【過去編】夢の通い路
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あれから幾年……
「志乃はまた木刀を振っているの?」
一座の長である姐さんが興味あり気に見てきた。
「舞の稽古もあるのに、毎日欠かさないのね」
父がいなくなっても、こなもんさんが来なくても、一座に入っても、毎日の剣の稽古は欠かさなかった。
父から譲り受けたものを忘れたくなくて、"こなもんさん"に会えたときに成長したねと褒めてもらいたくて。
師の動きは自分の記憶に頼るところが大きいが、舞の稽古も手助けをしてくれた。
「はい。武と舞は通ずる所があります。それに、いざというとき、私がお姐さんたちを守れるように」
「ま、頼もしいわ……ねぇ志乃、あなたまた背が伸びて大人っぽくなったわね」
「もう十四になりましたので」
「そう……」
姐さんは少し躊躇ったあと、静かに話し始めた。
「そろそろあなたに言っておかなくてはならないことがあるわ」
「……夜のことでしょうか」
姐さんは目を見開くと、申し訳なさそうに「知っていたのね」と呟いた。
売っているのが芸だけでないのは、一座に入って数年経って気付いた。町中で庶民に披露するだけでなく、お偉方の目に止まれば城には入り、さらに気に入られれば姐さんたちは寝所に召されることもある。そしてその分報酬を多く戴く。
中には幼いのを好む輩もあったようで、入ったばかりの私も目を付けられたことがあったようだったが、姐さんが庇ってくれたと以前爺から無理やり聞き出していた。
「そちらの方も教えてください」
私は木刀を置いて姐さんに向き直り、言った。
ここ最近体調の優れなさそうな姐さんへもう負担をかけたくない。
「志乃……でもあなた、想う相手がいたのではなかった?」
「私の幼い初恋です。相手はうんと大人ですし、もう結婚しているかもしれません。それに……」
ずっと探しているが、父もこなもんさんもそれらしい人は見つからない。
父はともかくこなもんさんはもう私のことは忘れているかもしれない。
「生き延びることの方が大事です。生きていないと会うこともできない」
「そう……ね」
そう言って私の手を握る姐さんの手が震えていた。
*****
その夜、私は幼い頃の夢を見た。
「こなもんさんに嫁ぎたい」と言っていた頃の夢。
父に何故だと聞かれて、
「とっても優しいし、父上よりも大きくてかっこよくて強いから」
と答えると、父は
「…何も否定できんな」
と笑った。
こなもんさんは
「じゃぁ志乃、大人になるまで脇目を振るんじゃないよ」
と冗談めかして言うと優しく私の頭を撫でる。すると父が少し強い口調で言った。
「志乃、"こなもんさん"は確かに良い男だが、簡単に貰われるんじゃないぞ。この男を圧倒するような強さを持て」
「もー何言ってるんですか荘助殿」
*****
ねぇ、こなもんさん
何処にいるの?会いたいよ
一緒に父上を探して
こなもんさん、私、
ずっと稽古続けてたよ
少しは強くなれたかな
こなもんさん、ずっと好きだった
こなもんさん、私……
もうこなもんさんのところに嫁げないね……
