第一章 出逢う
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仙蔵は不思議に思っていた。
新しく来たあの臨時事務員に、次々と忍たまたちが籠絡されていく。いわゆる"魔性の女"なのかと思いきや、そうでもない。普通に良い人だ。
確かに見た目は可愛いし愛想まで良い。おまけに仕事もできる……
そこまで考えて気がついた。
彼女、欠陥がないではないか!
そうと分かると粗探しをしたくなってしまい、しばらく彼女を観察したり情報を集めたりした。
忍術学園に出入りしている研ぎ師の孫。
戸部先生と知り合い。
二十歳。
研ぎに情熱を注いでいる。
勉強家。
料理が苦手。
独身。
恋人なし。(一度もいたことがないという噂)
知れば知るほどたいした欠陥などない。
苦手な料理も勉強中だというし、恋人がいたことがないというのはひっかかるが、研ぎに夢中なことを考えると妥当な気がする。
自分もなんだかんだ茶々子をずいぶんと気にしてしまっているというのは、籠絡されているうちに入るのだろうか。
「茶々子さん」
姿が見え、つい声をかけてしまう。
「あ、立花くん」
彼女はなにやら箱をふたつ重ねて持ち上げようとしていた。
「荷物、重そうだ。手伝いますよ」
「いいのいいの、こう見えて力はそこそこあるんだよ」
「ふたりの方が早いです」
仙蔵はふたつの箱のうちのひつつをひょいと奪う。
「わ、ありがとう」
「けっこう重いですよ?重ねて持つのはさすがに無理だったのでは」
「あは、そうかも」
「中身はなんですか?」
「野菜いろいろ。実家から送られてきたの」
「?貴女の家は研ぎのうちでは?」
「うん、そうなんだけど、畑も持ってるんだよ。研ぎの仕事は日によるし、一気に何本も依頼があるわけでもないからね。自分でやっちゃう人もいるし」
「そうでしたか」
「うん。あ、そうだ、今日のランチ、私一品作るから食べに来てほしいな」
「茶々子さん、料理は苦手なのでは」
「えー、なんで知ってるの?でも修行中なの。食堂のおばちゃんとか中在家くんに教えてもらってて、今日はおばちゃんの許可もらえたから汁物だけ作るんだよ」
他愛もない話が続く。
でも不思議と退屈ではなかった。
そして、なにを話しても自分が持つ彼女の情報以上のものは得られなかった。
そうだ。この人は素直というか、自分を隠すことをしない。探っても新たな情報が出ないわけだ。心が開いた人だから、受け入れられる気がしてつい吸い寄せられてしまう。
彼女は危険だ……
あまり近づきすぎるのはよくない。
しかし
もっと、知りたい。
自分しか知らないような彼女の一面を見つけ出したい。
そんな思いが、仙蔵の中で芽生え始めた。
一章 終
二章へ続く
