【Kingsman】Beautiful Lady【エグジー】【キングスマン】
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第一試験を越え翌日の早朝を迎えた候補生たちはトレーニングウェアを着用し後ろへ手を組んで、指導教官の威厳を放つマーリンを見上げていた。西洋建築のバルコニーに立つマーリンは候補生たちを見下ろし、九匹の子犬が入れられた檻を黒のバインダーで指し説明を始める。
「君たちは昨夜学んだ、チームワークは何より重要だと。そこで協調性を最大限に伸ばすため──ここから各自、子犬を一匹ずつ選べ。その犬と行動を共にし世話をして、躾けろ。君たちの協調性も鍛えられる、脱落しなければだがな。わかったか? では、子犬を選べ」
檻の中にいる子犬たちは様々な犬種ばかりで上流階級出身たちは迷うことなく檻の扉を開け、選んだ子犬を外へ出して行く。空っぽになる檻を見ながらユーは一匹の子犬に見つめられていることに気づいた。長い胴体と短い手足を持ち合わせ、柔らかそうな毛先にオレンジ色と白色の毛色をした凛々しくピンと耳を高く立っている子犬であった。
彼女は子犬の目を見つめ返し、その子犬が入れられた檻の扉に手をかける。ユーは“ウェルシュ・コーギー・ペンブローク”を選んだ。檻の中に置かれていたリードをコーギーの首に着け、子犬と共に整列する候補生へ加わった。見上げるコーギーにユーは笑いかけながら、ビリーは傍らにいる彼女の子犬を見る。
「なんだ、エリザベス女王にでも憧れてるのか?」
「確かにコーギーはエリザベス女王が飼っていらっしゃった犬種です。牧畜犬の名残で攻撃性は高く縄張り意識と強い警戒心はありますが、それは賢く勇敢で状況判断能力にも優れている現れです。飼い主に対して愛情深く、小柄な番犬にも成ります」
「君は知識すらあるのか」
「ビリーは“ウィペット”ですね。貧しい農民の優秀な猟犬として名を挙げた犬種です。静かで落ち着きがある物腰で、外向的な振る舞いもあって飼い主への服従心と家族への愛情がとても深いです。貴方でも 、いいパートナーになれるでしょうね」
ビリーの皮肉をユーは微笑みと一緒に皮肉を交えた犬種の知識で返し、ビリーは苦々しく口を閉じた。ルースは博識な威勢を誇る彼女に感心し聡明のユーを思わず見つめてしまう。視線を汲み取ったユーは笑顔でルースの子犬を一目見た。
「ルースは“ダルメシアン”ですね。馬車伴走犬、猟犬や番犬、牧羊犬に軍用犬として活躍した活動的な犬種です。性格は明るく陽気ですが、飼い主以外の他人と他犬には気を許さない警戒心があります。躾は他犬より困難を伴いますが、根気強く接すれば貴女を飼い主と再自覚するでしょう」
「知識が豊富なのね」
「好きなことに関する知識だけです」
「それでも貴女は知り得ているわ」
顔を綻ばせるルースにユーは昨夜の後味が悪い現実を意識させ眉を下げ、弱々しく笑みを浮かべるだけに済ます。マーリンは“犬と共に待機”と候補生たちに指示を下し、バルコニーから去った。ユーは微かな胸騒ぎを憶え、彼女はコーギーを繋げたリードを強く握り直す。
時間は経過しユーを除いた候補生たちはM4カービンを抱え、選んだ子犬と共に敷地内を走っている。ユーは子犬のコーギーと走らず、ゆったりと道を歩いていた。予想とはかけ離れた現状に彼女は舌を出して一緒に歩くコーギーを横目で窺いながら、晴れない思いをする。
「おかしいわ、コーギーは走るのが好きな犬種のはずなんだけど」
広がる緑の空間をコーギーは短い手足を動かし散歩と変わらないと、彼女はそんなコーギーに小さく嘆 いた。ユーは先へ行ってしまう候補生たちに焦点を合わせ、遅れを取ってしまっていると改めて痛感する。焦りが積もった彼女は立ち止まって先へ行くリードを少し後ろへ引っ張り、コーギーに話しかける。
「走るのは嫌い?」
コーギーは座り首を左右に捻って、わからないと示される。ユーはコーギーの性質を思い返し、ある性質が引っ掛かった。ドッグランで自由奔放に走るのが好きなコーギーは大半、“遊び好き”であることを思い出す。彼女は一緒に走る策を思い立ち、リードを地面に置いてコーギーの目の前に立った。
