第二章 接近する
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
己を知ることが人を知ることの一歩だ。
そう思い、初めて自分のために刃を研いだ。
日の光に照らされて刃がキラリと光を放つ。
きっとこれはよく斬れる。しかし、それだけだと思った。誰が手にしても同じように斬れる。
でも、それでいい。これは、表面しか見えていない今の私そのものではないか。これを期に、一度研ぎのことを頭から離そう。このままでは技術も上がらない。
新左ヱ門と半助と話して分かってきた。
私という人間は、人と深く関わろうという勇気がなかったのだ。先日、利吉が警戒心を持ちすぎて深く関われないという話をしていたが、案外それに近い気がする。
私は人に対して警戒もしていなかったが、それは端から深く知るつもりがなかったからだ。自分にとって笑顔や愛想を振り撒くことは防御だったのかもしれない。
結婚を前に研ぎのなんたるかの片鱗を、などとなんて甘い考えを抱いていたのだろう。男を知らないどころか自分のことすらよく分かっていなかったのに、そんなことで先に進めるか。祖父に研ぎをナメるなと言われそうだ。
それに私はきっとこの一年以内には家の存続ために結婚をすることになるだろう。
新左ヱ門が間に入ってくれると言ってくれたが、二十歳になる自分に両親はきっと許してくれない。ずっと逃げ続けてきたが、腹を括ろう。向き合わなければならない。この三月は猶予に過ぎないのだ。
そもそもここに来たのは、婿取り問題から発展したことだ。自分で恋人を連れてこられなければ縁談を組むという話だったのだ。
しかし私は恋なんてできるだろうか。
この学園の人と?お見合い相手と?
できたら親に決められた相手ではなく、自分で決めたい。自分から恋に落ちてみたい。
茶々子はここ数日の自分の気持ちを振り返ってみた。
利吉さんから誘いを受けたときの緊張は、恋になるのだろうか。
土井先生から、「私をよく見て知ってください」と言われたときに感じた胸の高鳴りはそれだろうか。
食満くんが私に向ける笑顔を私はどう感じているだろう。
伊作くんに手を包まれたことを思い出すと恥ずかしくなるのはなぜだろう。
そもそも私は人からどう思われているのだろう。
刃に写る自分を見ると、歳にしては幼い顔が見えた。なんだかそれがとても恥ずかしく感じる。
自分が人からどう見えているかなど気にしたのは初めてだった。