【Kingsman】Beautiful Lady【エグジー】【キングスマン】
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──新人をスカウトしてくれ。
現アーサーとなったハリー・ハートは各キングスマンにそう伝えた。“パーシヴァル”の代わりとなるキングスマンを探すことになったエグジー・アンウィンは立派に仕立て上げたスーツを着込み、街灯を背にしてある女性を見ていた。
喫茶店で働き、良い客であっても嫌な客であっても笑顔を歪めず惜しみなく接待する彼女は他にあるはずの活発的な二十二歳と違う落ち着きと気品さがあった。
エグジーはキングスマンになったばかりの一年前から彼女のことを目に付いていた。いつ目に付いていたのかと聞かれると、それは任務を完了してマーリンに手配された車で本部へ帰還する途中だった。赤信号で止まっていた時に何気なく窓の外を眺めていると、ほの暗い明るさを持った閉店前の喫茶店を見つけ、そして最後の客に笑顔で見送っていた彼女を見つけたのである。
彼女の笑顔にコロンと恋に落ちたのだ。彼女の笑顔が見たいと思い立てばエグジーは任務の完了後に必ず喫茶店が構えているその道を通り遠くで彼女を眺めていた。客と一緒に笑う彼女が俺の傍に居てくれればなあと何度、心に思い締め付けられたことかエグジーは彼女を見る度に車内で頭を抱えるばかりであった。
「そんなことは今日で終わりだ」
エグジーはそう言った。スカウトについて聞かされた途端に思い浮かんだのは彼女のことだった。それは恋焦がれを除いたエージェントとしての直感的な思い浮かびで彼女がキングスマンに相応しいかもしれないとエグジーは思えた。
恋に落ち根付いた悪知恵が働き彼女がどのような家庭環境で育ち、どのような功績を残したか、エグジーはすでに調べ上げていた。彼女の名前はユー・ポリー・チャップリン。九歳の時に母は事故死し、その後は父は薬物中毒に陥り劣悪な環境で育つ。小中高共に成績優秀で公立高校では水泳、テニス、ダンスに所属し水泳ではメダルを獲得していた。そして大学で文学の勉学に勤しんでいたが父の急死により大学を中退し以後、喫茶店で働いている。
家庭から逃れようと鍛えた身体能力、父と和解を図った豊富な知識にエグジーは更に彼女がキングスマンになれるかもしれないと希望が抱 けた。そして彼女が“労働階級”であったこともエグジーの目に止まった。労働階級者がキングスマンになれる。エグジーと同様に。伝統をまた一つ変えられると同時に同じ階級であったことにエグジーは彼女との共通点に心底まで喜びに浸った。
朝八時の肌寒い季節が始まったばかりのロンドンでエグジーは彼女が働く喫茶店に入った。ドアベルに反応して入店してきた若い紳士を飲食を楽しんでいた客らは一目やるが興味を失ったように直ぐに逸らしエグジーは人が少ない大きなガラス張りの近くで腰掛けた。
メニュー表を取ってさも選んでいるように見せてからテーブルに置くと、注文メモを手に取った彼女がエグジーのとこまでやって来た。ふわりと髪を揺らし小首を傾けエグジーに注文を伺う。
「ご注文は決まりましたか?」
「あぁ、コーヒーをお願いできるかな?」
「かしこまりました、ご注文は以上でよろしいですか?」
「ああ」
いつも遠くで聞いていた彼女の声が今は近くで聞こえることにエグジーは堪らない嬉しさに脳内で高鳴りを大きく響かせていた。彼女が立ち去るとネクタイを触ったり乱れてもいない裾を整えたりとエグジーは紳士を装う余裕がなくなっていた。
見慣れたロンドンの街道を窓から眺めていると香ばしい匂いが鼻先を擦り彼女の声が聞こえた。正面を向きテーブルに目をやると湯気が立つコーヒーが置かれていた。その側で銀のトレーを胸に抱いた彼女が笑顔で立っていた。
「お待たせ致しました、コーヒーです」
「ありがとう。その、仕事中で悪いんだけど、少しだけ俺と話をしてくれないかい?」
「喜んで。私、お話をするのが好きなんです」
「それはよかった」
彼女はクラシックスカートを整えながら椅子に腰掛け前に流れた髪を後ろへ回してから背筋を真っ直ぐにし瞳を正面に向いた。その彼女の動作にエグジーは見入ってしまった。声だけではなく今度は目の前にいる。その現状に堪らずコーヒーを持ち上げ渇いた口の中へ運んで潤す。
