【Kingsman】Beautiful Lady【エグジー】【キングスマン】
あなたの希望する名前で読んで下さい
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夕暮れを迎えたイタリア共和国領シチリア島パレルモ県チェファル市でエグジーは街道を歩く“ガラニスの夫人”がこちらに寄って来るのを盗み見た。ガラニスの夫人はブロンドの長い髪にひどく鋭い目をした二十代後半である。その若さゆえに肉欲は深く、別の男と自分の肉欲を埋めている情報をエグジーはマーリンに聞かされていた。夫妻揃ってクソみたいなことを好むのかとエグジーは嘲笑の思いをしながら、ガラニスの夫人に話し掛けられる。
「ねえ、そこの貴方」
「なんだ?」
「貴方、イタリアに来たばかりの人でしょ。それに暇してない?」
「よくわかったね。俺、イタリアのイベントに来たんだけど中止にされて暇なんだよ。ねえ君、どこか楽しい場所ってある?」
ガラニスの夫人はブロンドの長い髪を靡 かせ、エグジーに近寄った。彼女の爽やかな香水がエグジーの鼻を通り、ガラニスの夫人はエグジーの指先に触れる。黒のポロシャツに黒のアウターウェアを着たエグジーをガラニスの夫人は肉欲に染まった目で品定めをしてからエグジーの耳元に口を寄せて、囁き声であるわと甘く言った。
「言っておくけど、君と楽しめる場所がいいんだ」
「私がおすすめするお店よ。貴方も楽しめると思うわ」
「ほんとに?」
「ええ、ナイトクラブだからね。私は特別だから会員じゃない人でも入らせることができるのよ」
「そりゃ、すごい。俺はジェイミーって言うんだ」
「私はヨルギアよ」
ガラニスの夫人は笑みを浮かべて、二十時半に待ち合わせの約束をし歩いてきた街道を戻って行く。エグジーの表情は微笑みから無表情に一転し、待ち伏せをしていた街道から去った。エグジーはホテルへ戻り、眼鏡 を取り出してグラスのヨロイ部分を二回叩いた。マーリンの顔がグラスに表示されエグジーは報告する。
「マーリン、ガラニスの夫人と接触できそう。ナイトクラブに招待されたんだ」
「よくやった。だが油断はするなよ」
エグジーはグラスを畳み、アウターウェアのポケットにしまい込んだ。ふっと息を尽くと眼球の裏でユーを思い出す。生まれつきの甘い香りに木漏れ日に似合う笑顔と優しく人の涙を掬 ってくれそうな雰囲気を纏 うユーとドス黒さを香水で隠しナイフのような卑しい顔で人肉を口にしていそうな雰囲気を纏うガニラスの夫人との存在の差をエグジーはふと見比べた。
しかし、エグジーは鼻で笑って見比べることをやめた。やるほうが馬鹿だろ。エグジーの記憶に根深く植え付けられているユーの姿は何もかも勝 り、誰よりも気高く生きようとする健気な女性 である。だからこそ俺とは似合わないかもしれないとも思えてしまうとエグジーは煮える恋に耽りながら、夫人とガニラスの情報を見直して約束の時間を待つ。
ロココ様式の別荘に帰宅していたガニラスの夫人は自家製の蜂蜜を紅茶に混ぜていた。ガニラスの夫人は広々とした空間に椅子へ腰掛け、湯気が立ち昇り揺れる紅茶を口にする。ガラニスの夫人は今日、夫がいないことを心から喜んだ。エグジーに抱かれる想像に夢中で紅茶の中身はどんどん減っていく。
ガラニスの夫人は夫のガラニスを愛していなかった。ガラニスの夫人はギリシャの一人の売春婦だったが、ガラニスによって買われ夫婦という偽りの立場を与えられたのだった。そして、夫からの約束をガラニスの夫人は得られた立場を失うことがないように固く守り、こうして生きている。
それはガラニスの作った蜂蜜を食べ続けることであった。たったそれだけならとガラニスの夫人は深く考えることもなく、言われた通りに蜂蜜を口にし続けた。今では蜂蜜の味を非常な美味だと感じ始め、ガラニスの夫人は正常に回りづらくなっている頭で大広間の時計を見上げる。時計は二十時半の近くで長針は差していた。
