第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
バイトの内容は女中仕事だった。
人員の異動があったので、不審なことはないか、不満な様子はないかなど様子見て報告を上げてほしいとのことだから、これも立派な忍の仕事と言えるだろう。
女中にまで気を配るところを見ると、この戦国の世で梅の香城が守りに強く城内が平和な雰囲気を保っているのが理解できる気がする。
特に問題もなく数日バイトをこなし、いよいよ姫の祭見物につきあう日がやってくると、荘助妙にそわそわした気分になった。
十中八九、仙蔵に会う口実が欲しくて護衛を依頼したであろう梅の香姫とどう接するか考えあぐねていた。
同じような年頃だが初対面の自分が何を話せば良いのか……そもそも望みの相手ではないのに祭に行きたいだろうか?
結論が出ないまま時間になり、姫を迎えに行くと、思いの外明るい表情で迎えられた。
「桂川様、よろしくお願いいたします。本日は兄上と呼ばせていただきますね」
なるほど、兄妹の設定で出掛けるということらしい。
「承知しました。私は、なんとお呼びすれば?」
「“はる”と…」
姫がそう言うと、側仕えが
「姫様、それはいけません!」
と遮った。
「なぜ?父上以外私を名で呼ぶものはいない。城の外の者にも知られていないはず。それに兄妹として出掛けるのに名を呼ばないのは変だわ」
姫が黒目がちの愛らしい顔つきとは反対に、鋭い声で冷たく言い放つと側仕えは困った表情のまま黙ってしまった。案外、気が強そうな姫様だ。
「……では名で呼ばせていただきます」
荘助はそう返事をすると、心の中で気合いを入れた。
*****
城の外に出ると姫は長いため息をついた。
「どうされました?」
荘助が顔を覗き込むと、姫はにこりと笑いかけてきた。
「やっと解放された!本当に城の中って息が詰まる!そう思いませんか?」
なるほど、この姫はいわゆるおてんばな質なのだろう。しかもそれを城内では抑えて過ごしている。
「外出はあまりされないのですか?」
「母が亡くなってから父は輪をかけて過保護になってしまって、年に一度祭見物が許されているだけなんです。だから、今日はお付き合いいただけて本当に嬉しいです」
出掛けるのが嬉しいのは本当だろうが、あからさまな笑顔がどうも気にかかる。気を遣わせてしまっているような気がしてもどかしい。
「今日は……立花先輩に役目を果たせと念を押されました。貴女の願いを1日だけでも叶えたいと思うので、なんなりとおっしゃってください」
荘助の言葉を聞くと、唇を噛んで下を向く。おしゃべりだった姫が急に口をつぐんでしまった。荘助も声をかけることなく、ふたりの間にはしばらくの沈黙が流れる。
まだ遠いはずの太鼓の音がやけに大きく聞こえた。
人員の異動があったので、不審なことはないか、不満な様子はないかなど様子見て報告を上げてほしいとのことだから、これも立派な忍の仕事と言えるだろう。
女中にまで気を配るところを見ると、この戦国の世で梅の香城が守りに強く城内が平和な雰囲気を保っているのが理解できる気がする。
特に問題もなく数日バイトをこなし、いよいよ姫の祭見物につきあう日がやってくると、荘助妙にそわそわした気分になった。
十中八九、仙蔵に会う口実が欲しくて護衛を依頼したであろう梅の香姫とどう接するか考えあぐねていた。
同じような年頃だが初対面の自分が何を話せば良いのか……そもそも望みの相手ではないのに祭に行きたいだろうか?
結論が出ないまま時間になり、姫を迎えに行くと、思いの外明るい表情で迎えられた。
「桂川様、よろしくお願いいたします。本日は兄上と呼ばせていただきますね」
なるほど、兄妹の設定で出掛けるということらしい。
「承知しました。私は、なんとお呼びすれば?」
「“はる”と…」
姫がそう言うと、側仕えが
「姫様、それはいけません!」
と遮った。
「なぜ?父上以外私を名で呼ぶものはいない。城の外の者にも知られていないはず。それに兄妹として出掛けるのに名を呼ばないのは変だわ」
姫が黒目がちの愛らしい顔つきとは反対に、鋭い声で冷たく言い放つと側仕えは困った表情のまま黙ってしまった。案外、気が強そうな姫様だ。
「……では名で呼ばせていただきます」
荘助はそう返事をすると、心の中で気合いを入れた。
*****
城の外に出ると姫は長いため息をついた。
「どうされました?」
荘助が顔を覗き込むと、姫はにこりと笑いかけてきた。
「やっと解放された!本当に城の中って息が詰まる!そう思いませんか?」
なるほど、この姫はいわゆるおてんばな質なのだろう。しかもそれを城内では抑えて過ごしている。
「外出はあまりされないのですか?」
「母が亡くなってから父は輪をかけて過保護になってしまって、年に一度祭見物が許されているだけなんです。だから、今日はお付き合いいただけて本当に嬉しいです」
出掛けるのが嬉しいのは本当だろうが、あからさまな笑顔がどうも気にかかる。気を遣わせてしまっているような気がしてもどかしい。
「今日は……立花先輩に役目を果たせと念を押されました。貴女の願いを1日だけでも叶えたいと思うので、なんなりとおっしゃってください」
荘助の言葉を聞くと、唇を噛んで下を向く。おしゃべりだった姫が急に口をつぐんでしまった。荘助も声をかけることなく、ふたりの間にはしばらくの沈黙が流れる。
まだ遠いはずの太鼓の音がやけに大きく聞こえた。