第二章 接近する
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「茶々子殿、調子はどうだ。仕事は慣れたか?」
「と、戸部先生ーっ!」
仕事終わりに昔馴染みの新左ヱ門に声をかけられ、茶々子は力が抜けた。
「どうした。調子が悪いか」
「……身体は元気です。ただただ己の未熟さを恥じるばかりで」
「吉野先生は君の仕事振りを褒めていたが」
「それはありがたいですが、問題は私の心なんです」
「どういうことだ」
「おじじさまの"人を知れ"は口癖なのですが、今回この仕事を受けたときに言われた"ついでに男も知ってこい"という言葉がここ数日頭から離れないんです」
"男を知れ"とは孫娘になんということを言うじいさんなんだ、と思いつつ、やはりこういう意図があったのかと新左ヱ門は納得した。
「それは、婿取り問題と絡んで来るのか」
「やはり戸部先生には隠せません」
茶々子は忍術学園に来ることになった経緯やここ数日で男女を意識するようになったことなどを簡単に話した。
「なるほど。想像通りだった。しかしなんでこれまでは意識することがなかったんだ。君を口説こうとしている輩はこれまで何人かいたのを見たぞ」
「本気だとは思えなくて。それに、やりたいことがたくさんあったから……」
「それはきっと、これまで本当の意味で君が人を見てはいなかったからだな」
「……そうかもしれません…」
茶々子が項垂れると、新左ヱ門は茶々子の頭をぽんぽんと撫でた。この素直なところが彼女の良いところだ。
「ところで、茶々子殿は私を男として意識したことはあるのか?」
「えっ!!」
茶々子が心底驚いた顔をする。
こんなことを言われるとは思っていなかったようだ。
「戸部先生は!そういうのを超越してるんです!!」
「超越?よくわからんが、それはきっと君が私の芯を見てくれているからだな。まぁ、男だ女だなんて特徴のひとつに過ぎぬから、気にしすぎることはない。その人の本質を見れば良い」
「はい」
茶々子が今気にかけているのはどの男か興味はあるが、新左ヱ門は聞かずにおいた。この娘の中ではまだ恋とは呼べぬものだろう。
「見合いの件はいざとなれば私が協力するから、とりあえずは考えずにいなさい」
「良いのですか?」
「父君はわからないが、じいさんは無理強いするまい。一緒に説得してやろう」
「あっ、ありがとうございます」
茶々子は深々と頭を下げた。
「そうだ、悩んでいるときは研ぎをしたらどうだろうか。古い小刀を一振やるから」
新左ヱ門の提案に茶々子は耳を疑った。
「え!!いただけるんですか!?研がせていただくだけでもありがたいのに…‥」
「そんな上等なものではないが」
「戸部先生が持っていたものというだけで私には上等なものです。あ、でも金吾くんを差し置いて、私がいただいちゃっても良いのでしょうか」
「金吾には別の約束があるから構わない」
「ありがとうございます」
「自分の為に研いでみろ。できたら護身用にでもしなさい」
新左ヱ門は"自分の為に"というのをあえて強調して言った。