二十時半にエグジーは街道に着き、ガラニスの夫人が現れるのを静かに待っていた。飲食店の明かりと街灯の光が街道を渡っている通行人を照らし、エグジーは目の前でBMWのクーペが止まったのを見る。高級車のウィンドウからガラニスの夫人が満面の笑みを浮かべて顔を出した。
「はあい! 待った?」
「わお、すごい車だね。ついさっき来たところさ」
「ほら、助手席に乗って? 連れてってあげるわ」
「楽しみだよ。ほんとに」
本心とは真逆の言葉をうっかり口を滑らしかけたエグジーはBMWのクーペに乗った。ブルルとタイヤが道を踏み締め小さく車体に伝わる振動を感じながら二十分程度に走行する。ガランとした駐車場に行き着くと、ガラニスの夫人は駐車し車から降りた。周りには建物はあるが人気 は無く、しんと静まっていた。
「こんなところにナイトクラブなんてあるの?」
「あるのよ、それが。着いてきて」
ガラニスの夫人は肩に乗ったブロンドの長い髪を後ろへ払い、エグジーに人差し指で手招きをする。その仕種にエグジーは煮え返りそうな思いをするが、歪みかける表情をなんとか制止して無理矢理な笑顔を見せた。ガラニスの夫人の跡を着いて行けば、明かりのない一軒家の前で立ち止まる。ガラニスの夫人はエグジーのほうへ振り返り、歯を見せて笑うと一軒家の扉を開けた。
中は空っぽで物など一つもなかった。騙されたかとエグジーは警戒を強め、周辺に目をやる。人が住んでいた形跡などなく、しかし綺麗な状態で置かれているのを観察し新築であるとエグジーはわかった。ガラニスの夫人は明かりを付けず、ガレージへ出るドアノブに触れる。
ガレージの空間は車もなければ真っさらであった。ガラニスの夫人は歩き慣れたような足取りで地下へ続くドアをくぐり、エグジーは一言も喋らず跡に続く。一段一段と降りていくと微かに音楽が聞こえ始めた。男女の楽しさから出る騒ぎ声が徐々に鮮明に聞こえ、ガラニスの夫人はさらに笑みを深くする。やがてアーチ状の入口を抜けると、大音量で流している音楽の中で男と女がひしめき合うナイトクラブをエグジーは目にする。
「どう? すごいでしょ?」
「最高だよ。隠れナイトクラブ? 面白いテーマだね」
「実際、隠れナイトクラブよ。麻薬売買人や犯罪組織も出入りしてるわ。そう、ここは悪い人たちの為の“楽園”なのよ」
「楽園か」
ガラニスの夫人は得意顔でナイトクラブを説明してから、エグジーに近寄る用心棒の男を手で追い払った。チカチカと眼球に刺激を与えるショッキングピンクの照明と異様な雰囲気を漂うナイトクラブにエグジーは鳥肌を立たさせる。楽園と呼べるのは麻薬で犯された奴だけだ、とエグジーは思わずにはいられなかった。
ガラニスの夫人は潤せた目でエグジーを見上げ、いやらしくエグジーの手に指を滑らし込む。猫撫で声でエグジーに密着し、メイクで仕上げたガラニスの夫人の顔は元から鋭い目がさらに鋭くなっていて、醜い猫のようにエグジーは見えてしまう。うわ、マジで最悪だ。何もかもと思うエグジーを知らずにガラニスの夫人は言った。
「でも、貴方は私だけと居たいんでしょ?」
「……もちろんだ」
「なら個室へ来きましょう」
「いいぜ。なら俺がベッドでエスコートしてあげるよ」
ウィンクと共にそう言うエグジーにガラニスの夫人は頬を緩ませ、エグジーの腕を引っ張った。ガンガンと響く音楽から遠ざかってガラニスの夫人に連れていかれた個室はお香が焚き、生々しい行為をしなければならないのかとエグジーは冷や汗を掻く。そしてガラニスの夫人はエグジーをベッドへ押し倒し、上へ跨 がる。
「ぼーっとしてるわね。緊張してる? 意外と可愛いわね」
