第一章 出逢う
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忍術学園に来てから何度目かになるその対決を、茶々子は黙って見学していた。
タソガレドキ忍者の諸泉尊奈門。
彼は以前、半助に文房具で負かされたことを根に持って勝負を挑みに来ているというのとだった。最初は侵入者かと思ったが、事務員の自分には意外にも礼儀正しく接してくれ、入門表を差し出すとすんなりサインをしてくれた。
茶々子はこの勝負を見るのが好きだった。
半助がチョークを手裏剣代わりに投げたり、出席簿で攻撃をかわしたりと使えるものは何でも使う忍らしく、また尊奈門を不用意に傷つけない教師らしく、茶々子は深い感銘を受けた。
それから尊奈門の愚直さも好ましかった。本来なら闇討ちや隙を狙うのが忍だろうが、彼は白昼堂々、果たし状を持って正面から来る。
そしてだいたいは尊奈門が負かされて終わるのを見ると、実力比べでというより、尊奈門が半助に教えを乞いに来ているといった感じに見えてしまう。
生死の関わらない、ふたりの性格が色濃く出ているこの戦いに、茶々子は目を奪われるのだった。
しかし半助も忙しい身であるので、茶々子は時間を見て止めに入ることもある。
「土井せんせー、もうお時間ですよ」
「あぁ、はい。尊奈門くん、今日はここまで」
これまでは尊奈門は負かされるか、タソガレドキ忍軍の組頭が来るまで(と言っても組頭は尊奈門が負けるまで止めない)終われなかったのが、最近ではこうして茶々子が声をかけると不服そうにしながらも中断するようになっていた。
「はい、では出門表にサインお願いします」
「はい……」
「君はずいぶん尊奈門を手懐けたねぇ」
急に現れる雑渡昆奈門にも、茶々子はもう慣れていた。
「組頭!私は手懐けられてなどいません!」
「それにしても茶々子ちゃんはいつもこの勝負嬉しそうに見ているよね」
尊奈門の否定を無視して昆奈門が話を続ける。
「好きなんです」
「それは……土井殿が?尊奈門が?」
「く、組頭っ!!」
「あ……いや、ふたりのやりとりが」
少し離れたところにいた半助が肩を落とすのを昆奈門は見逃さなかった。
「つい見てしまうんです。土井先生の華麗なチョーク捌きも、尊奈門さんの変化を見るのも楽しくて」
「うんうん、分かる。土井殿のおかげで尊奈門もずいぶん成長させてもらっているよ」
「…………」
黙ってしまった尊奈門が少し拗ねているような照れているような不思議な顔をしていた。
「さて、帰るよ尊奈門。土井殿、茶々子ちゃんいつもありがとう」
教室に戻ろうとしていた半助が振り返り軽く頭を下げた。
「はい。お気をつけて」
茶々子はにこにこと手を振る。
「……また、来る」
尊奈門は少し頬を染めて昆奈門の後を追う。
「これはまた楽しみが増えたなぁ」
昆奈門が愉快そうに笑った。
