アフターストーリー
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「まさか志乃が使者とはね」
志乃と尊奈門は荷を牽きながらタソガレドキ城へと向かっていた。
志乃は梅の香城主から呼び出され、タソガレドキの使者として来ていた尊奈門と一緒に今年の梅干しと梅酒を届けてくれと言われたのだった。
「それにしても、卒業後はてっきりタソガレドキに来るものと思っていたぞ。組頭も大事に育ててたっぽかったし」
旅路の途中、尊奈門が志乃になんの遠慮もなくそう聞いてきた。
「うーん……まぁかなりお世話になったし、恩返しもしたいところだけど、梅の香にもまた深い縁があるからね。姫様のことも気になったから」
「まぁ、そうか。一応、城主の姪だもんなぁ、お前。そうだ、城に着いたら組頭にもちゃんと挨拶していけよ」
それを聞いて志乃はドキリとした。
タソガレドキに就職しなかったのは、昆奈門に、ここに戻ってくるなと言われたからというのが一番の理由だ。
「志乃が梅の香に行ってからも、気にしている様子だったから」
「そうなんだ……」
なぜ、気にしてくれていたのだろうか。来るなと言ったのは彼なのに。志乃は複雑な気持ちがありつつも胸のあたりがじんわりと温かくなるのを感じた。
*****
「ただいま戻りました」
尊奈門に付いて城の中へ入ると、見たことのある顔が近付いてきた。
「おぉ、尊奈門が女連れだ」
「高坂さん、からかわんでください。この人は梅の香の使者殿ですよ」
「高坂さん、お久しぶりです」
志乃が一礼して顔をあげると、高坂陣内左衛門は目を見張った。
「え、荘助?いや、志乃だったな…なんか、見違えたな」
「うんうん、ますます美人になった」
「組頭!!」
どこからともなく現れた昆奈門が、目を細めて志乃を見た。
「久しぶりだね。元気だった?」
志乃は昆奈門の顔を見ると胸が締め付けられるような心地がした。
やはり、私はこの人のことが……
それ以上は心の中でも言わないようにして、何食わぬ顔で答える。
「はい。雑渡さんも、健勝そうで何よりです」
「うん、ありがとう」
「献上品があるので黄昏甚兵衛様にお目通り願いたいのですが、可能でしょうか」
「もう話通してあるから、おいで。尊奈門も、ご苦労さん」
そう言って尊奈門から荷物を受けとると、昆奈門は志乃を城の奥へと案内した。
*****
黄昏甚兵衛は、面会を果たした志乃を「この後、宴を催すゆえ準備が整うまで待て」と別室へと通し、待ち時間を昆奈門に「使者殿をお相手せよ」と命じた。
「楽にしてて良いよ、疲れただろう?」
昆奈門に言われ、志乃はふぅ、と軽く息を吐いた。
「ありがとうございます。こんなに畏まる席は久しぶりで、正直緊張していたんです」
昆奈門も一緒に足を崩すと、志乃はくすくすと笑いだした。
「その横座り、ずっとなんですね。前に注意されてませんでしたか?」
「あら、そんなこと覚えてたの」
「……忘れません」
貴方のことですから、と言いそうになるのを志乃は堪えた。
昆奈門は少し困ったように微笑むと少し目線を逸らして話題を変えた。
「毎年、うちの殿はそちらの梅を楽しみにしてるんだ。酒も奥方やくのいちに評判でね。戦好きの殿もそちらさんには手を出さない。梅の香城主殿は外交上手だ」
「それは良かったです。タソガレドキと戦になるのは避けたいですから。あ、実は梅の香の忍が城に入ってまず最初に覚えることって梅仕事なんですよ。今年も丹精込めて作ったので喜んでいただけると嬉しいです」
「では今回のも志乃の手も加わっているわけだ。それは楽しみだな」
志乃は胸がぎゅぅと押し潰されそうな心地がした。昆奈門の言葉が、態度が、全てが志乃の心の奥に入り込んで刺激する。
黄昏甚兵衛は、何の思惑があってこの人に私の相手をさせたのか。どこからどこまで知っているのだろう。私を城主の姪と知ってはいるのだろうが……私は、どう対応したら良いだろう。
「うちの殿は……志乃のことを気に入ったようだね」
「へ?」
「まぁ、素性は以前君をうちに置いてたときから伝えてあるんだ。男装も、武術の腕前も殿は見てるよ。また今日はうって変わって"美しいお嬢さん"になっているから、驚いてたな。使者の役割もしっかり果たしていて印象が良かった。それにうちの殿は意外性のあるものが好きらしい」
「あ、はぁ」
「まぁつまり、私がここにいるのはそういうことだよ」
どうやら黄昏甚兵衛に礼を尽くされているということのようだ。
「それは、ありがたいことです」
では貴方は、どのような気持ちで私に接しているのですか?
志乃は心の中で問いかけた。
口に出す勇気はまだなかった。