【Kingsman】Beautiful Lady【エグジー】【キングスマン】
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パイプベッドの上でユーは胡座 をかき、ヒューと名付けたコーギーの頭を掻いていた。ルースとビリーは報道番組に釘付けになり、ユーは目線だけテレビの方へ向ける。テレビはギリシャ共和国領タソス島の爆発を報道し、数人の著名人らの死亡が放送されていた。三人だけ残された空間はひっそりとし、ユーはベッドへ横たわった途端に共同部屋のドアが開く。
マーリンが出てくるとビリーはテレビの電源を消し、ルースは椅子から立ち上がりユーは渋々と起き上がった。マーリンは眉を寄せて一人ずつ眺めてから、ドアを後ろ手で閉める。ユーは首を傾げて、マーリンは愚痴を含めたような言葉を刺々しく吐いた。
「気楽にしても構わない。だが、今日はもう終わったと思ったのか? 私たちはそうじゃないぞ」
ルースが椅子へ腰掛けてからマーリンは三つの茶色の封筒を三人に手渡す。ユーは訝し気に眺めてからビリーは封を切った。封筒から出てきたのは一枚の紙で文章を読んだルースは笑顔を浮かべる。ユーは紙に書かれた文章を読み上げ、一緒に入っていた写真に目を向けた。
「パーティーですか。教官」
「そうだ。今夜、ロンドンでな」
「この写真に写ってる女性は誰でしょうか」
「ユーのターゲットだ。君の使命は、君のNLPトレーニングを使って写真に写っている人を勝つことだ。因みにだが、私が“勝つ”と言ったのは聖書的な意味でのことだ」
「NLPトレーニングというのは、なんですか?」
「“神経言語プログラミング”のことだ。自分や相手など観察し、コミュニケーションを高めつつ、より深く心理に入り込む技法だ。お前は軍出身ではなかったな」
ユーはマーリンの説明に頷き、視線を写真にやって思い耽る。確かに私は軍出身でもなければ、興味を抱いたこともなかったわ。そしてキングスマンの候補生として推薦されたことにも不思議で仕方がないとユーは爽やかに笑う女性の写真を凝視する。ビリーが頭を後ろへ振り向くとユーに向かってこう言った。
「実は俺、口説くのが得意なんだよ。ユー」
「ふうん。役に立つといいわね」
「なんだ、その反応は。ムカつくな」
「なら、お口をチャックしておきなさい」
共同部屋ではユーは威嚇を剥き出したが、パーティーの中へ入ると彼女は普段着で使用していた服装で潜めていた。首と腕部分はシースルーで、二の腕当たりには白の布地に黒のラインが入り、胴体全ては水色の小さな花柄を散りばめられたティアードワンピースでユーは着込んでいた。そこに足元を鮮やかにさせた5cmの高さがある青のアンクルストラップパンプスで彼女は存在を浮くことなくパーティーの空間に馴染めさせる。
ソファーに腰掛けお酒を楽しんでいるターゲットの女性を見つけたビリーはユーの肩を突いてから、ターゲットに接近した。ターゲットの女性が少し警戒するのを感じたビリーは気楽な口調で、相手の警戒心を和らげようする。ライトグリーンのパーティードレスを着たルースはユーの隣に立ち、それを観察していた。
「ごめん。そこに座っていいかな。酒に酔った友人に蹴散らされてさ」
「へえ? いいわよ。どうぞ」
「君って目立つんだね。ものすごく輝いて見えるんだけど」
ケラケラと笑うターゲットの女性はとっくに警戒の網を外しているようだった。ビリーが得意気にちらりとユーに目線をやって、ルースはすらりとした美肌に満ちた足を魅せながらターゲットに近づいた。ビリーの頭を小突いたルースは驚くように体を強張らせるターゲットの隣に座り、話を合わす。
「ちょっと! 私をあんな酒飲みのところに置いていくなんて、どういうつもり?」
「貴女は?」
「私、この人に酒飲みのところに置いていかれたエリーよ。そう、無慈悲な友人によってね」