そう言って舌なめずりをしたガラニスの夫人は突然、左右を見渡し始めた。狼狽 え始めるガラニスの夫人にエグジーはなんだと混乱し、青ざめたガラニスの夫人はベッド・テーブルにあった葡萄酒の瓶を掴んで角を割り、尖った先を自分の頸動脈へ突き刺した。
エグジーは目を張り、横へ傾き地面へ倒れたガラニスの夫人を見下げる。エグジーは起き上がりグラスを起動させ、マーリンに悲惨な現状を見せた。容赦なく突き刺された頸動脈の傷から真っ赤なカーペットを赤黒く変色させるガラニスの夫人の死体にマーリンは苦々しい声を漏らしてからエグジーに指示を下す。
「帰還しろ。ガラハッド」
「くそ、了解だ」
エグジーは腕時計を“記憶消去モード”に変えてから個室を出る。ガラニスの夫人に追い払われた用心棒の男を探し出すと、照準を合わせ遠距離から用心棒の首へ撃ち込む。用心棒の男はグラスを片手に後ろへと倒れ、二人の同僚らはゲラゲラと笑い飛ばす。そしてエグジーはナイトクラブから抜け出してホテルへ戻った。
「ねえ、そこの貴方」
「なんだ?」
「貴方、イタリアに来たばかりの人でしょ。それに暇してない?」
「よくわかったね。俺、イタリアのイベントに来たんだけど中止にされて暇なんだよ。ねえ君、どこか楽しい場所ってある?」
ガラニスの夫人はブロンドの長い髪を
「言っておくけど、君と楽しめる場所がいいんだ」
「私がおすすめするお店よ。貴方も楽しめると思うわ」
「ほんとに?」
「ええ、ナイトクラブだからね。私は特別だから会員じゃない人でも入らせることができるのよ」
「そりゃ、すごい。俺はジェイミーって言うんだ」
「私はヨルギアよ」
ガラニスの夫人は笑みを浮かべて、二十時半に待ち合わせの約束をし歩いてきた街道を戻って行く。エグジーの表情は微笑みから無表情に一転し、待ち伏せをしていた街道から去った。エグジーはホテルへ戻り、
「マーリン、ガラニスの夫人と接触できそう。ナイトクラブに招待されたんだ」
「よくやった。だが油断はするなよ」
エグジーはグラスを畳み、アウターウェアのポケットにしまい込んだ。ふっと息を尽くと眼球の裏でユーを思い出す。生まれつきの甘い香りに木漏れ日に似合う笑顔と優しく人の涙を
しかし、エグジーは鼻で笑って見比べることをやめた。やるほうが馬鹿だろ。エグジーの記憶に根深く植え付けられているユーの姿は何もかも
ロココ様式の別荘に帰宅していたガニラスの夫人は自家製の蜂蜜を紅茶に混ぜていた。ガニラスの夫人は広々とした空間に椅子へ腰掛け、湯気が立ち昇り揺れる紅茶を口にする。ガラニスの夫人は今日、夫がいないことを心から喜んだ。エグジーに抱かれる想像に夢中で紅茶の中身はどんどん減っていく。
ガラニスの夫人は夫のガラニスを愛していなかった。ガラニスの夫人はギリシャの一人の売春婦だったが、ガラニスによって買われ夫婦という偽りの立場を与えられたのだった。そして、夫からの約束をガラニスの夫人は得られた立場を失うことがないように固く守り、こうして生きている。
それはガラニスの作った蜂蜜を食べ続けることであった。たったそれだけならとガラニスの夫人は深く考えることもなく、言われた通りに蜂蜜を口にし続けた。今では蜂蜜の味を非常な美味だと感じ始め、ガラニスの夫人は正常に回りづらくなっている頭で大広間の時計を見上げる。時計は二十時半の近くで長針は差していた。
二十時半にエグジーは街道に着き、ガラニスの夫人が現れるのを静かに待っていた。飲食店の明かりと街灯の光が街道を渡っている通行人を照らし、エグジーは目の前でBMWのクーペが止まったのを見る。高級車のウィンドウからガラニスの夫人が満面の笑みを浮かべて顔を出した。
「はあい! 待った?」
「わお、すごい車だね。ついさっき来たところさ」
「ほら、助手席に乗って? 連れてってあげるわ」
「楽しみだよ。ほんとに」
