第二章 接近する
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「んん?アンタ、雰囲気変わった?」
門前を掃除する茶々子を見て尊奈門が開口一番にそう言った。
「こんにちは。あの、実は最近化粧をするようにしてるんです。私、幼く見られてしまうので」
「……え、アンタいくつなの?」
少し間を空けて
「二十歳です」
と茶々子が答えると、尊奈門はあんぐりと口を開けた。
「私よりひとつ上なのか……十五くらいだと思ってた」
「やっぱり、そうですよね」
茶々子は苦笑いすると、ちらと伺いを立てるように遠慮がちに尊奈門を見た。
「それで、どうですか?少しは年相応に見えますか?」
いつも真っ直ぐに人を見つめる茶々子の、この恥じらいのある態度はどうしたことか、と尊奈門は戸惑った。もしや自分を意識してくれているのではないか、などと淡い期待を抱いてしまう。
「うん……少しは」
「それなら良かったぁ。今まで化粧はあまりしたことがなかったので自信がなくて」
尊奈門はそのままでも十分可愛かったのに、口先に出かかった言葉を飲み込んだ。
「なんでまた急に化粧なんてしたんだ?」
「明日、出掛ける用事があるんです。少しは着飾らないと相手の方に失礼かと思い、その練習で……」
「そっ、それはいわゆる"でぇと"という…」
「茶々子さーん」
尊奈門は半助の声がして会話を止めた。
もしかして、その相手とは……
小扉から半助が顔を出した。
「あ、尊奈門くん。今日は生憎だけど勝負には付き合えないよ」
「今日はお前に用はない。これを渡しに寄ったけだ」
尊奈門がずいと小袋を茶々子に押し付ける。
「えっえ?」
茶々子が困惑していると、尊奈門はぶっきらぼうに言った。
「土産。慰安旅行で温泉行ったから」
「あ、お饅頭。ありがとうございます」
半助が横目でそれを覗き込み口を挟む。
「……尊奈門くん、何も入ってないよね?」
「入ってるわけないだろ!なんだと思ってる!」
茶々子がふたりのやりとりを見てくすくすと笑っていると、半助は思い出したように言った。
「そうだ、茶々子さん、吉野先生が呼んでましたよ」
「あっ、はい!すぐ行きますね!失礼します、尊奈門さん。お饅頭、職員室のみなさんでいただきますね」
茶々子は頭を下げてパタパタと駆けていく。
半助とふたりになってしまった尊奈門は、複雑な顔で半助を見た。
「土井半助、あの事務員が出掛けるという相手はお前か?」
尊奈門がすごい剣幕で半助に詰め寄るが、半助は気の抜けた返事をした。
「え?あ……あぁー…………尊奈門くんも気になるよね」
「で、どうなんだ」
「残念ながら、私ではないよ」
「では誰なんだ」
「はぁ……先を越されたなぁ」
「話を聞け!」
ひとり怒り出す尊奈門を尻目に半助は再びため息をついた。