アフターストーリー
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「色々と整えるから、少し待っていてくれないか」
昆奈門にそう言われ、志乃は日々の仕事をこなしつつ待つことにした。
しかし、三日、四日、ひと月、ふた月と経つがなんの音沙汰もない。
少しとはいったいどれくらいなのだろう。
昆奈門に抱きしめられたあの胸の温かさを、背に触れられた手の大きさを、思い出しては溜め息をついた。
とはいえ、あの人の忙しさを思えば、ひと月ふた月など、大した長さでもないかもしれない。待っていよう、と思い直してはまた溜め息をついた。
「おい、なんだその溜め息と気持ち悪い顔は」
梅の香城の先輩忍者である仙蔵が、思考を断ち切るような鋭い言葉をなげかけてきた。
「士気が下がるから今すぐやめろ」
この人の言い方は忍たまの頃から変わらずである。
「は、はい、気を付けます」
「志乃、殿のお呼びだ。すぐ行け」
「はっ」
*****
昆奈門は頭を抱えていた。
志乃に待っていてくれと言ってから、忙しさもあり、何もできずにいる。ひと月過ぎてようやく落ち着いたものの、思考がまとまらずにいた。
「組頭、なにかお悩みで?」
忍務の報告を終えた山本陣内が、不思議そうな顔で訊ねてきた。
「あー陣内。そんなふうに見えた?」
「はい」
「あー…実はだな、妻を迎えようかと思っているのだが……」
「ほう。ついに。お相手は志乃殿でしょうか」
「え、あぁ。わかっちゃう?」
「縁談を断り続けた貴方の結婚となれば、それ相応のお相手かと。今考えられるのは彼女しかいないでしょう」
「そんなにわかりやすい?」
気まずそうな昆奈門に対し、陣内は心底楽しそうに笑う。
「それは、もう。ところで彼女は梅の香城主の姪御ですよね、公にはしてませんが。我が城との繋がりを考えても殿が反対するとは思えませんし、何を悩まれます」
「うん、それだよ、それ。あまりに都合が良すぎる。志乃は殿にも気に入られてるしね。私は彼女のその立場がなかったら妻に迎えることなどなかっただろうなと」
「それは組頭の立場ともなれば当然でしょう。なにか問題でも?」
「彼女の真っ直ぐすぎる気持ちに対して、あまりに失礼ではないか。年齢にしても、もっと相応しい人はいるだろう」
それを聞いて陣内は思わず吹き出してしまった。
「はははっ、つまりは自信がないのですね。これは珍しい。貴方のような人が、そんなに弱気でどうしますか!」
昆奈門が陣内の笑いが止まるのを待ってから、真面目な顔をして言った。
「自信なぞないよ、陣内。たた私は己をよく理解しているのと、陣内含め、優秀な部下達を信頼しているだけだ」
「それは有り難いお言葉ですね。では、その優秀な部下が申し上げることをお信じください」
陣内は畏まって、昆奈門の前にひざまずいた。
「志乃殿を早く娶ってしまいなさい。これはタソガレドキのためでもありますが、皆組頭の幸せを願っています。それに彼女も自分の立場を十分に分かっているでしょう。真っ直ぐだが、案外にしたたか。この城で私が指導したときの印象ですが、間違ってはおりますまい。それに、彼女に相応しい相手は組頭をおいて他にはないと断言できます」
「そうか……」
昆奈門は静かに頷き、かつて父とも兄とも思った部下を見つめた。
*****
「志乃、参りました」
「うむ、入ってくれ」
志乃は部屋に通されると、頭を下げた。
「実は、志乃に縁談が来ている」
志乃は困惑した。昆奈門を待つ間にこんな話が来ようとは思わなかった。
「え!?いや、私は結婚など」
「まあ、そう言うな。ぜひにとわざわざ来ているのだ。タソガレドキの城主とも話はついている」
「タソガレドキ……?」
志乃がようやく顔を上げると城主のすぐ隣にはずっと会いたかったその人がいた。
「お待たせ」
「昆奈門さん…」
ふたりの様子を見て、城主は腰を上げた。
「私は外すから、少しふたりで話すと良い。日取りは改めて決めよう」
そう言うと、城主は側近を連れて奥へと入っていった。
「昆奈門さん、あの……結婚って」
「うん。我が殿にも了承を得たから、ひとまず挨拶に来たんだ」
「えっと?私、自分が結婚するだなんて思わくて、正直混乱しています」
「え!?」
「私は、以前のようにまたお会いできればそれだけで」
「えっ」
ふたりで顔を見合わせた。自分の一人相撲だったのではあるまいか。陣内の「早く娶ってしまいなさい」という言葉が昆奈門の脳裏でこだました。陣内め…
しかし、もう後には退けない。
「……離れているのは嫌だと言ったのは君だよ。うちの殿もそちらも快諾済み。逃がしはしない。覚悟を決めてもらうよ」
「ふふ、そこまで言わなくても。驚いただけです。貴方の側にいられるなら、私は喜んでお受けます」
志乃はにこりと微笑んで昆奈門の手を取った。
「不束者ではございますが、どうぞよろしくお導きくださいませ」
それを聞いて、昆奈門は深い安堵の溜め息をついた。
終
ーーーーーーーー
【あとがき】
最初は誰で落とすのか、ちょっと悩みました。
兵助、三郎、仙蔵と模索し、複数バージョン作る?とかも思いましたが、夢主の生い立ちや性格考えてやはり雑渡さんが一番自然だなと。
ちなみに雑渡さんが縁談を断ってきたのは、夢主のためというより、相手のことを思ってのこと。全身大火傷負ったお体ですからね。メンテも大変でしょうし、相手を怖がらせてはいけないとお考えなのでしょう。その点夢主は昔から見知った仲ですし、くのいちですし、身なりなど気にせずずっと好きでいてくれているわけですから、立場だけでなく気持ち的にも非常に都合が良いというわけです。
……と、妄想を繰り広げた結果、こうなりました。自分で解説すると恥ずかしいですね。
今後は、番外編や結婚編、「男なんざ!」とは関係ない短編を上げていきますので、興味あるかたはまた読んでいただけると嬉しいです。
長編もまたそのうち。今回シリアスだったので次は学園内メインで明るめのやつがいいなと思っています。
3/3ページ