その彼はビートだった。ユウリが会いたくて会いたくて、どうしようもない相手。彼もまた少し大人っぽくなった気がする。そんな大人びた表情をする恋人に浮気だなんて言われてしまうも、それが彼の本気の言葉でないことぐらいユウリにはわかっており、脇目も振らずビートに抱きつきに行く。

『ビートくーん！！！うぁあ〜会いたかったよお！！』

『…はいはい。相変わらずですね。と言ってもぼくも会いたかったですよ。』

相変わらず仲良しの二人だなと、周りに居る皆が皆そう思う。ビートとユウリが付き合ってからというものの、おなじみのメンバーは二人を冷やかすのに忙しい。

『相変わらず、仲良しやね』

マリィがそう言う。

『…仲良し、なのは……いいこと』

オニオンがマリィの背後からひょこっと顔を出して呟いた。にししと楽しそうに歯を見せ笑うのはホップ。マサルといえばビートとユウリの肩を叩き、ひらひらと手を振り笑う。ルリナとキバナも楽しそうにその光景を眺めてた。ふと、もう一人オニオンの影に隠れていた女の子がいて、その子はオニオンと同じぐらいか、少し大きいくらいで、二重の大きな目に鎖骨あたりまでの長さの黒髪の女の子だった。

『あの、ね……今日、ぼくと一緒に写真撮影する、女の子……だよ。幼馴染……なんだ。コトハっていう』


『みんな、よろしくね！』

オニオンの後ろにいた女の子は、最初こそ皆の様子を伺っていた様子だったが、もともとコミュニケーションに長（た）けていたのか、彼に紹介されたのち満面な笑顔で挨拶をした。そうしてスタジオである中へと足を進めたのだった。


数時間後ー

『写真あがった。みんなちょっと見て？』


今回の雑誌のプロデュースを任されていたらしいルリナが、撮影された皆の写真を確認したならどれも良く撮れていて、それを皆に確認してもらうように声をかけた。

『どんな感じで撮れてるんだろ…気になる』

マリィは短時間ですっかり仲良くなったらしいオニオンの幼馴染、コトハと話をしていた。そこにマサルもホップも居て皆でワイワイしていた。ユウリが静かなことに一早（いちはや）く気付いたのか、ビートがユウリに歩み寄りそっと背中に手を回す

『ビートくん？』

『……連日の仕事や、行事に駆り出されて、疲れてるんでしょう？無理しないで…休んだらどうです？ユウリの悪い癖ですよ。』


『うん、撮影終わったら久しぶりに時間あるから、早めに帰ろうかな』


ユウリは連日、忙しなく動き回っていたからか疲労が滲んだ表情を浮かべていた。それがあって撮影が終わって写真があがったとなれば、確認した後に帰るのもいいだろうと思うがビートがユウリのことを心配しているのは言うまでもなく、送り届けるかもしくは宿泊させるかで迷っていたのだ。

『…ハロンタウンか……少し遠いですね。』

ビートの観点から見て、ユウリのことはすぐに休ませたいと思うが、なにせ彼女の家は遠い。送り届けるにしても、時間がかかり過ぎる。まして、アラベスクに連れて帰っても遠い。ポプラに相談して、バウタウンに宿泊を……と、考えるものの、自分がずっと側にいれるわけもなく。しかし少しぐらいなら、と連絡を入れることにして、とりあえずユウリと同じハロンタウンに住んでいるホップと兄であるマサルに声をかける

『ホップとマサル、ちょっと話が。』

『おう、なんだー？』

『うん？』


『ユウリのことなんですが、明日……』

ホップとマサルがビートのところにやってきて、ビートから伝えられた言葉に二人とも大して驚くことはなく、むしろ ユウリについては納得していたようで今日はバウタウンに宿泊させて、明日迎えに来てあげてほしいというものだった。それを断るはずもない二人に安堵しながら、ある程度写真を確認してから解散した。最初こそ驚いていたユウリだが、ビートに連れられて大人しくバウタウンのホテルに泊まることにしたのだ。