【過去編】夢の通い路
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招かれた屋敷が襲われたようだった。
今宵、私が相手をしていた男は敵襲と知ると何も言わず私を押し退け部屋を出ていった。
その後に聞いた呻き声がその男のものだったかどうかは分からない。
少し部屋で身を潜めてやり過ごした後、姐さんたちを探しに出る。
「姐さん…」
廊下に出ると血の臭いがした。
あちらこちらで人が転がっている。
こんな世の中だ。このような場面に遭遇したことは何度かある。とはいえ、今回は被害が大きい。どうやらこの屋敷の人たちは敵襲に気付くのが遅かったらしい。
しばらく屋敷内をうろうろしてハッとした…
あそこにいるのは……
明らかに遺体となってるそのふたつの身体は、笛を教えてくれた若い姐さんと鼓をしていた爺だ。
周囲がやけに静まり返っている、と思った。
唾を呑み込む音がやけに大きく聞こえる。
"死"というものがすぐ近くにあることに気が付かざるを得なかった。
そうだ、こんな世の中なのだ。
これまで皆で生き延びて来られたのは運が良かったのだ。
恐怖など感じている暇はない。
涙など流していられない。
立ち止まれば死んでしまう。
とにかくもうひとりの姐さんを探そう。
「姐さん…どこですか」
ひとつずつ部屋を確認していく。
すると、微かに声が聞こえた。
「姐さんっ!」
「志乃……」
絞りだすような声だった。
姐さんの身体は血に染まっていた。
そしてすぐ隣には姐さんの相手だった男が息絶えていた。
「この男、あろうことか私と心中しようとしたのよ……も、う信じられない…」
恐らく姐さんは男に斬られ、男はそのまま自刃したということだろう。
「姐さん…」
「……志乃……あなたはすぐ、ここを離れなさい…裏手から…」
「姐さんも一緒に!」
「無理、よ………もう…志乃、早く行きなさい……」
「姐さ……」
あぁ、私は何のために剣の稽古をしていたのだろう。
守るからと言ったのに……
何一つ守れなかった。
姐さん…ごめんなさい。
それでもまだ私は生きようとしている。
開いたままの姐さんの目を閉じて、部屋を出た。あの家へ、一度戻ろう。父上と過ごしたあの家に。ずいぶん東へ来てしまったから、とにかく西へ西へ向かおう。
こなもんさんからもらった木刀を持ち、数日生きるだけの金をくすねて外に出た。
とにかく、走れ。
まだ侍や忍があちこちにいるかもしれない。
走り抜け。
走り抜けた先に父がいるかもしれない。
恋しい人がいるかもしれない。
足掻け
生きろ
誰かにそう言われているような気がして、ただひたすらに暗闇を走った。