「アハハ! 貴女たちってなんだか、そんな酒飲みな友人をもって苦労してるのね」
ターゲットの警戒心はスルリと解 かれ、ルースとビリーの会話を楽しんでいた。ユーはターゲットの表情と服装から何が好みそうなのか注視しながら算段を組み立て、ある程度の台本を完成させる。ユーは完成した台詞を脳内で復唱しターゲットの正面に座った。ターゲットは一目見たのをユーは伏し目で確認し、にこやかな顔を浮かべてターゲットに話かけた。
「なんせなら酒飲み野郎の失態の話、聞く?」
「貴女も被害者なのね。喜んで聞きたいわ」
「でも、このシャンパンが邪魔をするのよね」
「どういうこと?」
「味も匂いも、全てまずいのよ。このシャンパン。ほら、ちょっと飲んでみてよ。貴女ならシャンパンは馴染んでいると思うから私の舌がおかしくないのか、確認してほしいの。私、心配なのよ」
「え? いや、その」
ターゲットは明らかに躊躇 って焦りを見せていた。不自然な挙動をあらわにしたターゲットにビリーは横目で凝らし、ルースはターゲットの動揺さに驚き、ユーは目を細めて変わらない笑みを浮かべた。パーティーと言えば酒よねとユーはターゲットに差し出した自身のシャンパンを引くことなく見つめ、逃げ場を失ったターゲットを見やる。睡眠薬だって、入っていてもおかしくないから。
「失礼、ソフィー・モンタギュー・ヘリング様。受付にてお電話が」
「ごめんなさいね。すぐに戻るわ」
緊張が漂っていた空間に入り込んだのは、身なりを綺麗にした男性でターゲットは動揺から安堵したような表情を見せる。ユーはシャンパンをテーブルに起き、ターゲットは立ち上がって余裕そうな微笑みでユーたちに手を振って受付へ行った。途端にユーはルースの隣に座り、詰めるよう言う。
「ごめんね。貴女たちに話したいことがあって」
「なんだよ」
「これが試験なのは明らかよ。ただね、睡眠薬が入っているのかを見破るんじゃなくて──」
「どうしたの? 平気?」
ユーは視界がぐらつき聞いていた音楽が淀 むのを自覚すると、シャンパンに投入されていた睡眠薬が効き始めことを理解する。目が虚ろになり急変したユーにルースとビリーは心配する素振りを見せるが、徐々にユーと同じ症状が表れユーの元に倒れるように意識を手放した。ユーはターゲットを逃がした男性に目をやると何か言っているところを最後に、やがて視界は真っ暗へ陥った。
微かなそよ風がユーの眠りを覚まさせ、一気に醒めた彼女は周囲を見渡した。反射的に手を動かそうとするが何かに引っ張られた感覚からユーは手に視線をやった。ユーは呼吸が荒くなるのを感じながら自身の手足を固く縛り付けられている“線路”に焦った。揺れ動く自身の目をユーの目の前に佇む男を見る。さきほどの男だと彼女は背筋を凍らせて、変わらず猫を被って男に接した。
「すみません。あの、貴方は誰ですか?」
「このナイフは……君の命を救うことができるだろうか。え?」
「それが答えなんですね。もう結構です」
汽笛 の音がトンネル内を駆け巡って響かせ、ユーは遠くから迫る光に凝視した。握っていた手の中がだらりと汗で濡れていく感覚を感じながら、ユーは荒くなる息を吐いて男を睨みつける。男はナイフをちらつかせ、こんなことを言った。
「私の雇い主が二つの質問をしたいと。キングスマンはどこだ? エグジー・アンウィンとは誰だ?」
「知らない、知らないです! そんな名前も人名も全く聞き覚えがないです!」
「ああ、ユー。同じようなくだらない答えをしたせいでお前の友達を二人も殺してしまったぞ」
「知らないと言ったら、知らないんですよ!」
「おい、ユー! キングスマンの為に死ぬ価値があると思うのか?」
「私は絶対に全てを無駄にしない!」