ユーの様子を窺うコーギーに彼女は突然、手を広げ体を左右にジャンプし始めた。コーギーは警戒の体制に入りかけたが、胴体を揺らし遊ぶ意思をユーに示す。そして彼女は手を叩き、後ろへ一つ飛び跳ね体を反転して走り出した。コーギーは耳を更に立たせ、走って行く彼女の跡をついて行く。
走る快感を覚えたコーギーは速度をあげ、あっという間にユーの横を通り過ぎた。予想が命中したことにユーは喜んで乱れた息を整えようと足を止める。遠くにいたコーギーは離れてしまった彼女の姿を見ると引きずっていたリードを口にくわえ、ユーの元へ引き返してきた。ユーはコーギーの頭を一つ撫でて、M4カービンを抱え直しリードを掴んだ。
「さあ、行きましょう」
息が落ち着いた彼女はコーギーにそう言葉をかけて、リードを手首に巻き付けて駆け出した。先にいた候補生たちを追い抜き、ユーは後ろへ振り返る。驚きを隠しきれない候補生たちが視界に入り、彼女は心から愉快に笑い声を立てた。ユーは訓練に似つかわしくない“楽しい”といった感情をコーギーと共に感じる。
一日目の訓練は過ぎ去り、候補生たちはパイプベッドに体を沈ませた。ユーは心地好く眠りコーギーはパイプベッドの下で寝息を立てている。微かな物音が真っ暗の部屋でこだますが、ルースとユーは目を開けない。しかし子犬の悲痛な鳴き声がユーの耳に入ると彼女は飛び起き、スイッチに触れて明かりをつけた。
明かりをつければ彼女のパイプベッドの傍らにビリーが立ち、ユーを見下ろしていた。ユーはビリーがパイプベッドの下へ足を突き出しているのを見ると、彼女は察してベッドから下り安らかに寝ていたはずのコーギーを探す。ユーは狼狽 えつつ、部屋の隅で体を縮ませて怯えるコーギーを捉えた。彼女の中で沸々 と怒りが湧き、ユーはビリーに大声を張り上げる。
「あんた、この子に何をしたの」
「嗚呼、じゃれさせてやろうと思って軽く蹴ってやったんだ」
「Fuck You! この慈悲もないクソ野郎!」
「所詮 は労働階級出身だな。いくら上品なふりをしたって、そうやって出てくる」
ユーの鋭い怒号に目を覚めたルースは怒らせる彼女とユーを鼻で笑うビリーを目にした。ただ事じゃないと感じ取ったルースは息を荒くする彼女に駆け寄って背にして、あからさまに二人を見下すビリーを睨み返す。ビリーはユーに指を指してこう言い放った。
「お前は脱落に決まったようなものだ、チャーリー?」
「口を慎みなさい、ビリー」
「どうしてお前はあいつを庇うんだ、あんな下流を」
「貴方に話す価値なんてない。自分のベッドに戻りなさい」
突き放すルースにビリーは動じることもなく、素直に自分のパイプベッドへ戻って潜り込んだ。ルースはユーを尻目に見る。彼女は唇を噛み締め、目を閉じていた。ルースは目をつむるユーのしっとりと濡れた睫毛 に軽く触れて、優しく抱きしめる。
「君たちは昨夜学んだ、チームワークは何より重要だと。そこで協調性を最大限に伸ばすため──ここから各自、子犬を一匹ずつ選べ。その犬と行動を共にし世話をして、躾けろ。君たちの協調性も鍛えられる、脱落しなければだがな。わかったか? では、子犬を選べ」
檻の中にいる子犬たちは様々な犬種ばかりで上流階級出身たちは迷うことなく檻の扉を開け、選んだ子犬を外へ出して行く。空っぽになる檻を見ながらユーは一匹の子犬に見つめられていることに気づいた。長い胴体と短い手足を持ち合わせ、柔らかそうな毛先にオレンジ色と白色の毛色をした凛々しくピンと耳を高く立っている子犬であった。
彼女は子犬の目を見つめ返し、その子犬が入れられた檻の扉に手をかける。ユーは“ウェルシュ・コーギー・ペンブローク”を選んだ。檻の中に置かれていたリードをコーギーの首に着け、子犬と共に整列する候補生へ加わった。見上げるコーギーにユーは笑いかけながら、ビリーは傍らにいる彼女の子犬を見る。
「なんだ、エリザベス女王にでも憧れてるのか?」
「確かにコーギーはエリザベス女王が飼っていらっしゃった犬種です。牧畜犬の名残で攻撃性は高く縄張り意識と強い警戒心はありますが、それは賢く勇敢で状況判断能力にも優れている現れです。飼い主に対して愛情深く、小柄な番犬にも成ります」
「君は知識すらあるのか」
「ビリーは“ウィペット”ですね。貧しい農民の優秀な猟犬として名を挙げた犬種です。静かで落ち着きがある物腰で、外向的な振る舞いもあって飼い主への服従心と家族への愛情がとても深いです。
