうに見てるんです?」
「恥ずかしながら料理は初心者なので……塩むすびひとつとってもちょうど良い加減が難しいです」
「はは、極めようと思うと奥が深いものかもしれませんね。茶々子さんは完璧主義なんだ」
利吉は、自分相手にそんなに肩肘張らなくても良いのにと思いつつ彼女が自分のために懸命に作ってくれたのを想像して口許が緩む。
「茶々子さんも食べましょう?」
「はい……ん、今日は上手にできた」
「うまいと言ったでしょう?」
こくりと頷いて小さな口でもぐもぐと食べる彼女がとても可愛い。
もっと、色んな彼女が見てみたい。
何が好きで、何が嫌いか。
何に心揺さぶられるのか。
どのような顔で研ぎをするのか。
「茶々子さん、今日はお付き合いいただきありがとうございます」
「いえ、私の方こそ!贈り物までいただいて。それにこんな素敵な場所にも連れてきていただいて、嬉しかったです」
茶々子が大袈裟に首を横に振るのも、笑顔で嬉しかったと言うのも、可愛い。先日まではこんなに彼女の言動ひとつひとつを可愛いだなんて思っていなかった。
「……先日、私は貴女に失礼な物言いをしてしまい、自分がいかに浅はかだったかを知りました。そして、貴女を知りたいと思ってお誘いしたんです」
利吉はそう言った後、少し間を空けた。
自分としたことが、やや緊張している。
「……そして、今日貴女との時間を過ごしてみて、もっと貴女を知りたくなりました。できるなら……」
茶々子との距離を詰め、指先が触れるか触れないかのところで止まる。茶々子は手の方をちらりと見たが、距離を変えないまま利吉に向き直った。
「もう少し親しくなりたいと思っています。だから、またお誘いしても良いでしょうか」
茶々子の頬が朱に染まるのが見てとれた。
これは、肯定と見て良いだろうか。
「では、そうさせてもらいますね」
いったいどんな顔でこのようなことを言っているのか、利吉は自分でも分からなかった。