【番外編】男なんざ!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「善法寺先輩、匿ってください」
荘助がタソガレドキより戻ってきて数日。彼女が女であると学園内に伝わってからというものの、なぜかくのいち教室の女の子からの人気が爆上がりした。
男装の麗人というのは、ウケが良いのだろうか。
とにかくそんなわけで、何人かの熱烈な追っかけから逃げ回っている。
それから医務室は彼女の避難場所となったのだった。
「いいよー、ちょうど傷の具合も診たかったしね。調子はどうだい?」
梅の香城での騒動でかなり深傷を負ったように見えた荘助もとい志乃は、ひと月ほどタソガレドキで療養した後、冬休み明けと同時に学園に戻ってきた。回復力が凄まじいと思ったが、志乃曰く相手は本気で自分を殺す気などなかったから、見た目ほど重傷ではなかったのだということらしい。
そうは言っても傷口が開いてしまっては大変なので、こうして定期的に医務室に来てもらっていたのだ。
「この通り順調です。手もだいぶ動かせるようになりました」
志乃は包帯の巻かれた手を握ったり開いたりしながら言った。あのときはクナイが突き刺されたという手が本当に痛々しかった。思い出すとこちらまで手に痛みを感じてしまうほどだ。
「はい、でも消毒はするから手出してね」
「はい」
志乃の手を取り、包帯をほどいていく。
「……えっと、志乃」
「荘助でいいですよ。呼びにくそう。先輩方ほとんどが荘助のままです」
「いや、せっかく両親からもらった名前じゃないか。僕は志乃と呼ぶよ」
「ありがとうございます。善法寺先輩は本当に優しいですね」
「はは、そうかなあ」
「そうですよ」
「ねぇ、志乃。僕は、もっと前からこんなふうに君に頼ってほしかったよ。秋頃だったかな、五年生と少し気まずい思いをしてただろう?あれ、僕には君がかなり無理をしているように見えたな」
志乃が驚いて伊作を見た。
「………それを言われたのは二回目です」
「ん、一回目は誰だろう?」
「雑渡昆奈門さん」
「あー、雑渡さんか。さすがだなぁ。よく見てる。けっこう親しげに見えたけど、志乃はなにか特別な仲なのかい?」
「特別……えっと、そうですね。実は古くからの知り合いで。私にとっては特別な人です」
少し志乃が寂しそうな顔をしたのは気のせいだろうか。
「うーん……善法寺先輩は案外忍に向いてそうです」
「え、なんだい急に!」
「さらーっと聞くから、うっかり答えちゃいました。今の誰にも言ったらだめですよ」
「え?う、うん。もちろん」
「忍者の三禁。破ったら潮江先輩にどやされる」
「え、特別ってそういう意味……」
「あ」
志乃の頬に少し赤らみ、それを隠すように下を向いた。
「……忘れてください」
「忘れないよ。君がこんな顔するのなんて珍しい。卒業前に面白いもの見れたなぁ」
志乃をこんな顔にするなんて、雑渡昆奈門は悪い大人だと伊作は思った。察するに、彼女の想いは叶わぬものなのだろうなとも。
それに忍者の三禁というが、誰かを想うくらいは許されるのではとないかと思う。
「はい、手当ておしまい。くれぐれも無茶しないように」
「ありがとうございます。卒業まで、またお願いします!そろそろ、大丈夫そうなので戻りますね」
「うん、またいつでも避難しにおいでー」
志乃が頭を下げると、伊作はひらひらと手を振った。
志乃の足音が聞こえなくなるのを確認してから、伊作は言った。
「雑渡さん……志乃行きましたよ」
それを聞いて天井裏から昆奈門が下りてくる。
「ありがとう。言わずにいてくれて助かったよ」
伊作は昆奈門をじーっと見た。その目は座っている。
「なぜ隠れたんですか?彼女、雑渡さんに会いたかったと思いますよ。雑渡さんだって志乃のことこうやって気にしてるじゃないですか」
「……でも私は彼女の邪魔になるからね。見守るくらいがちょうど良い」
そう言う昆奈門もずいぶん寂しそうな顔をしているように伊作には見えた。
「あーあ、あんな風に想われているなんて良いなぁ。志乃のあんな表情初めて見ましたよ?」
「うん、ほんとに。可愛くて困っちゃうよね」
そう言った昆奈門は志乃が出ていった方向を見つめていた。それは先程までいた彼女の影を追いかけているようであった。
案外、彼女の想いは叶わぬものではないのかもしれない。ただ、今はなにか阻むものがあるのだろう……いずれ時が解決するのだろうか。
どうかふたりの気持ちが報われますように。
伊作はそう思わずにはいられなかった。
「モテる彼女の避難場所」 終
ーーーーーーーー
【あとがき】
読んでいただきありがとうございます。
伊作、本編の最初に出てきたのにあまり出番なく終わってしまったので、番外編で登場してもらいました!
志乃にとって伊作は、どこか癒しだったのではないかなあと思います。
こんなふうに、さらっと聞き上手でいろんな人から悩み相談される人っていますよね。伊作はきっとそんなタイプ。伊作の悩みは留三郎が聞いてくれていると良いね。
1/10ページ