「実は君と話をしたくてね」
「そうなんですね。ふふ、素敵な紳士様に言われると嬉しいです」
「紳士はお好きかな?」
「とても好きです」
店内で流れるジャズが居心地を良くし、コーヒーも中々の上等な豆を使い、文句の付けようがない喫茶店のおかげで彼女との会話もより一層に楽しめるなとエグジーは思えた。
「実は俺は高級仕立て屋 をやっていてね」
「テーラー? すごいですね」
「このスーツも仕立てたんだ、どうかな?」
「とっても貴方にお似合いです」
彼女は微笑んでエグジーのスーツを注視し見つめられていることにエグジーは心を踊らせた。そして彼女に褒められるとエグジーは気分上々になって自然と誘い文句を口にした。
「ありがとう。その、君が良ければ今日の夜、サヴィル・ロウの十一番地にある俺のお店に来てくれない?」
「貴方のお店?」
「君が俺のスーツを褒めてくれたお礼がしたいんだ。ほんとうに嬉しくて」
「私のような人に喜んで下さるのなら大歓迎です、では今日の夜にお伺いしますね」
彼女はほんとうに嬉しそうに口に手を当て笑った。君だからこそ喜ぶんだよ。エグジーはそう言いたくて堪らなかったが今回はそんなつもりで来たわけじゃないと自分に叱咤 する。
「俺はゲイリー・エグジー・アンウィン、エグジーで構わないよ」
「私はユー・ポリー・チャップリンです。ユーと遠慮なくお呼び下さい」
誘うことができたエグジーは満足してコーヒーをもう一口と喉に流す。その時、自然とめくられた裾から腕時計の時刻が目に付いた。エグジーは一時間だけ彼女と会話をしていた。めくった裾を元に戻して彼女との会話を再開させたかったが気持ちを思い留まらせ彼女に謝罪する。
「ごめん、ユー。俺もう、仕事に行かなくちゃいけない時間になっちゃった」
「そうですか、わかりました」
「コーヒー、美味しかったよ」
「お褒め頂きありがとうございます。またのご来店、お待ちしてます。エグジー」
悲惨な家庭で育った彼女が礼儀になっているのは世間と上手く行くように立場を整える為と家庭に対する彼女の足掻きに違いないとエグジーは喫茶店から退店してそう思った。飲み干したコーヒーを銀のトレーに乗せキッチンへ向かうユーを眺めてからエグジーはキャブに乗り込み“Kingsman”へ向かった。
現アーサーとなったハリー・ハートは各キングスマンにそう伝えた。“パーシヴァル”の代わりとなるキングスマンを探すことになったエグジー・アンウィンは立派に仕立て上げたスーツを着込み、街灯を背にしてある女性を見ていた。
喫茶店で働き、良い客であっても嫌な客であっても笑顔を歪めず惜しみなく接待する彼女は他にあるはずの活発的な二十二歳と違う落ち着きと気品さがあった。
エグジーはキングスマンになったばかりの一年前から彼女のことを目に付いていた。いつ目に付いていたのかと聞かれると、それは任務を完了してマーリンに手配された車で本部へ帰還する途中だった。赤信号で止まっていた時に何気なく窓の外を眺めていると、ほの暗い明るさを持った閉店前の喫茶店を見つけ、そして最後の客に笑顔で見送っていた彼女を見つけたのである。
彼女の笑顔にコロンと恋に落ちたのだ。彼女の笑顔が見たいと思い立てばエグジーは任務の完了後に必ず喫茶店が構えているその道を通り遠くで彼女を眺めていた。客と一緒に笑う彼女が俺の傍に居てくれればなあと何度、心に思い締め付けられたことかエグジーは彼女を見る度に車内で頭を抱えるばかりであった。
「そんなことは今日で終わりだ」
エグジーはそう言った。スカウトについて聞かされた途端に思い浮かんだのは彼女のことだった。それは恋焦がれを除いたエージェントとしての直感的な思い浮かびで彼女がキングスマンに相応しいかもしれないとエグジーは思えた。
恋に落ち根付いた悪知恵が働き彼女がどのような家庭環境で育ち、どのような功績を残したか、エグジーはすでに調べ上げていた。彼女の名前はユー・ポリー・チャップリン。九歳の時に母は事故死し、その後は父は薬物中毒に陥り劣悪な環境で育つ。小中高共に成績優秀で公立高校では水泳、テニス、ダンスに所属し水泳ではメダルを獲得していた。そして大学で文学の勉学に勤しんでいたが父の急死により大学を中退し以後、喫茶店で働いている。
