第一章 出逢う
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臨時事務員としてやってきた茶々子という人は、よく仕事の合間や仕事後に図書室に現れる。その為、同じ図書委員の後輩たちと仲良くなっているようだ。特に五年の不破雷蔵とは波長が合うのか、話をしているのをよく見かける。確かにあの柔らかな雰囲気は似ているかもしれない。
しかし彼女にも厳しい一面があるようで、よく学園に厄介事を持ち込む花房牧之介を言葉のみで追い返したのだときり丸が言っていた。
なるほどよくよく観察すると、彼女の武具、特に刃物に対する思い入れはさすが研ぎ師といったところだ。よくそういった本を借りて読んでいる。
「こんにちは。あ、今日は中在家くんだ」
長次が小さい声で「どうも」も言う。聞こえているのか聞こえていないのかわからないが、茶々子はにこりと笑って本を一冊差し出した。
「今日は返却だけお願いします」
その本は『料理の基本』と書かれていた。彼女がいつも借りるものと違うので驚いて顔を見る。
「えー、なに?意外だった?私だってこういうのも借りるよ」
そういえば、前に出たランチに飾り包丁を施したのは彼女だった。
「今は料理も勉強中なの。恥ずかしい話、実家では食材切るくらいはしたけどほとんどちゃんとした料理したことなくて」
「えらい……」
「あは、大の大人が褒められちゃった」
「苦手なことややったことのないものと向き合うのは大変なことだ」
それを聞いて、茶々子はじっと長次を見た。
「……中在家くんは年下っぽくないねぇ。見た目も考えも大人っぽい」
「茶々子さんは、年上に見えない」
「んー、それは見た目?中身?」
「見た目はそうだが、中身はわからない」
茶々子が首をかしげる。
「茶々子さんは……明るくて親切で勉強熱心で芯があって……」
長次は彼女の特徴をひとつずつゆっくりと言葉にして挙げていくと、茶々子は頬に手を当てて言った。
「そんな風に言われるとちょっと恥ずかしいな…」
「でも、少し鈍感だ」
「へっ?」
長次が茶々子に顔を近づける。さすがの茶々子も驚きとともに顔を赤くした。
「……そんな反応をされると誤解されるかも」
長次はそう言うと茶々子から、すっと離れた。その後すぐ、図書室の戸が開く音がした。
「中在家先輩、すみません遅くなって……あ、茶々子さん」
「不破くん」
雷蔵が現れて茶々子が明らかに安堵するのが分かった。長次はいつもと表情が変わらない。
「………」
「えっ、えっ、なんて?」
「今度一緒に料理しましょうって」
長次がぼそっと何か言うのを、茶々子は聞き取れず、雷蔵が通訳してくれた。
「中在家先輩は、料理上手なんですよ」
「あ、は、はい」
声が裏返り少し挙動がおかしい茶々子を、雷蔵は不思議そうな顔で見ていた。
