【短編】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「はぁぁぁぁ……」
わざとらしく大きなため息をつく留三郎に、伊作はまたか、と思った。
「なに、留三郎。また茶々子ちゃんと喧嘩したの?」
「喧嘩というか、あいつまた文次郎との距離が近いんだよ!何度言っても聞く耳持たなくてさ。茶々子は気がついてないだけで、そういう目で見てるやつは結構いるんだ」
これは一種の惚気なんだろうか。
何度も同じことを聞かされる伊作の方こそため息が出そうになった。
留三郎は六年きっての武闘派で後輩の面倒見の良く、顔も良いのでわりとモテるタイプだ。ところがこの男、なかなかに嫉妬深い。
恋人は真面目な優等生で、よりによって犬猿の仲といわれる文次郎とそこそこに馬が合う。そんな彼女がなぜ留三郎と付き合うことになったのか甚だ疑問だが、ともかくそのせいでふたりが喧嘩をすることが多々あるのだ。
「文次郎が茶々子ちゃんに手を出すなんてありえないし、茶々子ちゃん本人もそんな気がないんだから話くらいしたって別に良いじゃないか」
何度同じことを言わせれば良いのか、良い加減腹が立ってくる。茶々子ちゃんの方は誰かに愚痴をこぼすのを聞いたことないし、彼女もよく付き合ってられるなと思う。もしかするとそれ以上に留三郎のことが好きなのかもしれない。
「それは……そうだよなぁ……はぁ、俺って器が小さいのだろうか……」
これもいつものパターンだ。ひとしきり腹を立てるとこうして落ち込むのだ。そしてひとり頭を冷やすと、留三郎が彼女に謝っていつも通りに戻る。
このまま放っておいても良いのだろうが、繰り返されるのも面倒なので、伊作は一計を案じることにした。
*****
夜、伊作は泊まりがけで薬草を採りにいくとかで部屋には留三郎ひとりだった。
結局今日は茶々子に謝りそびれた。
留三郎はこんなにも自分が嫉妬深いということを、彼女と付き合うまで知らなかった。相手が文次郎だからか?いや……それだけではない。
留三郎は茶々子の姿を脳裏に浮かべた。
彼女は実際、本当にけっこうな男の視線を集めている。
茶々子はいわゆるモテる女というわけではない。真面目な優等生で、どちらかというと地味。正直言って自分と付き合うまで男の気配はまるでなかった。
だが、なんというかなんとも悩ましい身体をしているのだ。口に出して言うのは憚られるが、はっきり言うと乳がでかい。腰もほどよくくびれていてなだらかな曲線を描いている。尻も丸く柔らかそうで、とかく女性的な魅力に溢れているのだ。
やはり特に大きな胸元に視線が集まりやすく、男女問わず一度はちらりと見てしまう。自分も見てしまったひとりなのだが、彼女に惚れたのはそれが理由ではない。真面目一途で、頭が冴えるのに傲慢さはなく控えめで、何より優しい。声を荒げることなどなく、人のことを悪く言うことがないのだ。そんな彼女と一緒にいると心をほぐされてしまう。
それを伝えたいがために、付き合って半年になるが今だ手を出せずにいる。手を繋ぐことはできたが口づけすらまだだ。
ひとしきり考え、明日こそ謝ろうと決意したところで留三郎は手入れをしていた忍具を片付け、寝支度をして布団に入る。
すると、天井裏から茶々子がちらりと顔を覗かせた。
「うわっ、茶々子!なんでいるんだ?」
「善法寺君が、今日いないから留三郎に会っておいで言ってくれたの」
「伊作が?」
あいつ、余計な気を回したな、と思いつつ茶々子の顔が見れたのが嬉しくて伊作に感謝した。
「降りてこいよ。少し話そう」
「うん」
華麗に降りてきた茶々子は、想像とは違い、寝巻き姿だった。普段忍装束で抑えられているものが解放され、身体の線が生々しい。
留三郎は目のやり場に困って視線を泳がせた。
「あの、留三郎……」
茶々子がなにか言おうとすると留三郎はがばっと頭を下げた。
「いや、俺が悪かった。俺が気にしすぎるのがいけなかったんだ。嫌な思いさせたよな、ごめん」
「そうやっていつもひとりで解決しないで。こっち見て」
茶々子の声に少し怒気が混じっている気がして慌てて顔を上げると、まずたわわな胸が目に入ってしまい、男の性か、つい釘付けになってしまった。
「留三郎」
「いやっ、悪い」
名を呼ばれて目線を外すと、茶々子が遠慮がちに言った。
「私、留三郎になら良いよ」
「へ?」
「ずっと、見ないようにしてくれてたでしょ、ここ」
そう言って茶々子は胸元に手を当てた。
「私、留三郎が好きだから。見て。触ってほしい」
茶々子が夜着をはだけさせようと襟元に手をかけたので留三郎はぎょっとした。
「ま、ま、ままま待て待て待て待て!」
関係を進めたいのはやまやまだが、この流れは良くない。初めてするならそれなりの雰囲気を作りたい。何よりちゃんと伝えるべきことを伝えられていない。
留三郎は茶々子の両肩を持って止めた。
「俺は、茶々子のことが本当に好きなんだ。だから大事にしたいと思ってる。まだ俺たちは、その……口づけすらしたことないじゃないか」
「…………じゃぁ、して?」
「は、い?」
「口づけして。今日はそれで許してあげる」
茶々子は目を閉じた。
留三郎は彼女の両肩に置いた手に力が入った。
恐る恐る顔を近づけ、そっと触れるだけの口づけをした。
茶々子が目を開けると、留三郎はぱっと口と両手を離してしまった。
「ふふっ、しちゃったね」
茶々子は嬉しそうに唇に触れた。留三郎の方は顔を真っ赤にしている。
「今度、続きしようね。私は心の準備できてるから」
「あ、はい」
「あ、そうだ。ちなみに、私が潮江くんと話しやすいのは、彼が全く私の身体見ないからだよ。興味ないんだと思う。それか、好きな子でもいるんじゃないかな」
そう言って茶々子はくのいちらしく颯爽と帰っていった。
朝、伊作が部屋に帰ってくるまで、留三郎は固まったままだった。
「仲直りの方法」終
ーーーーーーーー
【あとがき】
読んでいただきありがとうございます。
しっかりと手順を踏みたい留三郎と実はじれったく思っていた彼女。伊作はいったい彼女に何を言ったのでしょうね。
ちなみにこの話の裏タイトルは「留三郎の理性VS彼女のエロボディ」でした。
4/4ページ