そう言ったユーは騒ぐだけ無駄と悟り、事切れた人形のように頭をだらけさせ、足掻いていた力を抜いた。男を一瞥し、やがて大きくなる光に向けて言葉を吐き出しながら目をつむった。こんな仕打ちは滅多にないんだから楽しもう、とユーは落ち着いた息をそっと吐いた。
「はあ。どうぞ、──轢いてください」
耳元で列車の汽笛を聞き取り、ユーは一瞬だけ浮遊感を肌で感じた。汽笛の音は遠くなり、ユーは止めていた呼吸を勢いよく吸って吐いた。死んだのかしらと彼女は目を開いて捉えたのは、男が持っていたナイフを片手に持ち、スーツ姿で決めた微笑むエグジーであった。
「よくやったよ。ユー。おめでとう」
「嗚呼、エグジー。その、二人は?」
「すでに終わったよ。ルースは不合格、ビリーは合格だ」
「そうなんですね。少し、残念です」
エグジーはユーの手を取り、線路から立ち上がらせた。ワンピースに着いてしまった小さな石ころを叩 くユーをエグジーは眺め改めて、可愛いなあと心を焦がした。控えめな水色の花柄は彼女にまさしくぴったりで、ナチュラル系の化粧がより一層とエグジーの胸を掻き乱した。エグジーが苦しめられていることを知らないユーは例の笑顔をエグジーに向ける。
マーリンが出てくるとビリーはテレビの電源を消し、ルースは椅子から立ち上がりユーは渋々と起き上がった。マーリンは眉を寄せて一人ずつ眺めてから、ドアを後ろ手で閉める。ユーは首を傾げて、マーリンは愚痴を含めたような言葉を刺々しく吐いた。
「気楽にしても構わない。だが、今日はもう終わったと思ったのか? 私たちはそうじゃないぞ」
ルースが椅子へ腰掛けてからマーリンは三つの茶色の封筒を三人に手渡す。ユーは訝し気に眺めてからビリーは封を切った。封筒から出てきたのは一枚の紙で文章を読んだルースは笑顔を浮かべる。ユーは紙に書かれた文章を読み上げ、一緒に入っていた写真に目を向けた。
「パーティーですか。教官」
「そうだ。今夜、ロンドンでな」
「この写真に写ってる女性は誰でしょうか」
「ユーのターゲットだ。君の使命は、君のNLPトレーニングを使って写真に写っている人を勝つことだ。因みにだが、私が“勝つ”と言ったのは聖書的な意味でのことだ」
「NLPトレーニングというのは、なんですか?」
「“神経言語プログラミング”のことだ。自分や相手など観察し、コミュニケーションを高めつつ、より深く心理に入り込む技法だ。お前は軍出身ではなかったな」
ユーはマーリンの説明に頷き、視線を写真にやって思い耽る。確かに私は軍出身でもなければ、興味を抱いたこともなかったわ。そしてキングスマンの候補生として推薦されたことにも不思議で仕方がないとユーは爽やかに笑う女性の写真を凝視する。ビリーが頭を後ろへ振り向くとユーに向かってこう言った。
「実は俺、口説くのが得意なんだよ。ユー」
「ふうん。役に立つといいわね」
「なんだ、その反応は。ムカつくな」
「なら、お口をチャックしておきなさい」
共同部屋ではユーは威嚇を剥き出したが、パーティーの中へ入ると彼女は普段着で使用していた服装で潜めていた。首と腕部分はシースルーで、二の腕当たりには白の布地に黒のラインが入り、胴体全ては水色の小さな花柄を散りばめられたティアードワンピースでユーは着込んでいた。そこに足元を鮮やかにさせた5cmの高さがある青のアンクルストラップパンプスで彼女は存在を浮くことなくパーティーの空間に馴染めさせる。
ソファーに腰掛けお酒を楽しんでいるターゲットの女性を見つけたビリーはユーの肩を突いてから、ターゲットに接近した。ターゲットの女性が少し警戒するのを感じたビリーは気楽な口調で、相手の警戒心を和らげようする。ライトグリーンのパーティードレスを着たルースはユーの隣に立ち、それを観察していた。
「ごめん。そこに座っていいかな。酒に酔った友人に蹴散らされてさ」
「へえ? いいわよ。どうぞ」
「君って目立つんだね。ものすごく輝いて見えるんだけど」
