【過去編】夢の通い路
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父が帰らなくなって三月が経った。
最初は、仕事が立て込んでいるとか新しい住まいを探すのに手間取っているのだろうと思っていた。母が亡くなってからというもの、住むところを転々とし、まるで逃亡者のような生活をしていた私は、狩りなどで食料の現地調達はできるようになったし、父親の数日の不在など気にも止めなかったのだ。実際に二三日帰らないことなどよくあることだった。
しかし、十日も過ぎるとさすがに不安に思った。
そして、一月、二月、三月経つ。
不安など遠に通りすぎ、帰らぬ父を待つよりひとりでどうにか生きるしかないと考え始めた。
自らの生活を思い返すと、父は何者かに追われていたというのが自然だった。
住まいを転々とし、いつも人気のあまりない所に家を構えていれば嫌でも気がつく。
では父はとうとう囚われの身となってしまったのだろうか。
それとも、もうこの世には………
父が何をしたというのだろう。
何をしたでもなく命を奪われるのが今の世か。
母もそうだった。村の友だちも。お隣の人たちも、みんな……
しかし、そもそも私は父が何の仕事をしていたのか知らない。
もしかしたらどこかで身を隠しているのかも。探しに行けば見つかる?仕事仲間だと言っていた"こなもんさん"に会ったら分かるかもしれない。
しかし、以前よく顔を出してくれた"こなもんさん"は随分前から来ていない。
そういえば前に来たときこなもんさんは出世したから忙しくなると言っていた。きっと仕事が大変なのだろう。
とりあえずは食糧調達。
兎を捕る罠を仕掛けたあと山菜を摘む。
それにしてもどうやって父やこなもんさんを捜すのかと考えている矢先だった……
「こんな山奥まで来てしまって。宿もないし客もいないわ。山賊でも出たらどうしましょう」
若い女の声と山を踏みしめる数人の足音がした。
「あら、お嬢ちゃん」
一等美しく色香を纏わせた女が笠を傾けて話しかけてきた。後ろにこの女より若そうな女と、少し年配の男がひとり。
「こんな山奥でひとりきりで。どうしたの」
心配そうな目線が妙に心に刺さり涙が出そうになるのを必死で堪えた。
「………近くに住む者です。旅の方ですか?ここには宿もありませんので町まで案内します」
「あら、しっかりした子だこと。ありがとう。助かるわ」
美しい女がそう言うと後ろのふたりも丁寧に頭を下げてくれた。
町に向かいながら話を聞くと、この一行は芸を売り歩く旅の一座だと知った。
町に着く直前、私は思いきって一座に入れてくれと頼んだ。父やこなもんさんを探すにしても金がいる。仕事がいる。それに色んな所に出入りする一座なら情報を得られるのではないかと思った。
若い女と年配の男は驚き渋ったが、恐らく一座の長であろう女は私をじっと見ると静かに言った。
「良いわ、連れていってあげる。あなた器量も良いし。きちんと修行して芸を身に付けてもらうわよ。ただし、身の上をちゃんと話して。嘘はダメ」
こうして私は一座のひとりとして生きていくこととなったのだった。