本心とは真逆の言葉をうっかり口を滑らしかけたエグジーはBMWのクーペに乗った。ブルルとタイヤが道を踏み締め小さく車体に伝わる振動を感じながら二十分程度に走行する。ガランとした駐車場に行き着くと、ガラニスの夫人は駐車し車から降りた。周りには建物はあるが
「こんなところにナイトクラブなんてあるの?」
「あるのよ、それが。着いてきて」
ガラニスの夫人は肩に乗ったブロンドの長い髪を後ろへ払い、エグジーに人差し指で手招きをする。その仕種にエグジーは煮え返りそうな思いをするが、歪みかける表情をなんとか制止して無理矢理な笑顔を見せた。ガラニスの夫人の跡を着いて行けば、明かりのない一軒家の前で立ち止まる。ガラニスの夫人はエグジーのほうへ振り返り、歯を見せて笑うと一軒家の扉を開けた。
中は空っぽで物など一つもなかった。騙されたかとエグジーは警戒を強め、周辺に目をやる。人が住んでいた形跡などなく、しかし綺麗な状態で置かれているのを観察し新築であるとエグジーはわかった。ガラニスの夫人は明かりを付けず、ガレージへ出るドアノブに触れる。
ガレージの空間は車もなければ真っさらであった。ガラニスの夫人は歩き慣れたような足取りで地下へ続くドアをくぐり、エグジーは一言も喋らず跡に続く。一段一段と降りていくと微かに音楽が聞こえ始めた。男女の楽しさから出る騒ぎ声が徐々に鮮明に聞こえ、ガラニスの夫人はさらに笑みを深くする。やがてアーチ状の入口を抜けると、大音量で流している音楽の中で男と女がひしめき合うナイトクラブをエグジーは目にする。
「どう? すごいでしょ?」
「最高だよ。隠れナイトクラブ? 面白いテーマだね」
「実際、隠れナイトクラブよ。麻薬売買人や犯罪組織も出入りしてるわ。そう、ここは悪い人たちの為の“楽園”なのよ」
「楽園か」
ガラニスの夫人は得意顔でナイトクラブを説明してから、エグジーに近寄る用心棒の男を手で追い払った。チカチカと眼球に刺激を与えるショッキングピンクの照明と異様な雰囲気を漂うナイトクラブにエグジーは鳥肌を立たさせる。楽園と呼べるのは麻薬で犯された奴だけだ、とエグジーは思わずにはいられなかった。
ガラニスの夫人は潤せた目でエグジーを見上げ、いやらしくエグジーの手に指を滑らし込む。猫撫で声でエグジーに密着し、メイクで仕上げたガラニスの夫人の顔は元から鋭い目がさらに鋭くなっていて、醜い猫のようにエグジーは見えてしまう。うわ、マジで最悪だ。何もかもと思うエグジーを知らずにガラニスの夫人は言った。
「でも、貴方は私だけと居たいんでしょ?」
「……もちろんだ」
「なら個室へ来きましょう」
「いいぜ。なら俺がベッドでエスコートしてあげるよ」
ウィンクと共にそう言うエグジーにガラニスの夫人は頬を緩ませ、エグジーの腕を引っ張った。ガンガンと響く音楽から遠ざかってガラニスの夫人に連れていかれた個室はお香が焚き、生々しい行為をしなければならないのかとエグジーは冷や汗を掻く。そしてガラニスの夫人はエグジーをベッドへ押し倒し、上へ
「ぼーっとしてるわね。緊張してる? 意外と可愛いわね」
そう言って舌なめずりをしたガラニスの夫人は突然、左右を見渡し始めた。
エグジーは目を張り、横へ傾き地面へ倒れたガラニスの夫人を見下げる。エグジーは起き上がりグラスを起動させ、マーリンに悲惨な現状を見せた。容赦なく突き刺された頸動脈の傷から真っ赤なカーペットを赤黒く変色させるガラニスの夫人の死体にマーリンは苦々しい声を漏らしてからエグジーに指示を下す。
「帰還しろ。ガラハッド」
「くそ、了解だ」
エグジーは腕時計を“記憶消去モード”に変えてから個室を出る。ガラニスの夫人に追い払われた用心棒の男を探し出すと、照準を合わせ遠距離から用心棒の首へ撃ち込む。用心棒の男はグラスを片手に後ろへと倒れ、二人の同僚らはゲラゲラと笑い飛ばす。そしてエグジーはナイトクラブから抜け出してホテルへ戻った。