バウタウンは港街であり、風景が海というのもあって観光地としても有名だ。シュートシティもかなりの人気名所なのだがバウタウンも灯台の街として人気名所の一つである。キバナと電車に乗り訪れてのち、ユウリはルリナと待ち合わせまでの時間、バウエステまで立ち寄ることにした。バウエステは名前そのもので、バウタウン内にあるエステだが、そのコンセプトがポケモンにも人にも癒しの空間をというものであり、ポケモンと共にエステを受けられるものだった。

『キバナさん、私この子達とエステの方に行ってますね！』


『おう、わかった。じゃあルリナ連れてくから待ってな。』

ルリナはいま、ジム戦をしているという。挑戦者がいまバトルをしている人を除き、ほかに2人いるらしいので、暫く時間がかかりそうだと３０分コースを頼むことにした。この後雑誌の撮影があるなら尚のこと少し気合を入れようと思ったからである。


『あ、ユウリ』

『！マリィ！久しぶりー！』

エステに入るなり顔を合わせたのはマリィだ。話を聞くなり、どうやら彼女もエステを受けにきたという。このあとの撮影のことは勿論マリィも聞いていたらしく、その時間つぶしにエステに来たのだと言うのだ。

『あたし、ここのサロン出来たばかりだから、すこし気になったんよ』

相変わらず時折入る言葉遣いが彼女の個性を表しておりながら、二人でエステに入ることにした。


『マリィ元気そうでよかった。』

『あんたもね』

話も早々にエステを楽しんで、キバナとルリナから連絡がきた頃、ちょうどマリィとユウリのエステも終わり集合場所に向かうその間も会話は途切れることはなく、果てはお互いの恋愛についての話もしたりとお年頃の女子は大忙しである。

『ユウリ、マリィ！元気そうだね』

そう気さくに話をかけてくるのは、今回の話を持ち出してきたバウタウンジムリーダーのルリナである。キバナと一緒に二人に向かって歩いてくるが、キバナは誰かと話しておりその様子を伺いながらその場所に行くと、ルリナの後ろからひょこっと小さな影が見えた。


『オニオン君？』

ユウリはその影を見やると、ハッとして顔をあげ其方に歩み寄る

『ひ、久しぶり…だね。ユウリさん』

オニオンはサイトウと同じく、ラテラルタウンのジムリーダーでゴーストタイプを使う。オニオンともサイトウとも戦ったことはあるが、オニオンが使うゴーストタイプには随分と頭を悩ませたものだ。ユウリにとって、弟のような存在であるオニオンに思わず抱きついてしまうと、なんとなく耳まで真っ赤になっているのが見てとれる。

『オニオン君かーわいい！オニオン君も、もしかして雑誌の？』

なぜ彼がここにいるのだろう？そんな疑問を投げかけるように自分達に課せられた仕事を思い出すと今回の雑誌のコンセプトが先程聞いた13〜15歳くらいの女の子を募集していると聞いたが、オニオンはファッションのメンズ枠かと脳裏に浮かび問いかけたところ、コクリと頭を頷かせていた。ということは、他にもメンズ枠の誰かがいるということで……？と、ユウリは首を傾げた。

『あー、今から来るってよ。あんまり乗り気じゃなさそうだったけどな。』

キバナが話していたのは、どうやらメンズ枠の男の子らしい。


『そっかあ。あんまり乗り気じゃないのか……どんな子だろー』

呑気にそんなことを考えているなら、次々と一人、また一人とやってきた人物が二人。

『おーい！ユウリ〜』

『驚いた？』

やってきたのはホップ。そしてマサル、ユウリの兄である。

『ホップ！お兄ちゃん！？』

ユウリ自身、まさかホップとマサルが来るとは思っていなかったのか流石に驚いており、マリィにいたっては、最近マサルと仲良しだからかとても嬉しそうで、こうして久方ぶりに皆で会えたことに喜び隠せず幼馴染であるホップに近づいて手を握る。

『ホップも久しぶりー！同じタウンに住んでるのに、なかなか会えないもんね。すこし背伸びた？』

『オレだって、成長してるんだ。そりゃあユウリより背も伸びるだろー』

背も伸びて何処か大人びたホップだが、ヘラリと笑った笑顔は変わらないことで安堵を覚えた。そうして和気藹々（わきあいあい）と、雑談をしながらスタジオに行く途中で、遠目にやってくる人物。その何処か意地悪な言葉遣いに心臓が跳ねる。

『ユウリあなた、いい度胸ですね。浮気ですか？』と。