ビリーの皮肉をユーは微笑みと一緒に皮肉を交えた犬種の知識で返し、ビリーは苦々しく口を閉じた。ルースは博識な威勢を誇る彼女に感心し聡明のユーを思わず見つめてしまう。視線を汲み取ったユーは笑顔でルースの子犬を一目見た。
「ルースは“ダルメシアン”ですね。馬車伴走犬、猟犬や番犬、牧羊犬に軍用犬として活躍した活動的な犬種です。性格は明るく陽気ですが、飼い主以外の他人と他犬には気を許さない警戒心があります。躾は他犬より困難を伴いますが、根気強く接すれば貴女を飼い主と再自覚するでしょう」
「知識が豊富なのね」
「好きなことに関する知識だけです」
「それでも貴女は知り得ているわ」
顔を綻ばせるルースにユーは昨夜の後味が悪い現実を意識させ眉を下げ、弱々しく笑みを浮かべるだけに済ます。マーリンは“犬と共に待機”と候補生たちに指示を下し、バルコニーから去った。ユーは微かな胸騒ぎを憶え、彼女はコーギーを繋げたリードを強く握り直す。
時間は経過しユーを除いた候補生たちはM4カービンを抱え、選んだ子犬と共に敷地内を走っている。ユーは子犬のコーギーと走らず、ゆったりと道を歩いていた。予想とはかけ離れた現状に彼女は舌を出して一緒に歩くコーギーを横目で窺いながら、晴れない思いをする。
「おかしいわ、コーギーは走るのが好きな犬種のはずなんだけど」
広がる緑の空間をコーギーは短い手足を動かし散歩と変わらないと、彼女はそんなコーギーに小さく
「走るのは嫌い?」
コーギーは座り首を左右に捻って、わからないと示される。ユーはコーギーの性質を思い返し、ある性質が引っ掛かった。ドッグランで自由奔放に走るのが好きなコーギーは大半、“遊び好き”であることを思い出す。彼女は一緒に走る策を思い立ち、リードを地面に置いてコーギーの目の前に立った。
ユーの様子を窺うコーギーに彼女は突然、手を広げ体を左右にジャンプし始めた。コーギーは警戒の体制に入りかけたが、胴体を揺らし遊ぶ意思をユーに示す。そして彼女は手を叩き、後ろへ一つ飛び跳ね体を反転して走り出した。コーギーは耳を更に立たせ、走って行く彼女の跡をついて行く。
走る快感を覚えたコーギーは速度をあげ、あっという間にユーの横を通り過ぎた。予想が命中したことにユーは喜んで乱れた息を整えようと足を止める。遠くにいたコーギーは離れてしまった彼女の姿を見ると引きずっていたリードを口にくわえ、ユーの元へ引き返してきた。ユーはコーギーの頭を一つ撫でて、M4カービンを抱え直しリードを掴んだ。
「さあ、行きましょう」
息が落ち着いた彼女はコーギーにそう言葉をかけて、リードを手首に巻き付けて駆け出した。先にいた候補生たちを追い抜き、ユーは後ろへ振り返る。驚きを隠しきれない候補生たちが視界に入り、彼女は心から愉快に笑い声を立てた。ユーは訓練に似つかわしくない“楽しい”といった感情をコーギーと共に感じる。
一日目の訓練は過ぎ去り、候補生たちはパイプベッドに体を沈ませた。ユーは心地好く眠りコーギーはパイプベッドの下で寝息を立てている。微かな物音が真っ暗の部屋でこだますが、ルースとユーは目を開けない。しかし子犬の悲痛な鳴き声がユーの耳に入ると彼女は飛び起き、スイッチに触れて明かりをつけた。
明かりをつければ彼女のパイプベッドの傍らにビリーが立ち、ユーを見下ろしていた。ユーはビリーがパイプベッドの下へ足を突き出しているのを見ると、彼女は察してベッドから下り安らかに寝ていたはずのコーギーを探す。ユーは
「あんた、この子に何をしたの」
「嗚呼、じゃれさせてやろうと思って軽く蹴ってやったんだ」
「Fuck You! この慈悲もないクソ野郎!」
「
ユーの鋭い怒号に目を覚めたルースは怒らせる彼女とユーを鼻で笑うビリーを目にした。ただ事じゃないと感じ取ったルースは息を荒くする彼女に駆け寄って背にして、あからさまに二人を見下すビリーを睨み返す。ビリーはユーに指を指してこう言い放った。
「お前は脱落に決まったようなものだ、チャーリー?」
「口を慎みなさい、ビリー」
「どうしてお前はあいつを庇うんだ、あんな下流を」
「貴方に話す価値なんてない。自分のベッドに戻りなさい」
突き放すルースにビリーは動じることもなく、素直に自分のパイプベッドへ戻って潜り込んだ。ルースはユーを尻目に見る。彼女は唇を噛み締め、目を閉じていた。ルースは目をつむるユーのしっとりと濡れた