第三章
夢小説設定
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それから荘助と志乃は住まいを転々とすることになった。その行動から、あの焼き討ちは荘助絡みのことであることは昆奈門の目から見ても明らかだった。
「次期当主の差し金でしょうか」
「いや、兄上は俺の存在すら知るまい。幼き頃より俺は影に、兄は跡目として完全に分けて育てられた。俺は影になるため兄を見ているが、兄は俺を見てはおらん」
「と、なると……」
「俺を弟と知っている者……邪魔なのか利用したいかだが、恐らく後者だろう。あの日は忍務で俺が不在なのを知っていた者がほとんどだ。最初から狙いは我が妻子だったということだろうな」
「今さらですが私にそんなことまで話して良いのですか?」
「昆奈門。お前はタソガレドキの者だが、妙に義理堅いのを知っている。俺に義理は通すだろう?現に俺の秘密をずっと胸の内に納めてくれている。それに……俺はもう我が妻を殺した者のいる梅の香には戻れん。志乃の命まで奪わせてたまるか。だが…」
荘助は少し遠くを見、長く息を吐いた。
「忍のお前に言うのもなんだが、俺が死んだら志乃を頼む」
それから幾年……
志乃9歳。荘助は娘を残し、突然姿を消してしまった。
折しも雑渡昆奈門が部下を助けるため全身に火傷を負って死を彷徨った年でもあり、志乃は他に頼る者もなく完全にひとりきりになったのだった。
*****
「志乃、記憶はもう全て戻っているの?」
「実は少し前から、自分のことはほとんど思い出せたんです。その、昆奈門さんことはつい先程でしたけど」
申し訳なさそうに言う志乃が可愛く思え、頭を撫でると、志乃は涙をこらえ、絞り出すように話を続けた。
「私、思い出さないようにしていたんだと思います。父が戻らなくなり、さらに昆奈門さんが見えないことは何より堪えました」
それを聞いて昆奈門は手を離し頭を下げる。
「すまない。私は私でこんな状態になってしまってね」
昆奈門は自分の身体を指し、苦笑いしながら言った。
「いいえ」
志乃は大袈裟に首を振った。
昆奈門の全身に巻かれた包帯を見れば、相当の苦しみの中にあったことは容易に想像がつく。志乃は自分の手をぐっと握りしめた。
「昆奈門さんが、生きていてただけで私は……本当に良かった」
「私も、志乃の無事な姿が見られて嬉しかったよ」
昆奈門の笑みは志乃を妙にくすぐったい気持ちにさせた。この人の前にいると自分は幼い子どもにさせられてしまう、と思った。