第二章 接近する
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忍術学園への道すがら、利吉は話題に困り気まずい思いをしていた。
学園に行くといつも茶々子の方から話を振られるし、そもそも長い時間顔を合わせていることなどないので、この沈黙の時間がどうにもそわそわと落ち着かない気分にさせた。
「「あの……」」
言葉が被り慌てる。
「あ、お先にどうぞ」
「いえ、私は本当に大したことではないので」
自分の用意した話題など良い天気ですね、くらいだった利吉は、先を茶々子に譲った。
「では……あの、私ってやはり人からナメられやすいんでしょうか」
「はい??」
話の意図が読めず利吉が首をかしげると茶々子は続けた。
「先程みたいに強引なのは初めてでしたが、利吉さんもおっしゃったように町に出るとよく声をかけられるんです。それって、簡単になびく女だと思われているんじゃないかと」
茶々子は自虐めいたことを言うが、ナメられてるとかなびきやすそうとか、先ほど怖いめにあったばかりだというのに、利吉からしたら選ぶ言葉が楽観的なように思えた。それに分かっていながらなぜ人を疑わないのか、と腹が立ってくる。
「……あー……それは、貴女が何も知らない少女のように見えるんですよ。茶々子さんは明るくて愛想も良くて誰に対しても笑顔で、これまで人の悪意に触れたことのないように思えます。そこに付け入ろうと考える輩がいるということです。単なる茶の誘いだけではない。このままでは、貴女は見知らぬ男に貞操を奪われますよ。先ほどの男にしても貴女を色街にでも売り飛ばそうと思ったのでしょう」
明るく、愛想が良く、笑顔
それは紛れもなく彼女の長所なはずなのに、かなり悪意を込めて言ってしまった。
少し沈黙があった。
さすがに傷つけただろうかと茶々子を見やると、真顔で下を向いている。
「……悪意なら、向けられたことはあります」
茶々子が静かに口を開く。
「女の研ぎ師などまずいませんから……『女は引っ込んでろ』だの『刀より夜伽を勉強しろ』だの言われたことがあります。これは明らかに悪意でしょう?」
このときの茶々子の言葉は強かった。いつもの柔らかな雰囲気がなく、怒気を含んでいるのが分かる。
「それは……そんなに言われて言い返さなかったんですか」
「女の言うことなど端から聞く耳持ってませんから、腕で黙らせるしかないんです。でもそのときはまだ私も技術が全然で。そのとき偶然来ていた戸部先生が庇ってくれました」
利吉はなるほどと思った。
以前父から彼女は戸部先生を慕っていると聞いていたが、こういういきさつがあったか。
「父や祖父に追い付くだけではなく、越えなければ、女の私はきっと認めてもらえないんです」
身内が優秀すぎるゆえに抱える苦悩は利吉にも理解できるものがあった。それに加えて茶々子は女の身。自分には知らぬ苦労が多いだろう。
そうとも知らず、利吉は印象だけで彼女を判断してしまった自分を恥じた。
