【過去編】夢の通い路
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「さて、大方片付いたな。引き上げようか」
今回の戦は事前の諜報活動が上手く行き難なく終わりを迎えた。
「組頭、少しよろしいですか」
皆が撤収していく中、陣内左衛門が寄ってきた。
「どうした、陣左」
「お耳に入れるべきか微妙なところなのですが……」
「陣左が気になるならそれは必要な情報だよ。言ってごらん」
「は。敗走兵の行方を追っていたところ、北の林の方で妙な女を見まして」
「……妙な女?」
「十七八歳くらいの女で、木刀一本持って林の中をふらふらしていたんです」
「なにそれ。怪談話?」
陣内左衛門が冗談など言うはずのないことは分かっているが、あえてちゃかしを入れる。
「いえ、ちゃんと実体がありました。男三人に襲われて刀を奪い斬り伏せていたので」
この男のこういうちゃかしを大真面目に返してくれるところが面白くて気に入っている。
「どこぞの刺客かとも思いましたが、着の身着のままという雰囲気でしたし、動きも…その、確かに動きは素早く見切りも良いのですが、どことなく素人臭さがありました。さらにはその後吐いて倒れ込んでしまったんです」
「ふうん……興味深いね。それで、その女どうしたの」
「忍術学園の善法寺伊作と鉢屋三郎が連れ帰りました。関係者という感じではなかったです。いつもの善法寺伊作の性質が為でしょう」
「ん、彼ならそういうの放っておけないからね」
木刀一本持った女。
男三人を斬り伏せ、忍術学園に拾われた…
「ねぇ、陣左。その女うちに連れて来られないかな」
「えっ!?」
「木刀一本で戦場付近をうろつく素性の怪しい女。陣左の見立てによると素人ながらにいきなり男三人を斬り伏せた度胸と才。おまけに忍術学園に拾われる運の強さ。放っておくには惜しいと思わないか」
「……それは、黒鷲隊を動かすということですか」
「その価値はあると思うのだけど。ま、その前に一度その現場を見てこようかな」
「では、私も供を」
「ひとりで十分。陣内に怒られないうちに帰るから、陣左は先に戻りなさい」
「……承知しました」
陣内左衛門は少し不満そうにしながらもしっかりと返事をして帰っていった。
現場を見たところで何が変わるでもなし、後日忍術学園に探りに行けば良いのだが、確認せずにはいられなかった。
北の林に入ると、敗走中に息絶えた者、うちの者が手にかけた者。その中に異質な者が三つあった。
迷いのない新しい刀傷。甲冑の隙間を狙い、急所を上手く捉えているが刃筋がずれていて傷口に粗がある。
陣左が言っていた素人臭さというのが見て取れる。女が手にかけた三人の男はこれだろう。
さて、気になるのは木刀だ。
もしかすると、と思う。
我ながら都合の良い考えをしてはいないか……
辺りを見回すと、都合良くそれはあった。
そこでふ、と不安が生じた。
それは散々探した彼女のものであってほしいような、ほしくないような複雑な思いだった。
違ったならば、どこかで生きる彼女がただ私の中に存在し続けるだけ。
もし、彼女であったならば……
タソガレドキ組頭としては足枷になりかねない想いが生じてしまうのではないかと怖かった。
荘助殿はとんだ呪いを遺してくれたと苦笑する。いや、自ら選択したことだ。今さら誰を恨むでもない。
過去を追うな
未来を願うな
そう呟き木刀を取り上げる。
なんてことはない。大丈夫だ。
あぁ、これは……
間違いなく私が志乃に作ってやったもの。柄頭に彼女の名が彫ってある。
志乃、ついに君に辿り着いた。
