第三章
夢小説設定
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数日後、志乃の熱がようやく引いたところで、昆奈門が部屋に顔を出した。
「危険な目に合わせてしまって申し訳なかった」
深刻な顔をする昆奈門に、志乃は慌てて頭を振った。
「いえ、いいえ!生きて帰れたので良いんです。忍は……父や昆奈門さんは、ずっとこうやって生きてきたのですね。私、何も知らなかった」
「荘助殿は、志乃に護身として色々教えていたけど、自分達の世界を知らずに生きて欲しいと思っていたんじゃないかな」
「けど、私は何の巡り合わせか忍術学園に拾われて忍術を学び、昆奈門さんにまた会えました。それに……血が騒ぐと言うんでしょうか、仇と刀を交えたとき、気持ちが高揚するのを感じてしまったんですよね」
「ふふ、それは確かに荘助殿の血だね」
昆奈門は、何の話をしていようが志乃が自分と話すときの顔が少女のようになるのを、とても愛おしく思った。
「志乃……」
「は、い……?」
昆奈門が志乃の頭から頬に触れると彼女の頬が熱を帯びた。
あぁ、この子は間違いなく私と同じ想いを持っている。
昆奈門は今すぐにでも志乃を我が物にしたい欲望に駆られた。
しかし彼女の自分に向けるそれは、幼き頃よりの刷り込みのようなものだ。彼女をこの手に収めてしまえば、彼女の才を、自由を、選択を、可能性を全て奪ってしまうことになる。それに、自分はきっとまた彼女の立場を利用してしまうだろう。
「今回、君の過去を利用することになってしまい、すまなかった」
「いいえ」
「傷が癒えたら、君は忍術学園に帰ってしっかり学びなさい。今回連れてきておいて何だが……卒業後も、タソガレドキには来てはいけない。志乃はもう、私に関わらない方が良い」
志乃の目が見開かれ、悲しみの色に染まった。昆奈門は抱き締めたい気持ちを懸命に堪えた。
本当は、忍などなって欲しくはない。命の危険など犯してほしくはない。できるなら、この手でずっと守ってやりたい。
しかしそれは、自分にはできない。
タソガレドキ領内で生まれ生きてきた自分には、それ以外で生きる道はない。
それに志乃を巻き込むわけにないかない。
「…………わかりました」
志乃は目を伏せ、先日の忍務を言い渡したときと同じ声色で答えた。
なぜ、とは聞かれなかった。
昆奈門は、ホッとすると同時に寂しさも覚えた。
*****
なぜ、とは言えなかった。
志乃は昆奈門の気持ちがなんとなく分かってしまった。
自分は利用されることなど、構わなかった。しかし、それは昆奈門を苦しめることのようだった。それほどまでの想いが志乃には嬉しいのか辛いのかよく分からなかった。
確かなのは、もう昆奈門に会えないということだけ。
志乃はまたひとり取り残されたように感じていた。
いや、私は本当にひとりだろうか。
私はずっと誰かに生かされてきた。
母によって父によって
昆奈門によって
忍術学園によって
(運の強い娘だ……その才、十分に活かせ)
なぜか親の仇の声が聞こえた。
次回、最終話