第二章 接近する
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「……美味いです…」
ふるふると震えながら留三郎は言った。
茶々子の初めて作った味噌汁を最初に口にしたのは留三郎だった。(厳密に言えば食堂のおばちゃんが試食している)
「俺、こんなに早く茶々子さんの手料理が食べられるなんて思わなくて。なんか、もう感激っす」
茶々子は、自分の初料理を食べる第一号を目の前に座って見ていたが、こんなに感動されるとは思わなかった。恐らく味は、可もなく不可もなくいたって普通なはずだ。おばちゃんの料理の方が断然美味しい。
この目の前の少年はいつも大袈裟なのは知っていた。茶々子が何かする度にものすごく感激してくれる。包丁を研いでいたときもすごく真剣に見てくれていた。今日も茶々子が料理をすると知り、授業が終わると直ぐ様かけつけてきてくれたのだ。面倒見の良い彼らしい。
とはいえ、こんなに感激されるとやはり嬉しいものだ。
「そこまで喜んでもらえると作った甲斐あるな」
茶々子は留三郎が食べているのをじっと見た。
すごく、綺麗な食べ方をする子だ。箸使いが上手くて上品。
「あの……茶々子さん。そんなに見られると、なんというか、恥ずかしいのですが」
留三郎が気まずそうに目線を泳がせる。
「あ、ごめんね。食満くんって食べ方が綺麗だなと思ってたの」
「そうですか?自分では気にしたことなかったです」
「なぁにが気にしたことなかっただ。茶々子さん、留三郎は文次郎に対抗して身に付けたんですよ」
次に食堂に入ってきた仙蔵が言った。
「文次郎はああ見えて礼儀正しい男なので、食事作法もきっちりしているんです。な!留三郎?」
「くっ、仙蔵……余計なことを」
留三郎は居心地悪そうにしたが、
「そっかあ。食満くん、努力したんだね」
と茶々子がいうと、表情がへらっと崩れ、照れ臭そうに頭をかいた。
「は、はい」
「あ、仙蔵くんもランチだよね。準備する」
茶々子はぱたぱたと厨房に入って行き、再びおばちゃんの手伝いに戻った。
「お前は分かりやすい男だな」
仙蔵が茶々子に視線を送ったまま留三郎に言った。
「うるさい」
「彼女、誰にでもあぁだぞ。勘違いするなよ」
「分かってる。……んなことは分かってるんだよ……」
留三郎は自分に言い聞かせるように言うと黙々とランチを食べた。