家庭から逃れようと鍛えた身体能力、父と和解を図った豊富な知識にエグジーは更に彼女がキングスマンになれるかもしれないと希望が
朝八時の肌寒い季節が始まったばかりのロンドンでエグジーは彼女が働く喫茶店に入った。ドアベルに反応して入店してきた若い紳士を飲食を楽しんでいた客らは一目やるが興味を失ったように直ぐに逸らしエグジーは人が少ない大きなガラス張りの近くで腰掛けた。
メニュー表を取ってさも選んでいるように見せてからテーブルに置くと、注文メモを手に取った彼女がエグジーのとこまでやって来た。ふわりと髪を揺らし小首を傾けエグジーに注文を伺う。
「ご注文は決まりましたか?」
「あぁ、コーヒーをお願いできるかな?」
「かしこまりました、ご注文は以上でよろしいですか?」
「ああ」
いつも遠くで聞いていた彼女の声が今は近くで聞こえることにエグジーは堪らない嬉しさに脳内で高鳴りを大きく響かせていた。彼女が立ち去るとネクタイを触ったり乱れてもいない裾を整えたりとエグジーは紳士を装う余裕がなくなっていた。
見慣れたロンドンの街道を窓から眺めていると香ばしい匂いが鼻先を擦り彼女の声が聞こえた。正面を向きテーブルに目をやると湯気が立つコーヒーが置かれていた。その側で銀のトレーを胸に抱いた彼女が笑顔で立っていた。
「お待たせ致しました、コーヒーです」
「ありがとう。その、仕事中で悪いんだけど、少しだけ俺と話をしてくれないかい?」
「喜んで。私、お話をするのが好きなんです」
「それはよかった」
彼女はクラシックスカートを整えながら椅子に腰掛け前に流れた髪を後ろへ回してから背筋を真っ直ぐにし瞳を正面に向いた。その彼女の動作にエグジーは見入ってしまった。声だけではなく今度は目の前にいる。その現状に堪らずコーヒーを持ち上げ渇いた口の中へ運んで潤す。
「実は君と話をしたくてね」
「そうなんですね。ふふ、素敵な紳士様に言われると嬉しいです」
「紳士はお好きかな?」
「とても好きです」
店内で流れるジャズが居心地を良くし、コーヒーも中々の上等な豆を使い、文句の付けようがない喫茶店のおかげで彼女との会話もより一層に楽しめるなとエグジーは思えた。
「実は俺は高級
「テーラー? すごいですね」
「このスーツも仕立てたんだ、どうかな?」
「とっても貴方にお似合いです」
彼女は微笑んでエグジーのスーツを注視し見つめられていることにエグジーは心を踊らせた。そして彼女に褒められるとエグジーは気分上々になって自然と誘い文句を口にした。
「ありがとう。その、君が良ければ今日の夜、サヴィル・ロウの十一番地にある俺のお店に来てくれない?」
「貴方のお店?」
「君が俺のスーツを褒めてくれたお礼がしたいんだ。ほんとうに嬉しくて」
「私のような人に喜んで下さるのなら大歓迎です、では今日の夜にお伺いしますね」
彼女はほんとうに嬉しそうに口に手を当て笑った。君だからこそ喜ぶんだよ。エグジーはそう言いたくて堪らなかったが今回はそんなつもりで来たわけじゃないと自分に
「俺はゲイリー・エグジー・アンウィン、エグジーで構わないよ」
「私はユー・ポリー・チャップリンです。ユーと遠慮なくお呼び下さい」
誘うことができたエグジーは満足してコーヒーをもう一口と喉に流す。その時、自然とめくられた裾から腕時計の時刻が目に付いた。エグジーは一時間だけ彼女と会話をしていた。めくった裾を元に戻して彼女との会話を再開させたかったが気持ちを思い留まらせ彼女に謝罪する。
「ごめん、ユー。俺もう、仕事に行かなくちゃいけない時間になっちゃった」
「そうですか、わかりました」
「コーヒー、美味しかったよ」
「お褒め頂きありがとうございます。またのご来店、お待ちしてます。エグジー」
悲惨な家庭で育った彼女が礼儀になっているのは世間と上手く行くように立場を整える為と家庭に対する彼女の足掻きに違いないとエグジーは喫茶店から退店してそう思った。飲み干したコーヒーを銀のトレーに乗せキッチンへ向かうユーを眺めてからエグジーはキャブに乗り込み“Kingsman”へ向かった。
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