ケラケラと笑うターゲットの女性はとっくに警戒の網を外しているようだった。ビリーが得意気にちらりとユーに目線をやって、ルースはすらりとした美肌に満ちた足を魅せながらターゲットに近づいた。ビリーの頭を小突いたルースは驚くように体を強張らせるターゲットの隣に座り、話を合わす。
「ちょっと! 私をあんな酒飲みのところに置いていくなんて、どういうつもり?」
「貴女は?」
「私、この人に酒飲みのところに置いていかれたエリーよ。そう、無慈悲な友人によってね」
「アハハ! 貴女たちってなんだか、そんな酒飲みな友人をもって苦労してるのね」
ターゲットの警戒心はスルリと
「なんせなら酒飲み野郎の失態の話、聞く?」
「貴女も被害者なのね。喜んで聞きたいわ」
「でも、このシャンパンが邪魔をするのよね」
「どういうこと?」
「味も匂いも、全てまずいのよ。このシャンパン。ほら、ちょっと飲んでみてよ。貴女ならシャンパンは馴染んでいると思うから私の舌がおかしくないのか、確認してほしいの。私、心配なのよ」
「え? いや、その」
ターゲットは明らかに
「失礼、ソフィー・モンタギュー・ヘリング様。受付にてお電話が」
「ごめんなさいね。すぐに戻るわ」
緊張が漂っていた空間に入り込んだのは、身なりを綺麗にした男性でターゲットは動揺から安堵したような表情を見せる。ユーはシャンパンをテーブルに起き、ターゲットは立ち上がって余裕そうな微笑みでユーたちに手を振って受付へ行った。途端にユーはルースの隣に座り、詰めるよう言う。
「ごめんね。貴女たちに話したいことがあって」
「なんだよ」
「これが試験なのは明らかよ。ただね、睡眠薬が入っているのかを見破るんじゃなくて──」
「どうしたの? 平気?」
ユーは視界がぐらつき聞いていた音楽が
微かなそよ風がユーの眠りを覚まさせ、一気に醒めた彼女は周囲を見渡した。反射的に手を動かそうとするが何かに引っ張られた感覚からユーは手に視線をやった。ユーは呼吸が荒くなるのを感じながら自身の手足を固く縛り付けられている“線路”に焦った。揺れ動く自身の目をユーの目の前に佇む男を見る。さきほどの男だと彼女は背筋を凍らせて、変わらず猫を被って男に接した。
「すみません。あの、貴方は誰ですか?」
「このナイフは……君の命を救うことができるだろうか。え?」
「それが答えなんですね。もう結構です」
「私の雇い主が二つの質問をしたいと。キングスマンはどこだ? エグジー・アンウィンとは誰だ?」
「知らない、知らないです! そんな名前も人名も全く聞き覚えがないです!」
「ああ、ユー。同じようなくだらない答えをしたせいでお前の友達を二人も殺してしまったぞ」
「知らないと言ったら、知らないんですよ!」
「おい、ユー! キングスマンの為に死ぬ価値があると思うのか?」
「私は絶対に全てを無駄にしない!」
そう言ったユーは騒ぐだけ無駄と悟り、事切れた人形のように頭をだらけさせ、足掻いていた力を抜いた。男を一瞥し、やがて大きくなる光に向けて言葉を吐き出しながら目をつむった。こんな仕打ちは滅多にないんだから楽しもう、とユーは落ち着いた息をそっと吐いた。
「はあ。どうぞ、──轢いてください」
耳元で列車の汽笛を聞き取り、ユーは一瞬だけ浮遊感を肌で感じた。汽笛の音は遠くなり、ユーは止めていた呼吸を勢いよく吸って吐いた。死んだのかしらと彼女は目を開いて捉えたのは、男が持っていたナイフを片手に持ち、スーツ姿で決めた微笑むエグジーであった。
「よくやったよ。ユー。おめでとう」
「嗚呼、エグジー。その、二人は?」
「すでに終わったよ。ルースは不合格、ビリーは合格だ」
「そうなんですね。少し、残念です」
エグジーはユーの手を取り、線路から立ち上がらせた。ワンピースに着いてしまった小さな石ころを
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