第一章 出逢う
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利吉は父との話が終わった後、ランチでも食べていけと食券を渡された。一応働いている身なのでこのような子供扱いは止めてほしいのだが、滅多に家に帰れない父なりの詫びのつもりなのだろうと受け取ることにした。本当は自分より母を気にかけてほしいところだが……
食堂に足を運ぶと、機嫌の良さそうな鼻唄が聞こえてきた。
「おや、食堂のおばちゃんご機嫌ですね」
利吉が声をかけると、おばちゃんは嬉しそうに返事をした。
「あらぁ、利吉くん!そうなのよー、包丁を研いでもらったから使いやすくってね」
「いつもご自身でやられてませんでした?」
「それがね、小松田くんの代わりに来た子が研師の家の子で、やってくれるって言うからお願いしたら、すごい仕上がりなのよ。プロは違うわね。すぱすぱ切れて気持ちが良いわぁ」
確か家の仕事がどうのと言っていたが、本人も研ぎをやるのか……そう言えば指先に特徴があった気がする。
それも食堂のおばちゃんを喜ばせるとは、なかなかの腕なのかもしれない。
「おばちゃん、Aランチお願いします」
「はいはい」
「ありがとうございます」
素早く出てきたランチを受け取り、空いている席につく。「いただきます」と手を合わせると、きゃいきゃいと女の子達の高い声が聞こえた。
「この煮物、かわいいー!」
「えー、これ手裏剣?すごいね」
「お花もある!食べるの勿体ない!」
ふと煮物の中身を見ると、色とりどりの野菜が様々な形をしていた。なるほど、彼女たちが騒いでいるのはこれか。あらゆるものに飾り包丁がいれてあり、今日はおばちゃんの気分が相当にのっているらしい。
「それ、茶々子さんが切ったんですよ」
気がつくと近くに六年生の食満留三郎が来ていた。「ここ、良いですか」と言うので「どうぞ」と答えると向かいに座る。
「へぇ、彼女がこれを……器用なもんだ。研ぎ師というのはやはり刃物の扱い自体も上手いものなんだろうか」
「すごい包丁さばきでしたよ。ただ、料理は自信がないと言っておばちゃんがやるのを見ているだけでしたが……いつか、食べてみたいですね……」
留三郎の表情を見て利吉は察した。
早くも彼女に絆された忍たまがひとり目の前に。
「い、いや変な意味じゃないですよ。茶々子さんって学びに貪欲で、休憩時間は図書室で調べもしてたり、今日もおばちゃんの料理も熱心にメモとってたくらいなので!やってみたいんだと思います」
「わかったわかった」
「り、利吉さんっ」
留三郎の慌てぶりに微笑ましく思う傍ら、利吉は茶々子の貪欲で勤勉で器用だというところや研ぎ師という意外性に興味を持ち始めていた。